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【2019参院選】15争点で公約を比較してみた【消費税・財政編】

   15の争点シリーズの消費税・財政です。本記事では、JAPAN CHOICE 公約比較 サービスと連動して、15個の争点について、解説を行っていきます! 表だけでは伝わらない、争点の構造や争点をめぐる経緯について各争点1記事ずつにまとめました。15の争点、今回は【消費税・財政】についてです。


1.日本の財政状況

  では、まず今、日本がどんな財政状況なのか確認していきましょう。
  以下のグラフの通り、税収は増えていますが歳出が増え続け、歳出と税収の差が開いています。歳出は100兆円規模なのに対して税収は今年過去最高額を更新しましたが、60兆円ほどとなっています。

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*「財務省 財政に関する資料」、「日経 2019年度予算案・国税収の推移」をもとに筆者作成


 歳出が増えている原因は、様々ですが、少子高齢化が背景のひとつにあります。
少子高齢化の進行とともに、高齢者が増え医療・介護費などの社会保障関係費が急激に増えていることがわかります。

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*「プチモンテ 社会保障関係費の推移(財務省 社会保障関係費の推移(億単位)から(兆単位)へ変換したもの」、「日経 2019年度予算が成立 過去最大の101兆円 社会保障・防衛費膨らむ」、
「統計局 高齢者の人口・人口推計 平成31年度」をもとに筆者作成


   では何が歳出を補填しているのか。
  それは、赤字国債と言われる公債の1つです。財政法で認められているのは、建設国債という使い道が限定される国債です。そしてこの赤字国債は、建設国債でも足りない場合、特例法により発行される使い道を限定されない国債です。
  また、この赤字国債の発行は利払い費の引き下げなどで減少してはいますが、他の先進国に比べ、GDP比に対する国債の発行残高が高く、対GDP債務残高比率は240%に迫っており、極めて数値の悪い状況に陥っています。

  一方で、財政赤字は問題ないという考えも昨今注目を浴びています。それがMMT(現代金融理論)です。MMTとは、独自の通貨を持つ国は、過剰なインフレにならない限り際限なく通貨を発行できるため債務支払いが滞ることはなく、債務残高がいくら高くなろうとも問題ない、語弊を恐れずにいえば借金をいくらしてもいいという理論です。


  今回は、財政赤字を改善する方法を取り上げていきます。
 まずは各党の財政健全化への姿勢を見てみましょう。


2. 財政健全化への姿勢


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  次はそのための財政健全化の方法を説明していきます。


3.財政健全化の方法  

 財政健全化の方法をここではシンプルに「歳入を増やす」、「歳出を減らす」の2つに整理しました。
  まず、「歳入を増やす」から説明していきます。

(a)「歳入を増やす」

  歳入を増やすとは税収を増やすことです。
  特に今年10%に税率が上がる予定の消費税は気になるところですね。
  与党は消費税が10%に増税されると約5.6兆円の増収効果があると見込んでいます。
  では、これから消費税、法人税・所得税、その他税目の増税に対する各政党の考え、反対派・賛成派の意見に触れていきたいと思います。

  まずは、特に気になる消費税からいきましょう。


(a).1. 消費税

  ほかの税目より安定した税収が得られる税ですが、増税すれば低所得者ほど負担が大きくなる逆進性が懸念されています。
  特に、共産・社民はこの点を強調しており、共産党は将来的には消費税を廃止するという考えを示しています。
  国民・維新は、今の状況で増税すべきではないとしています。また、国民は増税する前に社会保障の充実を実現すべきであり、増税の反動対策には、軽減税率ではなく、所得税の所得控除を給付付き控除に変更すること(日本型ベーシックインカム)を提案しています。この給付付き控除というのは、課税額が控除額より少ない場合、その余った控除額を現金で支給するというものです。例えば、課税額が10万円で控除額が15万円だったとすると残った5万円は現金で支給されるということです。
  そして、与党の自民・公明は、消費税増税は社会保障充実に必要な財源であり、増税の反動に備えた施策も十分に講じるとしています。

