ベイビーからアダルトにステップアップしました #14

第14回 一つになったよろこび

「うんぐっ!!ぐっ!ぐっ!ぐっ!」
身体の一番深いところで感じる逞しい衝撃に、私は歯を食いしばって耐えた。
「押しては引く」だけだったエーちゃんの腰は、リズムを変えて多彩に動き、さらにテニスコートでのラリーのごとく強弱の変化も繰り出す。
するとどうだろう。あんなに痛かった痛みはいずこかへと消え、身体の芯からじわり、じわりと快楽の泉が湧いて出るようになった。好きな人とこんなことをすることが、こんなに気持ちのいいことだなんて!
口からでる言葉もいつの間にか
「あっ!あっ!!ああっ!あっ!ああ──────────────!!!」
「イッ!イッ!イイッ!!イッ!イッ!イイッ!!」
というあえぎ声と
「ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!」
という荒い息が混じるようになった。
気がつくと私は、エーちゃんの広くがっしりとした背中に腕を回していた。
ワタシの腰の動きが、彼の動きと一体化しはじめる。
するとどうだろう。彼と動きが一緒になればなるほど快感が強くなった。次々と襲ってくる快感に、私はたまらず頭を左右に振る。
一生懸命私を愛してくれるエーちゃんに、わたしはちょっかいを出したくなった。おでこをくっつけ、キスをし、笑みを浮かべる。この間彼は私の秘部に、正確で力強いストロークをぶつけてくる。
やがてエーちゃんは私の耳元で
「なっちゃん、もう、いいかい?」
と囁く。私は小さく頷くと、彼はありったけの情熱を注ぎ込んできた。
ついに来る!
そう感じたワタシは頭をグイッと伸ばし、身をくねった。彼が注ぎ込む確かな愛情と快楽が、私を同時に襲う。
あまりの気持ちの良さに
「ア───────────────────────────────────ッ!!!!!」
と思わず大声が出てしまうワタシ。そしてワタシの両腕は音を立てて、彼の背中からベッドの上に落ちた。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
部屋の中に、ワタシとエーちゃんの荒い呼吸音が鳴り響く。身体は汗まみれ、意識もまだふわふわと宙をさまよっている。身体の火照りも興奮も、まだおさまる気配はない。何もしたいという気になれない。今はただただ、じっとしていたい。
でも、やったんだ。
ワタシはエーちゃんと、ついに一つになったんだ。
ワタシが初めて知った、セックスと愛の歓びは、全日本ジュニアタイトルをとった以上のそれをワタシにもたらした。目の前の風景はまばゆくひかり、2人の関係が、新しい段階に来たことを示していた。
気がつくと、エーちゃんがワタシに視線を向けている。ワタシは静かに、両手を彼の背中に触れると、汗まみれになった自分の身体を、彼の鍛え上げられた身体にくっつけた。自分の果実をエーちゃんに押しつけているうちに、だんだん呼吸も楽になった。
「いたかったぁ……。でも、エーちゃん……スゴかったよ」
初めて知る男性の、逞しい衝撃。深いところを突かれるうちに、激しい痛みはやがて、この上ない快楽に昇華した。短い時間で体験した体内の変化を、ワタシは今も理解できないでいる。エーちゃんは、ワタシを力一杯愛してくれたんだ。
「なっちゃん、よかったよ……なっちゃんと一つになれて、僕もうれしいよ」
エーちゃんに、ワタシをやさしく抱き寄せながらそんなことを言われると、目からは涙が止まらなくなった。彼はそのことに気がついたのだろう、ウェットティッシュでやさしくそれを拭ってくれた。
「僕、ちょっと乱暴だったかな? もっとやさしくすればよかったかな?」
違うよ。エーちゃんと一つになれたのが嬉しかったからだよ。ワタシは彼の問いかけに、かぶりを振って答える。
「違うよ。痛かったのは確かだけど、だんだんエーちゃんの愛情を感じるようになったの。好きな人とこんなことをやるのって、最初は恥ずかしいと思っていた。でも『嬉しい!』と思っていたら、涙が溢れて止まらなくなっちゃった。だからエーちゃんは、ちっとも悪くないよ。むしろ私を好きになってくれて、感謝したいくらい」
