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ライターになる道はいと険し3

「あなたのライターとしての成績は平均3です」
初心者の頃、初めて入ったライティング代行会社で付けられたライターの成績。この成績を付けたのは初めて担当したクライアントだった。

なぜ、私がライターに厳しいクライアントを担当することになったか?
それは単純にIT業界が長かったから。長年大手インターネットプロバイダーで働いてきた。結婚を機に辞めたのだが、独学でWebデザインをマスターしWeb制作会社でも長く働いた。

担当したクライアントはIT業界のある企業。当時ライティング代行会社のライターに、IT関係に強い人はいなかった。担当させても嫌がられたようだ。そこでIT業界が長い私に白羽の矢が立った。

クライアントの編集者は元記者の方2人。世間一般が想像するように、他のクライアントより文章には、はるかに厳しい。私も例外なくその厳しい洗礼を受けることに。

最初に3記事提出後、編集者は4人のライターに成績を付けた。項目は導入文、構成力、文章力、文法力などさまざま。ライターを始めたばかりの私は当然辛い成績。個別項目では「2」もちらほら。

しかしその中で、構成力だけは「4」だった。
「やった!4がある」
他の項目が悪くても「4」があったおかげで私はかろうじて平均「3」の成績。他のライターは個別項目で「1」がついた人もいるとか。もし私が「1」を取ったらきっと発狂していただろう。
この成績表が私のライター生活に影を落とすことになるとは、その時は夢にも思わず。

ライターの成績表を見て青くなったのは代行会社の社長。そのクライアントは多くの案件を持っており、代行会社だけで処理できる量ではなかった。そのため、他の代行会社にも発注していたらしい。当然他の会社のライターの記事が良ければこちらへの発注が減ることになる。

そんなわけで、社長はクライアントへの対応のため組織を強化。まず、社長の奥様の友人を校正者としてヘッドハント。彼女は大手企業のパンフレットの校正担当者。次に校正者と校閲者を大勢雇い、編集作業を効率化した。

最後は、ライター教育。有益と思われる動画を紹介し、それで勉強しろとのお達し。また、社長は月に1回はライター勉強会を開き、文章作成法のレクチャーを行った。

今から考えると、その会社は会社員のようにライターを教育してくれたのだから良心的だと思う。普通のライターはクラウドワークスに登録し、文字単価0.1円などの奴隷案件を受注。当然クライアントは何のスキルもない単なる個人が編集するため、何も身につかない。しかし、私はきちんとした教育を受けることができた。「教育を受けられたから良かったのでは?」と人は思うだろう。現実は厳しく、私にはいばらの道が待っていた。

社長は厳しいクライアントレベルのFBを校正者に要求した。FBだけではなく、ライター全員の成績をつけるようになったのだ。あるとき、私はとうとう「1」を取ってしまった!理由は単純である。「スペース」がたくさん入ってしまったから。校正者の修正内容も辛らつだった。

「まずい!このままではダメライターまっしぐら……」
危機感を抱いた私が決意したのは、個人添削指導を受けること。添削を受けるにあたり、私が目を付けたのはTwitterで知り合ったカナコ先生だった。

カナコ先生は人柄もよかったし、本物の実力を備えた先生だと思った。こんなとき判断したのは、先生のライター歴の長さと早稲田大学卒ということ。私は浪人経験があるが、友人たちはみんな早稲田志望だった。あの大学は国語力が相当高くないと入れない。Twitterにいる怪しげな自称講師よりはるかに信用がおけると判断した。

先生の添削指導のおかげで私はFBで修正が少なくなった。戻ってきたFBを見て嬉しくなったものである。何となくライターとしての自信もついてきた。しかし、これはつかの間の平和だった。
人生そんなに甘くはない。やっぱり私の人生は崖っぷちだと思い知ることになる。



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