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  では、次に消費税以外の税目を見ていきましょう。


(a).2. 法人税・所得税

  法人税は2013年には37%でしたが、2016年には20%台に引き下げられ、29.97%になり2018年からは29.74%に引き下げられました。そして、2020年には25.5%に引き下げられます。日本の法人税が他国に比べて高いために大企業などが高い税を逃れるため日本より税率が低い他国に移ってしまうのを避けたい、中小企業の負担を軽減したいというのが目的です。また、法人税・所得税は景気の変動に影響されやすい面があり、経済動向に影響されにくい消費税を財源の軸とすべきだという意見があります。

  そして、所得税の経緯としては2015年の税制改革で新たに課税所得区分4000万円超が設けられ税率45%と最高税率が引き上げられました。
2018年の税制改革では、2020年から給与所得控除額・基礎控除額が一律10万円減額となり、年収2400万超は控除額を段階的に減らし、年収2500万超になった場合は控除額を0としました。
  年収850万超の会社員が対象(子育て世帯・介護世帯を除く)になり、負担が重くなります。年収850万以下の場合は、今までと変化はありません。

  政府の方針とは反対に、法人税・所得税の引き上げを掲げているのは共産・社民、見直しを掲げているのは立憲です。また、引き上げると記載はありませんが、国民も法人税への意見を述べています。

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(a).3.  相続税・贈与税

  相続税・贈与税は2003年に70%から50%へ引き下げられ、2015年の税制改革では、相続税率が55%に引き上げられました。
  また2018年の税制改革の際、事業承継税制の改革により、対象株式数上限が撤廃され、事業承継の際の相続税・贈与税の現金負担が0になりました。
  国民は、この事業承継税制を恒久化および免税措置を行うと主張しています。
  相続税・贈与税の引き上げには共産・社民が賛成していて、立憲は見直しを掲げています。

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  相続税の引き上げに対する反対理由としては、相続税を課税する資産の価値を評価するのは難しく、価値測定のために無駄な税金が支出されてしまうというのと、せっかく子供や孫のために働いて貯めた財産が相続税のために残せなくなるため、勤労・貯蓄意欲が削がれるという意見があります。

(a).4.その他の税

  また、以上の税の他に引き上げられるべき、もしくは新たに創設、または復活させるべきと主張されている税目が金融所得税・富裕税・内部留保課税・国際連帯税・為替取引税・環境税・物品税です。
  これらの税については、税の概要のみを簡単に説明しておきます。

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  それでは、次は「歳出を減らす」という観点から見ていきましょう。


(b)「歳出を減らす」

(b).1.政治にかかるお金を減らす

  これは議員報酬の削減や議員が使うことのできるお金を減らす方法です。

  賛成しているのは、公明・維新・国民・社民です。

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  議員定数削減に対する反対理由としては、①過疎問題を抱える南北問題などを解決するために議員は減らすべきではない、また、②国民の代弁者である議員が一定数いなければ、政治に意見を反映できないという意見があります。

(b).2.行政のスリム化

  これは、行政システムを効率化したり、行政にかかるコストを削減することで歳出を減らす方法です。
  政府が今まで行ってきたこととしては、2015年に内閣官房と内閣府の業務のスリム化する法律、内閣府スリム化法が成立し、2017年には総務省と内閣府が自治体にスリム化を促すなどの動きが見られます。

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  反対派の意見はコスト削減は行政サービスの低下を招くというものです。


(b).3.特定分野の歳出を減らす

  最後に、防衛費などの特定分野の削減についてです。冒頭にも書きました通り、歳出は年々増えています。社会保障費の増加もありますが、そのほかの分野としては、ニュースなどでよく取り上げられている防衛費、そして公共事業費などが年々増えています。
  歳出についてもっと詳しく知りたい方は、「お金は絶対うそをつかない~予算が教える政府の狙い~」をご覧ください。グラフで政府の予算について詳しく説明しています。

