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コロナ禍中の身体 その2 ーー 身体はどう応えているのか

”コロナ禍中”の身構え

” コロナ禍 ” の環境の中、どこに行っても、家にいても、透明なアクリルボードに囲まれているような息苦しさがあります。誰もが無意識に ” 身構えた ” 状態になっています。リラックスとは身の周りの空間に安心して ” 身をまかせる ” ということですが、身をまかせられる空間そのものが蒸発しました。日常生活の細部にわたって、自覚的にあるいは無自覚的に、身体が空間に圧迫され、動きが制限されているのがこのところの身体状況といえるでしょう。

年中行事、祭り、フェス、コンサート、展覧会等のイベントが消え、生活・行動の流れ、時間の流れがメリハリを失い、停滞、ぎくしゃくしています。時間経過のリアリティ、手応えがだいぶ不確かになっている気がします。” 不要不急 ” かとも思われる年中行事も、失われてみると、体感的な時間の流れの大切な要素であったことが分かります。祭りや行事が俳句の季語として長く重んじられてきたことも、古臭いことではなく、なるほどと思えてきます。


身体は具体的にどのように対応し、”身構え”ているのか

2020年3月~10月、コロナ環境の中で観察された身体の応答についてまとめておきます。

2020.10.22.コロナ禍の身構え:舌骨:斜角筋:D11:仙骨尖.2

2020.10.23.耳介筋:側頭筋


警戒する筋肉=耳介筋   

コロナ禍の中、多くの人が耳の筋肉が硬くなっています。「聞き耳を立てる」とはいいますが、ヒトの場合あまり耳を大きく動かすことはできません。犬や猫を観ていると、警戒するときは、耳をほんとうに立てたり、レーダーのように角度を変えたり動かすことができます。ヒトの耳の周りにも耳介筋という筋肉がちゃんとあります。あまりめざましくは動きませんが、警戒・緊張するときはやはり縮むのです。緊張が続くと周囲の筋肉(側頭筋・胸鎖乳突筋)も連動して縮んで硬くなります。

警戒態勢というだけでも緊張するのですが、加えてマスクの耳にかかる物理的ストレスでも緊張して硬くなったり、痛くなったりします。

参照:2000年10月23日ツイート「身がままリポート」

耳介筋が緊張しっぱなしになっているということは、交感神経が興奮し続けているということです。副交感神経の働きが抑制され、胃腸の動きが鈍くなり、なかなかリラックスしづらい状態ということになります。


舌骨筋 

舌骨筋(呑み込むときにゴクンと動く筋肉)の、左側がとくに緊張しやすくなっています。喉のゴクンと動くところを左右から挟むように触れると、左側のほうが硬いのが分かります。

1日 1.5 L分泌されると言われる唾液ですが、無意識のうちに何度も飲み込んでいることになります。飲み込みは舌骨筋などの動きとともに、口蓋垂(のどちんこ)が気管の入り口を塞ぐことも含めた、ほとんど意識ではコントロールできない複雑な嚥下反射による運動です。


緊張・興奮すると舌骨筋は硬く縮み、飲み込みにくくなります。一方で緊張・興奮したときに「ゴクンと唾を飲み込む」のは、舌骨筋をゆるめて興奮を鎮める反応でもあります。

舌骨筋の左右の緊張の差が大きいと、飲み込みが誤作動しやすくなり、誤嚥して咳き込んだり、胃に空気を呑み込んでしまい(「呑(どん)気症」)、みぞおちの周りが張りやすくなります。胃に空気が溜まり、ゲップが出ると同時に胃液が逆流するパターン、横行結腸(とくにみぞおちの左)に空気が溜まり、場合によってはぽっこり出っ張る程になる。脈が速くなったり、ドキドキしたりすることもあります。逆に舌骨筋と嚥下運動の不安定が自律神経の働きに影響し、リラックスが難しくなり、「自律神経失調症」的な様々な不調が起きやすいといえます。

斜角筋

斜角筋(頚椎2~6番と第1-2肋骨の間の筋肉)が緊張しやすい傾向も、ずっと続いています。斜角筋は胸椎11番と連動して身心をショックから守る身構えの要になります。長期間緊張が続くと疲れが出て、左右の緊張差が大きくなってきます。

