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紙のあそび くしゃくしゃ・びりびり 保育園0~6歳の実践記録

毎月1回、保育園のアートクラスを担当している。
いつもは、主に3~5歳の幼児クラス向けの内容が多いのだけれど、今月は「0歳クラスから年長児まで、全員が楽しめるようなものをやりたい」と担当の先生からのリクエストがあり、「紙」で遊んだ。

遊びの準備

担当の先生には
・薄葉紙
・お花紙
・障子紙
それから、うちわと水糊を用意してもらう。

お花紙は、卒園式や卒業式などで、折って開いて、「花」を作るのに使う紙、と言えば、イメージできると思う。薄くてふわふわの紙。手触りも柔らかい。少し毛羽立っている。色々な色がある。

薄葉紙は、洋服を買ったときなどに、包んでもらうことがあると思う。お花紙と同じくらいの薄さだけれど、表面もつるつるしていて、張りがある。だから、折ったり、振ったりすると、ガサガサと音がする。サイズもお花紙よりも大きい。真っ白いものが一般的だけれど、今回は、カラフルなものを用意してくれた。(真っ白でも構わない。)

障子紙は、言わずとしれた「障子」に貼る紙。透けるけれど丈夫。サイズも大きい。今の住宅事情だと、知らないお子さんも多い。これは、あとで使う。

部屋は、なるべくものがない状態で、広く使う。余裕があれば、床の掃除をしておくと、ありがたい。

遊びはじめから 盛り上がりまで

最初は、0歳・1歳・2歳のクラスの子どもたちが、自分たちの都合のいいタイミングでお部屋に入ってくる。

2歳児さんは、事前に担任の先生から遊びの内容を告げられていたらしく、「かみ、くしゃくしゃする」と、期待一杯で入ってきた。台の上に載っているお花紙にすぐ気づき、手に取って、すぐにでも遊び始めようとする。

子どもたちの前に座り、薄葉紙を持って、カサカサ、と振ってみる。あ、音がする、と気づいて、子どもたちが注目する。自分の持っているお花紙も振ってみる・・・が、あまり音がしない。これだけで、発見!

何度か、カサカサ カサカサ と小さな音や大きな音を立てる。それから、クシャクシャクシャクシャ、と一気に丸めて見せる。手を広げると、丸めた紙がふわぁ、と立ち上がる。子どもたちが、みんな、私も私も、と、クシャクシャする。クシャクシャするうちに、ビリビリ、っと破いてしまう人もいる。
このあたりから、「何をしてもいいぞ」と分かってきて、それぞれに、好きな遊び方に没頭しはじめる。
びりびりしたり、お団子つくったり、そのお団子をまた紙で包んだり。

そうこうしているうちに、いいタイミングで0歳と1歳のクラスの子どもたちが部屋に入ってきた。さっきと同じように、紙を振って、カサカサ・・・と音をたてると、じーーーーっと見ている。なんだろう、って思っているのだろうか。すごく集中して見ている。しばらく、カサカサ。それから、クシャクシャ。そして、ビリビリ、って細く細くちぎって、ひらひらひらと、降らせてみる。手を伸ばす子もいる。
また、ビリビリちぎって、降らせる。ビリビリちぎって、降らせる。
床に落ちた紙を集めて、降らせる。
子どもの1人が、紙を一杯持った私の手を揺らして、降らそうとする。

こういう時には、紙を使って、どんな動きをしたら子どもが興味を持つのか、というアイディアを複数持っておくのがおすすめ。「音がする」「動きがある」「手触りを楽しめる」「変化する」・・・などをヒントに、子どもの反応を観ながら、いくつか試してみる。
そうすると、何かしら気に入る動きが見つかる。気に入ったな、というのは、その動きを繰り返そうとするので、すぐ分かる。気に入ったら、繰り返すことが大事。何度も何度も繰り返すうちに、その子と私自身との間に、何かが繋がるような気持ちになる。

少し大きくなれば、細かく切った紙を、頭の上に降らせても喜ぶ。床の紙を集めて降らせるうちに、今度は子どもが紙の束を私の頭の上にかけようとする。ヤンチャな子は、雪合戦のように、紙をわさわさと、こちらに投げてくる。どんどん興奮してくる。

この頃には、幼児クラスの子たちが、部屋の外から待ちきれないように中をのぞいている。

みんなが自分の遊びを一通り楽しんだころ、先生たちに、うちわを渡して、協力をお願いする。紙吹雪を小山にして、そのまわりに、先生たちが等間隔に座る。4人の大人が2本ずつうちわを持つのが理想。

せーの!

で一斉に、紙吹雪をあおぐ。紙吹雪をあおぐというよりも、床にうちわを打ち付けるようにして風を起こすと、紙吹雪が一気にぶわーーーーっと天井に舞う。子どもたちは大興奮。自分たちもうちわを持ち、手当たり次第にバタバタとあおぎはじめる。それまでとは桁違いに、部屋中にちぎった紙が散らばる。紙吹雪を集める、飛ばす、散らばる、集める、飛ばす、散らばる、という遊びが繰り返し起こる。

(この頃には、紙吹雪は、部屋の埃やらなにやらを、かなり含んでいる状態になっている。子どもたちは、もう誰も気にしていないけれど。始まる前にしっかり掃除しておきたいというのは、こういう理由。)

このあたりで、もう開始から40分以上過ぎている。
いよいよ待ちきれなかった幼児が入室。(入れ替わるように、0歳1歳は自分たちのお部屋へ戻る。)
部屋に散らばった紙と、うちわを手に、手あたり次第あおいだり、紙をかけあいっこしたりして遊ぶ。もくもくと、紙を丸めてカラフルお団子を作ったり、包んだ紙の両端をねじって飴を作る人もいる。

せっかくだから大きな紙吹雪をもう1回やろうと、声をかけて、みんなで紙を集めてくる。小山どころか大山になった。子どもたちが1人1本ずつうちわを持ち、せーの、であおぐ。

うちわが床をうつ音が バタバタバタバタと響き、その中で紙が宙を舞い、子どもたちが、わーとかきゃーとか叫ぶので、興奮が一気に高まる。

このあたりがクライマックス。

場が落ち着いて 作品づくりへ

そろそろ満足したかな、と思う頃に、子どもたちに声をかけ、大きなビニール袋の中に、紙を集めて入れていく。
集めることが楽しい人もいるし、集めるという目的があると俄然張り切る人もいる。部屋の中に散らばった紙が減っていくごとに、子どものテンションも落ち着いてくる。

紙が片付いたところで、部屋の中央に障子紙を広げる。障子紙の説明をするのに、『つるのおんがえし』の話をした。部屋のとびらに使っている丈夫な紙だよ、ということ。部屋の向こうがすこーし透けて見えるよ、ということ。この障子紙に、ちぎった紙を貼って作品を作ろう、と声をかけると、さっきまでの興奮がうそのように、部屋がしん、と静まった。

色紙を重ねて丁寧に貼る人もいれば、ちぎったふわふわのままの状態で貼り「これはサラダだよ」と見立てる人もいる。何かの形に見立てたり、まるめたまま貼ったり。

お昼ごはんの時間になっても、子どもたちは作業を続けていた。

「紙」という身近で、扱いやすい素材が、どんどん形を変え、子どもたちの楽しいに寄り添い続けた活動だった。

あー、たのしかった。

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