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  反対派の意見としては、どの歳出も必要があるものであり、減らしてしまうと支障が出るという意見があります。


最後に


  いかがでしょうか、普段聞きなれない税の名前が出てきたり、知っている税でもどんな変化があったのかは知らなかったという人もいらっしゃったかもしれませんが、税の上げ下げは私たちの生活に非常に影響を与えるものであり、財政は社会保障や私たちが普段利用している公共サービスを運営するについても重要なものです。特に争点となっている消費税は家計にダイレクトに関わっています。
  その重要な税についての判断にこの記事が皆さんの一助となれば幸いです。
  また、行政予算を可視化しているサービスもありますのでそちらもぜひ参考にしていただけたらと思います。もし、自分で決めるのが難しいという人は、投票ナビという自分の考えに近い政党を選んでくれるサービスがあるのでぜひ利用してみてください。



▶︎ シリーズ15の争点 他の記事はこちら


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【図解・行政】2019年度予算案・国の税収の推移(2018年12月)
https://www.jiji.com/sp/graphics?p=ve_pol_yosanzaisei20181221j-06-w390
財政に関する資料 財務省
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a02.htm
社会保障関係費の年間支出推移
https://www.petitmonte.com/politics_economy_life/social_security_expenses.html
2019年度予算が成立 過去最大の101兆円 社会保障・防衛費膨らむ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42970720X20C19A3000000/
人口推計 平成31年 統計局
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/new.html
高齢者の人口 統計局
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1131.html
MMT(財政赤字は問題ない)は、やはり危険
wedge.ismedia.jp/articles/-/15796?page=2
財政拡大理論「MMT]、理想の地は日本か
https://jp.reuters.com/article/mmt-japan-idJPKCN1QP072
30年度概算要求、国債費は23・8兆円 金利低下で2年連続減額
https://www.sankei.com/smp/economy/news/170823/ecn1708230026-s1.html
給付付き税額控除とは
https://r.nikkei.com/article/DGXNASFS3004I_Q1A131C1EE1000?s=3
法人税、25%に引き下げを 同友会が具体策提言
https://r.nikkei.com/article/DGXDASFS03039_T00C13A7EE8000?s=3
法人税の実効税率とは 外資誘致へ各国が引き下げ
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO24207930T01C17A2NN1000?s=0
なぜ、所得税や法人税ではなく、消費税の引き上げを行うのでしょうか
https://www.mof.go.jp/faq/tax_policy/02eb.htm
法人税率の引き下げ政策とは何?
https://www.fincy.jp/tax/a_324
所得税改正案、誰が得をする?基礎控除拡大と給与所得控除の縮小
https://www.all-tax.info/article/15645
来年度改正の基礎控除・給与所得控除について
https://www.jafp.or.jp/know/info/column/20190322.shtml
【基礎知識】相続税増税の本当の狙い
https://mainichi.jp/articles/20150113/dyo/00m/010/029000c
相続税増税の理由とその影響とは?
https://miraimo.com/10145
相続税率55%の意味 日本は本当に税率が高いのか
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO07439290Q6A920C1000000/
新・事業承継税制がわかる!
https://www.cuoliss.com/jigyoshokeizeisei/?gclid=Cj0KCQjw9pDpBRCkARIsAOzRziufcWwpux_Nck9uY1jPZhmY6JeClNVzwBfyLagdVYFr5RFVcpa5sBMaAtAYEALw_wcB
林秀人ホームページ
http://haya-hide.com/2018/09/13/teisu/
内閣府スリム化法が成立 他省庁に9分野移管
https://r.nikkei.com/article/DGXLASFS04H08_U5A900C1EAF000?s=0
総務省など、自治体スリム化促す 人口減備え民間委託推進
https://r.nikkei.com/article/DGXLZO13147550Q7A220C1PP8000?s=3
相続税増税は間違い
https://lite.blogos.com/article/33846/


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