すると肩関節の周りの筋肉のバランスに影響し、四十・五十肩に似た痛み、腕のしびれ(胸郭出口症候群)なども起きやすくなっています。

斜角筋は、胸郭を引き上げる呼吸筋でもありますので、首を締められるような息苦しさを感じる人もいます。左の首の付根のあたりでドキドキする脈動を感じることもあります。伸びやあくびでゆるめることができます。


参照:2020年7月17日 YouTube動画「伸び」


胸椎11番

2020年4月3日ツイート「身がままリポート」

胸椎11番と第11肋骨は、胸と腰のジョイント部になっていて(第1~10肋骨は一体だが第11・12肋骨はフリー)、脊椎の中で(首を除けば)最も動きが自由な部分です。左右が同時に緊張していれば全身をギュッと縮めて身を守る構えになります。長期間ずっと身構え続けているとだんだん疲れてきて、右側がゆるみ、左だけが縮んだままになりやすくなります。すると、姿勢が引きつれたようになってしまう。第10肋骨と11肋骨の間(とくに左)も縮んで、11肋骨の先端は敏感になって触れると痛みを感じやすくなります。横隔膜の動きもひきつれて呼吸も不安定になり、過換気も起こしやすくなります。

胸椎11番は月経周期の中では、排卵期と生理中に敏感になりますから、ホルモンのバランスにも影響する可能性も大きいわけです。

骨盤がゆるんだりちぢんだり(集中 ↔ リラックス)するのと連動し、切り替えスイッチのように動くのも胸椎11番です。多くの動物たちもしている本能的動作= “ 伸び ” は、ヒトの場合、胸椎11番に弾力を生んで、骨盤のスイッチングを促す動きになります。その時々の身心の志向性に応じて、覚醒・集中にも、脱力・リラックスにも双方向にはたらきます。

年間のリズムでいえば、5月(夏の身体への衣替え期)と11月(冬の身体への衣替え期)に敏感に反応するようになり、月経周期でいえば排卵期と月経期に敏感になり、日々の集中とリラックスの波の中でも、オン(上がる)オフ(下がる)スイッチのようにはたらくわけです。

コロナ禍の危機感の中、身心が警戒態勢をとり、胸椎11番がオンになりっぱなしになりました。

参照:2020年5月1日YouTube動画「胸椎11番疲れとり体操」と

   2020年4月3日ツイート「身がままリポート」

胸椎11番に対応する穴(ツボ)は肘の外側の曲池穴(とくに左)です。肘の外側の骨の出っ張りに触れるとヒリヒリと敏感な感じがします。

2020.1031.曲池に触れる

神庭穴(額の生え際中央)も、胸椎11番に応答します。過剰な反応を鎮める穴でもあります。頭が痛いときや、疲れを感じるとき、本能的に触れたくなるポイントでもあります。

参照:note 「額づく」ツボと胸椎11番

仙骨尖

仙骨尖(骨盤底というよりも仙骨の先っぽがピンポイントで硬い)
例えば犬は尻尾の動きで、警戒態勢をとったり、興奮を鎮めたり、リラックスしたりといった、身心の動きのバランスをとると言われています。その尻尾の付け根の左が固まって動きが不安定になりやすくなっているわけです。ヒトは尻尾がずいぶん退化してほとんど動きもしませんが、おそらくまだ犬などと同様の尻尾の動きの名残が仙骨尖にあって、身構えのメリハリ=警戒 ⇄ リラックスの往復や、感情の動きに関わっているのだと思います。

仙骨尖=体幹の姿勢のボトムになるところが、緊張が左に偏りながら弾力を失い、身心の姿勢のバランスも不安定になります。

血海穴

血海穴の高い反応はコロナ禍の前からずっと続いています。血海は下腹(=丹田)を温め、引き締め、身心のバランスの安定の元になります。

環境変動(地殻変動・気候変動・環境破壊など)と、そこから生まれる新型コロナのパンデミックを含めた社会の激動に対する腹の底からの身構えを支えています。コロナ禍を生き抜く姿勢はここから生まれているともいえそうです。

参照:note コロナ禍中の身体 その1

コロナ疲れ

5月中旬、それまでギュッと構え続けていた身体ですが、少し気がゆるんで疲れが現われ、身体の右側にゆるみが出てきました。舌骨筋斜角筋胸椎11番も左右の緊張の差が大きくなってきました。疲れ感、首・肩・腰などの痛み症状、自律神経症状、過換気症、気分の不安定などの身心の症状が出やすくなってきました。

