見出し画像

就活の支えとなった人事部長さんのお話

その人と初めて出会ったのは、会社説明会の会場前のロビーだった。説明会受付時間の30分くらい前にその場に表れ、「学生さんたちが、こんなに早くから、わざわざ時間を割いて来てくれているんだから、それに見合うくらいの情報を、少しでも提供します」と言い、業界のことや、就職活動のことを、あれこれと話してくださった。
その会社の人事部長さんだった。

会社説明会が終わって、質疑の時間に、パンツスーツ姿でショートカットだった私は、「そちらの●列目の男性」と指名して頂いた。壇上以外は薄暗かったし、私自身は何とも思わなかったけれど、「失礼しました」と何度も謝ってくださった。
(余談だけれど、私が就職活動をした頃は、スーツの色も黒だけではなく、グレーや紺を着ている人もいたし、女性のパンツスーツも珍しくはなかったし、シャツの色も真っ白ではなかった。淡い色のついたものや、縞のシャツなど、そこで、少しでも違いを出そうとしていた気がする。数年後、電車で見かける就職活動中の人たちが、みんな黒いスーツに真っ白なシャツになっていて、びっくりしたものだった。)

人事部長さんの話に戻る。説明会を経て、その会社に応募し、面接に行った時には、面接官の1人として人事部長さんと出会った。会社説明会の日のことを改めて謝って頂き、個として記憶してくださったいたことを知り、驚いた。そう言えば、「履歴書は全部読むし、読んだ人のことは全員覚えている」っておっしゃっていたなぁ。

〈●日までに連絡がなければご縁がなかったものと思ってください〉と言われていた時代。(昨今の「お祈りメール」なんて、親切な方だと感じるくらい、ご縁がなければ連絡すら頂けなくて当然だった。)その会社では、落ちても、受かっても、必ずメールで連絡があった。何次だかの面接が終わり、次が最終面接、と言うタイミングでは、人事部長さんから電話があった。

そして、最終面接の翌日だったか、翌々日だったか。
再度、人事部長さんからの電話があった。開口一番「いやぁ、申し訳なかった」と言われた。不採用だった。

不採用で、「申し訳ない」って言われたのは、後にも先にも、この会社だけだった。正直言えば、最終面接は全く手応えがなかったので、薄々ダメだったかもしれないなぁ、という気はしていたから、そんなにショックは大きくなかった。

ただ、この時に頂いた電話は、とても励みになった。面接のときに、次の人のじゃまにならないように、控室の荷物を寄せていた、とか、そういう、無意識の振る舞いの部分に目をとめて、そういうところがいいんだよ、と伝えてくださった。(ちなみに、控室の荷物の話は、その場にいた若い社員さんから聞いた、とのこと。人事の専門のスタッフではない。1人1人の社員にも、そういうところに目を向ける意識が浸透しているんだなぁ、と感嘆する。)

私の就職活動は、そこからまだ随分続いたと思う。最終的に結論を出したのは、4年生の7月だった。そして私は、「就職先を決めました」というメールを、人事部長さんに送っている。人事部長さんは、大変喜んでくださった。

就職活動は、しんどいことが沢山あった。もうあまり覚えていないけれど、どうしたらいいものか途方にくれていた。そんな中で、社会に出ようとする若者と、真っすぐに向き合ってくださって、そして、「大人はきみたちを応援しているし期待している」という風に振舞ってくれた大人に出会えたことは、大きな支えになったと思う。

今も折に触れ思い出し、感謝している。そして、その感謝を次にどこに繋いでいくのか、繋いでいけるのか、そこに意識を向けなくてはいけないなぁと思う。

#就活体験記

この記事が参加している募集

就活体験記

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?