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2019年12月の記事一覧
Naked Desire〜姫君たちの野望
第一章 心の壁−34
「クラウス、ランペルツさんが来ていないんだけど、あなた事情を知ってる?」
アルマの愚痴を聞いた翌日の朝10時前、クラウスは挨拶もそこそこに、エルヴィラに呼びとめられた。
昨日のやりとりを彼女にいったら、面倒な事態になるのは明らかだ。クラウスは即座に、誰にも言わないことに決めた。
「あの人、まだ来ていないんですか?」クラウスは素っ気ない口調で返事する。
「今日は9時Inなのに
Naked Desire〜姫君たちの野望
第一章 心の壁−33
首都グラーツにある大学の学生は、全員がグランゼコールに通うと信じて疑わない。アルマの無邪気さに、クラウスは目眩を覚えた。
しかしそんな感情を、普段から世話になっているアルマにぶつけるわけにはいかない。彼は大きく深呼吸をした。
「どうしたね? あたしゃ、おまえさんの気を悪くするようなことをいったかい?」
「いいえランペルツさん。すべての大学生が、グランゼコールを目指していな
Naked Desire〜姫君たちの野望
第一章 心の壁−32
クラウスは、のそのそと立ち上がると、右手に汚れた布を掴んだ。
休憩室内のシンクスペースに移動すると、蛇口からぬるま湯を出し、ダスターを洗う。
手早く汚れを落とすと、サニタリー溶剤にダスターを浸し、再びぬるま湯ですすぐ。
ダスターを折りたたみ、テーブルについていた食べかすや水滴を丁寧に拭き取る。
「こんなもんだろ」
クラウスはダスターを丁寧にたたんでテーブルの隅に置くと、先
Naked Desire〜姫君たちの野望
第一章 心の壁−31
「クラウス──ッ、休憩だ。今から1時間。いってらっしゃい」
社員から休憩の指示が出た時、クラウスはちょうど、トースターのメンテナンスを終えたところだった。
会社は、店で働く店員全員に対し「クレンリネス」の徹底が求めている。店員はちょっとでも時間が空くと、ダスターで汚いところを清掃する。食中毒防止のためだ。
カフェ・ルーエ グラーツ総本店には、調理ラインが4本設置されている。
Naked Desire〜姫君たちの野望
第一章 心の壁−30
「ちょっと、私の話を聞いているの! マルガレータ・ハンナ・オクタヴィア・マルゴット!」
エミリアは私を怒鳴りつけながら、グイグイとアタシの右手首を引っ張った。
彼女はさっきまで、アタシと向かいの席に座っていたはずだが、いつの間にか隣に移動している。呼んでも反応がないので、頭に血が上ったのは間違いない。
どうやら昔のことを思い出しているうちに、彼女の話を上の空で聞いていたらし