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【音盤レビュー】モーツァルト:ピアノ協奏曲第20~27番 リリー・クラウス、スティーヴン・サイモン/ウィーン音楽祭管弦楽団

オリジナルLPのジャケットと同じ

モーツァルト:ピアノ協奏曲第20~27番
リリー・クラウス、スティーヴン・サイモン/ウィーン音楽祭管弦楽団

2023年ラスト、駆け込みで聴いた4枚組。
レビュー早いから許して!(誰に言ってんの?)

20
いわゆる「デーモニッシュ」な演奏とは正反対。
何というか……「静謐な哀しさ」か。
サラサラと流れるような1・2楽章……でも「薄味」ではない。
反対にじんわりと歩を進める3楽章……でも「重たく」はない。
個人的にはこの曲は激しい演奏が好みだけど、この演奏は傾聴に値する。

21
1楽章は残念ながら今ひとつ……悪い方の「薄味」。
ところがあの有名な2楽章は一転してじっくりしたテンポで艶やかに味濃く進む。
絶妙なルバートがとにかく耳のご馳走。
これは好き!
そして珠の転がるような3楽章のチャーミングさ!

22
あれ?
もしかして……恥ずかしながらこの年にしてこの曲の「マイ初演」かも(汗)。
でも3楽章は聞き覚えあるんだよなぁ(謎)。
何にせよ、こんな「イイキョク」を今までちゃんと聴いてなかったことが悔しい!
変ホ長調ってやっぱり好き。
1楽章の祝祭感とがっしりした「造り」。
シンフォニーみたい!
「灯り」と「翳り」(やっぱりこっちの漢字でしょ!)を行き来する2楽章。
そしてシンプルの極みのような3楽章のロンド!

23
実はこの曲、モーツァルトのピアノ協奏曲で一番好き。
……ってどこでも言ったことないよね?
まあその話はおいおい(またそれかw)。
いい意味での「平均点」!
この曲の良さを素直に表出している。
ファーストチョイスにも薦められる佳演。
終楽章はもっと「弾けた」スタイルでも良いけど、全体のバランスからするとこのくらいの「中庸さ」がむしろ正解なのかも。

24
こちらも20番同様、荒々しさは皆無。
短調であることを一瞬忘れさせるくらい。
穏やかかつなだらか。
この品の良さ、曲想とマッチしているとは言えないかもだけど個人的には好き。

25
この曲にはもっとどっしりした感じ、もしくは華やかな祝祭感が欲しいのだけどいささか「小粒」。
特にオケのバックが物足りない。
ただそれを犠牲にした代わりに、クラウスのピアノの親密さというか聴き手に寄り添う感じがとりわけ際立っていて心地よい。

26
こちらは25番で今一つだったところが逆に長所として生きている。
この曲だって「華やかさ」があってもいい曲調なのに不思議(笑)。
特に2楽章。
オケもピアノパートもモーツァルトがあまり「書き上げて」いない。
その「薄さ」が普通の演奏だと目立つけど、速めのテンポで進めることで全く気にならない。
更に速めでもちっとも薄味じゃあないのが素敵。
あと両端楽章のカデンツァがとにかく小粋!

27
バックハウスのあの名盤「達観の境地」には及ばないまでも、透き通るようなタッチが耳に心に沁みる。
特に2楽章。
「考え込ませる」のではなく、一緒に寄り添ってくれるような空気感。
終楽章のロンドに、少し後ろ髪引かれるような「寂しさ」を纏わせているのはさすが。

ちなみにこの4枚組は2013年9月発売。
だけどその後、12枚組の全集が2017年5月に出た。
オリジナルLPと同じ組み合わせが売り。
しかも……1000円以上安くなった!(吐血)

全集。枚数増えて安くなるのやめて(クラシックBOXあるある)

買い直しはしません。
絶対に……多分(どっちやねん!)。
まあ全集はペライアの弾き振り持ってるんだけど。
そしてもちろんミチョランマですけど!(大声)

しかし上記の通り22番の良さに目覚めてしまったので、この曲の名盤とされるバレンボイム/ECOはいずれ買いたい。
どうせなら全集買う?(やめとけ!w)

クラウスと言えばシューベルトの即興曲集が熱演で素晴らしい。
「嵐のような」という例えがふさわしい。
曲的にそこまで必要か?と思ってしまうほどの緊張感。

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