2011年東日本大震災・原発事故の後も、同様な身心のショック状態が観察されました。本来3 ~ 4月は、身体がゆるんで敏感になり、アレルギーをはじめ様々な症状が出やすい時季ですが、震災・原発ショックで身体は興奮状態になり(=胸椎11番ON)、毎年花粉症がこの時季に必ず出ている人の症状が止まってしまったり、更年期のホットフラッシュが止まるというようなことが起こりました。ところが逆に、例年なら花粉症が治まってくる5月の連休のころから(私の観る首都圏の人たちの中では)ちょっと身心の気がゆるんだせいか、あらためて花粉症が復活したり、アレルギー的な皮膚炎を起こす人が多くなるということが起きました。

ただし、2020年 “ コロナ禍 ” のショックの中では、” 3.11. ” 後の5月のような” 花粉症の復活 ” は確認できませんでした。” 第1波 ” がちょっとゆるんだだけという状態ですから、状況は違います。

8月末あたりから、活動性の高い人、また身体の勢いもあって本来丹田の中心に力があるべき人の中で、丹田中心の力がスッポリ抜けてしまう人たちが出てきました。コロナ環境の中で活動が制約され続けたためか、集中の方向性や、” やる気”が減退するような、ふわふわした頼りない感じになっていました。

そういう人たちが10月になると、それぞれのバランスのとり方をだんだん見出して、丹田の集中を取り戻しつつある形勢です。

もう一方で、10月に入って目立ち始めたのは、過敏な体質の人たちを中心に、仰向けになったとき、リラックスしていても、足先が立つ傾向が出てきたことがあります。これは下腹と骨盤をギュッと縮めて気合を入れ、” 何か ” に対して身構える体勢になっているということです(ふつうはリラックスすると足先はゆるんで広がる)。

何に身構えているのか?コロナ禍のだいぶ前から、過敏な人たちが興奮しやすい傾向はありました。

” 過敏 ” とはあらゆる情報や変化、刺激に人一倍敏感に反応するということですが、そういう人たちの多くが ” 足先が立つ ” という現象(とくにそれぞれの個人的な状況として緊張感・興奮が高まっているわけではない)は、これまで見たことがないような現象です。

今のところ、なにを意味するのかよくわかりませんが…。


過敏な体質のMさん:足が垂直に近くなっています「足先を広げようとするとかえってきつい感じ」だといいます。
注:骨盤(横幅広)型傾向が強い人は元々大きく広がっているので ” 立つ ” 状態にはなりにくく、骨盤(横幅狭)型傾向が強い人は元々リラックス時でも足先が立っているのが普通です。

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2020.11.2.M足先の角度3パターン

不安定な時代に、予兆に敏感に身体が反応する=身体の過敏化傾向。私が気づいたところでは80年代末のころから目立つようになってきました。高度なデジタル環境の中で「身体性が薄れる」とも言われますが、身体自身の反応から見れば、むしろ微細に環境情報に反応しやすくなり、身体感性は高まっているといえます。身体の希薄化というよりは、身体の空間への連続性が高まっているということだと思います。たとえば皮膚が直接触れなくても触れている感覚、触覚が身体の外にも広がる。” 気配 ” を感じやすくなっている。身体の内外の境界性(バリア)が薄くなっているともいえます。

コロナ禍中ではさらに、「ソーシアル・ディスタンス」「フィジカル・ディスタンス」「リモート」など、直接触れ合う機会が少なくなっていますが、身体同士の距離が離れるほど、かえって幽かな気配により敏感になりそうな勢いです。

高度な(洪水的)情報環境に応じて、草の葉先が揺れるように、敏感に、軽く反応している、さらにこれからさらに続くであろう環境変動、社会変動の不確実性に、より敏感に反応しているとも見えてきます。

これまでコミュニケーションといえば、言葉が主に意識されてきましたが、基礎にあるのは身体同士の共鳴的、共感的反応です。” コロナ禍 ” の中、身体同士の距離が規制されたり、”  リモート ” になることで、かえってコミュニケーションの中に潜在していた身体性がこれまで以上に浮かび上がって見えやすくなってきそうです。互いの距離感や間(ま)を無意識に調整して、共鳴・共感を生み出していたことに気付かされる場面が多くなることでしょう。

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