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夜空はいつでも最高密度の青色だ

《夜空はいつでも最高密度の青色だ》 最果タヒ

最果タヒさんの詩集が映画化され、あの詩集をどのように映像に映すのか気になり観てみた

「都会を好きになった瞬間自殺したようなものだよ」と冒頭からこの物語をまとめるに相応しい言葉の表現だった

「君に会わなくてもどこかで息をしている、心臓を鳴らしている、だからそれでいい」と美香は言った

1000万人もいる東京で出会えたどうでもいい奇跡

私のいない日常にも平気な君の顔を想像できるから私もそれでいいと思った

「死んでしまうことを不幸だと思うなら生きていくこともできない」と岩下さんが言った
生きてさえいれば何でも出来る。
こんな無責任な言葉だが私もそれが全てだと思った
他人を信じすぎないそんなの分かっているが
誰しも忘れた頃に他人に救いと少しの望みを期待している

路上ライブをしている人を見て「売れないねあの人。誰も見てないし」と美香は言った
私は美香が見てるじゃん。と思った
小さなことでも継続していればきっと誰かが見ている。どんな思いだとしても。
また無責任な言葉を並べてしまったが、そんな気がする

見終わった後、私は窓の隙間から響いている雨音をゆっくり身に染み込ませた
傷ついたり苦しかったら大声で泣いてもいいんだよ
その声をかき消してあげる
と雨たちが囁いている気配を感じた
なぜ涙が溢れるのか尋ねられたら雨のせいにしよう

雨が止んで虹が出るように泣き止んだ頃僅かにも心の隙間に自分にしか分かりえない美しさが残るかもしれない

「大丈夫、すぐ忘れるから」
生きるも死ぬも希望も絶望もこの世から切り離すかのようなセリフがよく出てきた
この作品に"面白かった"という感想は感じなかったがそれが正しいと思う
それでいいと最果タヒさんも望んでいるのではないだろうか

夜空はいつでも最高密度の青色だ

真っ暗に見える夜空は凝集された青色なんだという言葉選びに私は希望を感じることができた

これからは涙を流さなくても滲んだ街の美しさに気づけるように生きよう

誰にだって隠したって隠しきれない愛がある

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