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ライターになる道はいと険し4

ある日突然、代行会社の社長から爆弾宣言をされた。社長の宣言とは文字単価を成績で分けるというもの。代行会社の文字単価は一律1円。新しい報酬案は成績の悪いライターは0.8円にし、良いライターは1.5円にするというもの。

社長の宣言を聞いて私は青くなった。なぜなら、その直前に私がもらった成績は「1」だったから。「1」が多い理由はスペースが多かったせい。
「このままではまずい!生活できなくなっちゃう!」
もはや私の気分は映画『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラのよう。

スカーレット・オハラは『風と共に去りぬ』のヒロイン。南部のお嬢様だったが戦争で全てを失い、神様に誓うのだ。
「神様、私はもう二度と飢えに泣かない。家族を飢えさせない。
そのためには騙し、殺し、人をも殺すでしょう。私は神様に誓う。
もう二度と飢えに泣きません!」
"Tomorrow is another day."のセリフで有名なシーン。
人殺しや人を騙すなんてことはしないが、仕事を得るためには死ぬ気で頑張らないといけない!と自覚した。

そこで、私は私はテストライティングに受かったWebマーケティング会社の案件を優先するように。その会社の案件は代行会社より文字単価も高く、成績表もない。親子2人餓死せずに生き延びるには仕事をちゃんとくれない会社より、くれる会社を優先しなくてはと思ったのだ。

しかし、私はまだまだ力不足のライター。2社の案件を器用にこなす力がなかった。Webマーケティングの会社の案件を優先すると時間がなくなり、代行会社の案件は短時間で仕上げないといけない。当然、代行会社の記事は質が落ちてしまうわけだ。

それが原因で、ある日私は社長の怒りを買ってしまう。そうなることは薄々想定できた。結局ノーギャラにされたときから、私はモチベーションが下がりっぱなしで、内心もう辞めたいと思っていたのだ。それも言い出すことができず、ずっと代行会社の仕事を続けてしまった。

社長は社長で、私を厳しいクライアントのお気に入りのライターに育成するつもりが、当てが外れてしまった。
実は、私は途中で厳しいクライアントの案件は自分には無理だと言ったのだ。代行会社のクライアントの中でも、私のクライアントの厳しさはピカ一。初心者の私にとっては荷が重すぎたのだ。社長にしてみれば、裏切られた気持ちだったろう。

社長は、
「時間を費やして教育したのに、他の会社の仕事を優先しやがって!」と内心思っていたはずだ。
一方の私は、
「ノーギャラの状態で教育だけされても。仕事を入れないと親子で餓死してしまう……」
結局お互いにわかりあえない状態になってしまったわけだ。

辞める直前、社長の態度はまるで拗ねた子どものようだった。ひたすら私を無視してチャットルームからいきなり追い出したのだから。でも、あの会社には感謝している。奴隷案件とは違い、ちゃんと教育してくれたのだから。
私が今こうして仕事をもらえるのも、あの会社のおかげだと思う。

こうして私は慣れ親しんだ会社を後にし、Webマーケティング会社の仕事を中心にやることになる。しかし、世の中とは厳しいもの。私には新たな苦難が待っていた。


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