お姉ちゃんとワタシがこの世に生まれたのも、パパとママが情熱的に愛し合った結果なのだ。
パパは、どれだけ激しくママを愛したのだろうか。
ママは、パパがくれる快楽という名の愛情を、どんな思いで受け止めていたのだろう。
そしてお姉ちゃんも、彼氏とこんなことをやっているのかな。
エーちゃんはワタシの言葉を、黙って聞いてくれた。しばしの沈黙。ワタシは彼に視線を向けて、言葉を続ける。
「エーちゃん、とっても硬くって、長くって、太い。そして……おっきくて、逞しい。私ね、男の人のものが、このときに、ここまでなるのかって初めて知ったよ」
「なっちゃんのも、結構よく締まっていたよ。声をかけるのがもう少し遅かったら、なっちゃんをがっかりさせていたかも知れないと思うと、ちょっとビクビクした」
パパとママが愛し合っている現場を、ワタシは見たことがない。
おそらく私たちがぐっすり夢の世界にいるときに、パパとママは二人きりの世界に浸っていたのだろう。
そういえば小さい頃トイレに行くと、パパとママのいる部屋から、ママの荒い息づかいと喘ぎ声が聞こえる時があった。
のぞいてはいけないと子供心に思っていたんだけど、アレはきっと2人が快楽の世界に夢中になっていたからだと、今になって思う。
そんなことを考えていたら
「なっちゃんの中って、とってもあったたかったよ。『女の子の中って、みんなこんなふうにあったかいのかな?』って思った」
眼をキラキラさせながら、エーちゃんは言った。
「そうかな? わたしはわからない……でも、エーちゃんがそんなことを思っていたなんて意外だった」
そんな会話をしながら、男の子ってこんなにスケベなのかな、と思う。それはエーちゃんも例外じゃなかった。彼もオトコだったんだな。
ワタシは、彼のおでこをつつきながら
「エーちゃんって、結構むっつりスケベなんだね」
と言ってやったら、彼も負けじと
「なっちゃんだって、結構激しかったよ」
と返してきた。硬く逞しいもので、私の中をあれだけガンガン突かれれりゃ、そりゃワタシだって激しくなるわよ。
ワタシはムッとして
「そんなことないって」
と言い返したら、ヤツは弁解がましく
「ごめんごめん。ちょっと調子に乗りすぎたかな?」
とすまなそうな表情を見せる。
クソ、このスケベ野郎。
ワタシをここまで淫らにしたのは、アンタなんだからね。
2人が同時に上半身を起こすと、ワタシは座っているところに違和感を感じた。
エーちゃんもそのことに気がついたのだろう、ワタシが座っている部分を凝視する。
ワタシが恐る恐る下を見ると……白いシーツに、血のりがべったりとついていた。
これは、まさしくワタシが「処女」だったという証。
今ワタシの目の前には、さっきまでワタシを抱いていたオトコがいる。
好きな男に見られたくないモノを見られたような気分になったワタシは、思わず顔が赤くなった。
でも彼はそんなワタシを黙って自分のいる方に抱き寄せ
「ありがとう」
と、やさしく耳元で囁いた。
彼の吐き出すと息は温かく、思いやりに溢れているとわかった。
ワタシはますます恥ずかしくなり、顔が赤くなった。
いつの間にか、身体の震えも激しくなっている。
エーちゃんはそんなワタシにかまわず、唇にキスをすると、やさしくワタシの髪を触ってくれた。
彼にされるがままにされているうちに、いつの間にか気分も落ち着いた。ワタシは視線を下に落とし
「ねぇエーちゃん、私たちは大人の階段を上ったんだよね?」
とぽつりとつぶやいた。彼の逞しい肩に頭を載せたまま
「私たち、ずっとずっといっしょだよね……ありがとう」
といった。
エーちゃんは静かに手を差し出し、ワタシの掌をやさしく握ってくれた。感謝の意をこめて、ワタシも彼の掌を強く握り返す。
……そしてワタシは、2人が新しい段階に進んだのだと、改めて思った。

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