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大半が誤解している「税金で再分配」の意味

税の意義として「富の再分配」のためだという考えがあります。これについて、多くの人は、

富裕層から税金を取って、それを財源に貧困層に給付する。

と考えていると思います。しかし、よく考えればそれはおかしい話です。

税に財源の意味はない

日銀を従えている日本政府には、通貨発行権があります。なので、税金で資金を調達する必要はありません。貧困層に分配したいなら、単に通貨を発行して配ればよいのです。

富の偏在・固定化の原因は『利益』

富裕層というのは、資産を多く持っている人です。どうやって富裕層になったのかというと、過去に貯蓄した利益の積み重ねが資産となっているからです。その資産を投資すると、さらに利益を生み出しますので、富裕層が固定化するわけです。

『利益=売上-原価』です。この「原価」というのは、仕入原価、人件費、経費、減価償却費等を含みます。原価というのは、他の人にお金を払う分なわけですから、それは従業員や取引先等、他の人が得る収入のことです。

利益を最大化しようとすると、原価を削ることになります。すなわちそれは、他人の収入になるお金を減らし、自分の利益として貯蓄することを意味します。

利益を取って貯蓄すること自体は悪くないのですが、過剰な利益を取ることは、富の独占につながります

所得税で、利益への動機を抑制

解決策として、利益に税金をかけることで、利益を過剰に求める動機を弱めることが考えられます。

ただ、利益は経営努力の表れであるという側面がありますので、利益を100%奪ってしまうと、事業をやりたいという気持ちそのものが失われます。かと言って、過剰な利益(剰余価値)は、有利な立場を利用して富を独り占めしていると考えられます。これは経営努力と言える範疇を超えています。

どこまでが経営努力で、どこから先が剰余価値なのか、線引きが難しいので、剰余価値だけを計算してそれを全部取り上げるというようなことはできません。

価格構造

そこで、ある程度の額までは経営努力とみなして軽い税金にしておき、多すぎる分に高い税金をかける制度が考えられます。それが、今の日本で採用されている、所得税の超過累進税率です。

ある程度の経営努力を認めつつ、あまりに大きすぎるものは不当な利潤とみなすということです。

利益の過剰分に重税をかけることで、原価を大きくする動機が生まれます。すなわち、投資や品質向上のために、もっと多くの費用をかけて利益を圧縮するということです。費用=他の人への分配です。

つまり、利益に対する超過累進税率によって、過剰な利益を抑制し、その分他の人への分配を大きくするように誘導する、というのが「税による再分配」の本当の意味です。

良い税金、悪い税金

ここまでのことをご理解いただくと、税制の良し悪しがなんとなくわかるのではないでしょうか?

良い税金とは、利益に税金をかけて、分配の動機を生み出すものでした。すなわち、所得税や法人税です。

悪い税金とは、原価部分にもかかってしまう税金、そして、本来は必要のない「財源」のためだけに取る税金です。すなわち、消費税や社会保険料です。

ここ20~30年の日本では、良い税を減らし、悪い税を増やしてきました。これが、格差拡大の大きな要因の一つであると思います。

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