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風を切って走れ、走れ!the TIGER

新世代ディーヴァ「りん」


2023/11/5 @下北沢Three

レコーディングも終えて、周囲で何かと噂のthe Tiger。
彼らによる自主企画ということで、<TORAVEL spot:1 「ツーマンライブ!”T×Y”編」the Tiger×YAPOOL>へ足を運んだ。

the Tigerは、りん(vo/g) たいが(g) ゆーすけ(b) あつし(dr)による4人組。数年前、名古屋から東京に拠点を移し

がんばっている。

特にヴォーカルのりんちゃんは、ロック、ソウル、R&Bといったジャンルに閉じ込めても閉じ込めても、はじけ飛んで飛び出してくるような新世代ディーヴァだ。

最初にジロキチで観たとき、私はこんな風に書いた。


the Tiger 。20代。
アメリカ南部の香りをしっかり感じさせつつ、表の世界に扉が開いてた。掛け値なしにロックンロール。
天性のものを感じる、りんちゃんの歌。
頭でっかちじゃ歌えないアレサのrespect にはびっくりしました。
ギターのたいがくんは親の世代でステイプルシンガーズはじめソウルが好きという第二世代。名古屋から上京してみんなで頑張っているそうです。

バンドとして絆を強めたthe TIGER

そして今回。
“バンド”指数急上昇で、音の絆が目に見えて強くなった。身をまかせてそれだけで心地よかった。
リズム隊の成長が大きいだろう。ベースが大らかにビートを紡ぎ出し、歌に耳を澄ませたドラムがここぞという所で存在感を示す。それもあって、りんちゃんの歌と、たいがくんのギターも、ずっとのびのびしている。

若い頃、バンドから女性ヴォーカルだけ引き抜く場面を目の当たりにしてショックを受けたことがある。でもthe TIGERに絶対それはあたらない。

誰が欠けても成立しない。「バンド」なのである。

音楽の海を すいすい泳いでいく

彼らの音楽のベースはいわゆるルーツ・ミュージックだ。日本語ながら根っこは“All Your Love”(!)だったり“オフィーリア”だったりするので、知っている人はイントロでもう小躍りしてしまう。
この日少なくなかったオジサマたちも、みんな顔をほころばせていた。

共演のYAPOOLとアンコールで選んだのはストリート・スライダーズの<Boys Jump The Midnight>。

ザ・バンドあり、ブルースあり、スライダーズあり、このへんのおいしいところをつないでく感じがいい。ジャンルで縛られず、自由に好きな音楽をすいすい泳いでいく。贅沢なつまみ食いと言ってもいい。

最初に聴いたとき「頭でっかちでないアレサ」と感じたのは、まさにそこだったのだろう。理屈ではとらえない。自らの豊かな感受性に従って、音楽を広く大きくとらえている。
the TIGERの審美眼、生き方が選曲に映し出されているのだ。

おそうじオバチャンは女の唄だった

常に木村充揮さんの声で再生されてきた憂歌団の<おそうじオバチャン>が、女の哀しみを爆発させてるんだと気づかせてくれたのは、りんちゃんだ。

「かわいいパンティ履いてみたい」
のフレーズが、一つのイヤらしさもなくリアリティを持ってストレートに飛び込んできたのは初めてだ。

ここでも理屈ではなく、肉体で歌の芯を探し当てて引きずり出す力がものをいう。

あれってブルースだったんだ。それでいい。

それにしても、女の子達がブルースで楽しそうに身体を揺すり、ステップ踏んでいるのを見て、私は大切なことを思い出していた。

最近ブルースを復活させたい、もっと盛り上げたいという声を聞く。私もそんな気持ちだ。でも、それはオーティス・ラッシュやマディ・ウォーターズのレコードを買うことでも十字路伝説を語り継ぐことでもない。
こうして若いエナジーを注ぎ込んだビートが、みんなを踊らせ、ときめかせていけばそれが一番なのだ。

「あ、あれってブルースだったんだ」

それでいいんじゃないだろうか。

だから、the TIGERについて書くとき、なんて紹介するのがいいのか、まだ私は迷っている。

とりあえずラッシュもザ・バンドも知らなくていい。若い人もどんどん来て客席にエナジーを注いでほしい。
もちろん、その筋が好きなオジサン、オバサンも百聞は一見にしかず。シンプルに謙虚に次代にバトンを渡しましょう。

the TIGERの新譜はまもなく!


2023年11月末、配信からスタートとのこと。
最後にそのアルバムにも収録されるであろう、私の好きなオリジナルを1曲紹介しておきます。

働き者の歌
https://www.youtube.com/watch?v=xXvg4wbuIL0













https://www.tiger.takibi-factory.com/

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