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橘川さんの新刊『参加型社会宣言』~~音楽がなければ生きているとは言えない。

◆ともに時代を疾走するひとへ。

橘川幸夫さんの最新刊『参加型社会宣言 21世紀のためのコンセプトノート』(発行メタブレーン)が届いた。

橘川さんは、渋谷陽一さんたちと『ロッキング・オン』を立ち上げた
創刊メンバーのひとり。
その後、投稿型雑誌『ポンプ』を発行するなど
常に参加型社会、参加型メディアを追いかけてきた人である。

デジタルメディア研究所の“所長”だし
本もたくさん書いている。イベントで立ち回っている。
最近は大学の講師もしている。
でも、橘川さんて何するひと? と肩書きを聞かれると困る。
参加型メディア一筋のひと、
人とひとの真ん中にいるひと。
としか言いようがない。

この本は1981年に出版された『企画書 1999年のためのコンセプトノート』のバージョンアップ版として位置づけられている。

この本は当時わたしにとって驚きの一冊だった。
企画書のノウハウ本ではない。
それはまだ見ぬ、でも手の中にある未来への指南書だった。

わたしが当時作っていたブルースのミニコミを見てもらおうと送ったのは
その少し後だったと思う。その後、おしゃべり放送局という有線のラジオ局でDJ(ディスクジョッキーの方)をさせてもらったこともあるし、実に息子はそのころからのおつきあい。
不登校のちょっとおませな彼に対し、対等に話を聞いてくれた人でもある。
いまもたまにお会いすると
最近出会ったユニークな若いひとたちの話をしてくれる。

そんな橘川さんの本だから
今度も団塊世代からの生き方指南書ではない。

ともに時代を疾走するひとに送る想いである。

たくさんの“企画提案書”が掲載されているのも
そのためなのだろう。考えて、動くのは一人ひとりだ。

◆クラウドファンディングで生まれた参加型書籍

今回はクラウドファンディングを利用しての出版。
校正者4名は、支援者126人の中から表れたという。
目次や進行状況は逐次、アップされていたから
こちらも一緒に編集のプロセスに参加しているような気持ちで
出版される日を待っていた。

「記憶の骨董屋」「炎上しない掲示板」「電子出版バンド」
「JASRACインキュベーションプログラム」「未来税金」
「音の図書館」「社会実装ハウス」
「コインランドリー・コミュニティ」
・・・・目次から項目を拾っただけでも、そうだ、わたしにも何か
できそう、との気持ちがむくむくアタマをもたげてくる。

◆音楽がなければ生きているとは言えない。

ロッキンオンな橘川さんであるから、教育、ゲーム、金融、国際・・・さまざまなトピックの中にはもちろん音楽に触れた一文もある。

中でも
P28の「NO MUSIC,NO LIFE?」の項目は
電車の中で読みながら、胸が熱くなった。

「人間は食料がなければ生きていけないが音楽がなくても生きていける。しかし、それは単に生存出来るということで、人間が人間として、つまり人間進化の最前線である現代社会で生きるには、音楽がなければ生きているとは言えない。」

やばい。
でも、音楽って必要じゃないですかぁ~
と遠回しにではない。
音楽の生存意義を、こんなにハッキリ言ってくれるなんて。

「情報は空間的に、広範囲な世界に広がっていくが、音楽は、時間の流れを遡っていくように思える。私たちがどこから来て、どこへ向かおうとしているのか、音楽とともに考えていきたい。」

コロナ禍のライブハウスの一件で
SNSでは何度か虚しさに精気を抜かれそうになった。
でも、ライブなんて、音楽なんて
あってもなくても困らないだろう、なんて言わせない。
胸を張ろう。
空腹を満たすこともできないし
筋肉や骨をつくることにも貢献しないかもしれないが
わたしのいくばくかは音楽でできているのだ。

そして言葉をつかって
音楽を通じ人の来し方行く末を表していくのが
わたしのやるべきことなのだ。


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