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時系列で読み解く小池都知事と都議会の関係〜小池さんを支援する政党は?~


はじめに

 2期8年を務めた小池都知事の次の4年間の任期について、都民の意思を問う選挙が間もなく実施されます。東京都知事選は、一つの地方選挙でありながら、日本の政治に大きな影響を及ぼします。なぜなら、首都東京の予算は欧州の中小国に匹敵する規模を有し、そのために東京の政策が日本全体に影響を及ぼす可能性があるからです。また、1153万人もの有権者が一人の代行者を選ぶという都知事選の性質は、都知事がどれほど大きな影響力を持っているかを示しています。
 今年7月に実施される東京都知事選挙において、小池都知事の再選を支持・支援する政党、政治団体は主に①地域政党:都民ファーストの会、②自民党、③公明党、④国民民主党東京都連の4者です。
 以下ではこれらの政党が小池氏を支持・支援する理由や、その背後にある政治的な動機について、2016年の小池氏の都知事就任から2024年現在に至るまでの情勢の変化を考慮しながら、詳しく説明します。 [1]

①都民ファーストの会

 都民ファーストの会(以下、都ファ)は都知事に就任した小池氏が2017年に設立した地域政党です。 そのため、他のどの政党よりも小池氏との距離が近いといえます。
 同年の都議会議員選挙においては49議席を獲得し、自民党から都議会第一党を奪取しました。また、協力関係にあった公明党などと合わせて127議席中79議席と、過半数を占め、その党勢は小池知事の都政運営を大いに支えました。
 また、都ファは2020年の都知事選においては、小池氏が特定の政党の支持を求めず、都ファも支持を表明しませんでしたが、都ファ代表(当時)である荒木千陽氏が小池陣営の選対委員長に就任するなど、小池氏のサポートを行いました。
 しかし、2021年の都議会選では、小池氏は勢力を回復しつつあった自民党と協力関係を構築することを見据えていたと考えられていました。小池氏は、都民ファ代表の荒木氏が小池知事に代表復帰を要請するも応じないなど 、都議選最終日の応援演説を除けば都ファへの支持を積極的には表明しませんでした。結果として、都ファは議席を減らして自民党に第一党の座を譲ったものの、31議席を獲得し、一定の影響力を維持することには成功しました。

(2021年東京都議会選挙 出典:NHK)

 2023年に実施された江東区長選においては、自民、公明党と協力し、自らが支持する候補者を当選させることに成功しました。
都ファは現在においても、小池氏の安定的な支援母体の一つであるといえます。 [2][3][4][5][6][7]

②自民党

 自民党は小池氏が都知事に就任した直後は敵対的な関係にありましたが、現在に至っては協力関係にあります。
 2016年に実施された都知事選において、当時自民党員であった小池氏は党の公認を得られずに出馬しました。一方、自民党は元総務相の増田寛也氏を推薦し、小池氏と対立しました。小池氏が選挙に勝利し、都知事に就任した後もこの対立関係は続きました。
 2017年の都議会選挙においては自民党は小池氏率いる都民ファーストの会に大敗、元々57あった議席を23にまで減らし、議会における主導権を喪失しました。
 しかし、2020年には、二階幹事長(当時)が「小池氏に勝てる候補はいない」として、小池氏の再選を支援する旨の発言を行いました。しかし、都ファと未だに対立関係にあった自民党都連からは反発の声もあがりました。
 2021年の都議選においては、33議席を獲得し、都ファから都議会第一党の座を奪回するも、協力関係にある公明党と合わせても議会の過半数をおさえることができませんでした。
 2023年に行われた江東区長選では、政治資金問題の発覚によって自民党の苦戦が予想される中で小池氏、都ファと協力し、自らが支持していた候補を当選させることに成功しました。
 自民党と小池氏は最初は敵対していましたが、後年には有権者の小池氏に対する支持を活用する場面も多くなりました。 [3][6][7][8][9][10]

③公明党

 公明党と小池氏および都民ファーストの会との関係性は複雑な沿革を辿り、現在では、小池知事を支援しています。2016年の都知事選において、公明党は自民党と共に増田寛也氏を支持しましたが、小池氏が都知事に就任して以降、議員報酬削減を巡って対立した自民党との協力関係を解消し、小池氏及び都ファに接近しました。 
 2017年の都議会選においても都ファと選挙協力を行いましたが、同年における小池氏の国政進出の試みに対して公明党は反発、協力関係を解消するに至りました。 
 その一方で、2020年の都知事選においては小池氏の支援を表明しました。 
 2021年の都議会選においては、関係を修復した自民党と選挙協力を行い、選挙前の22議席を維持しましたが、自民党と合わせても都議会(全127議席)の過半数を占めることができませんでした。
 2023年の江東区長選では、小池氏、都ファ、自民党と協力を行いました。 
 公明党と小池氏は時に協力しつつ、時に対立しつつも、現在では協力関係にあります。 [6][7][10][11][12]

④国民民主党東京都連

 国民民主党、及びその都連は、2018年に小池氏が設立した希望の党を前身の一つとする旧国民民主党の後継組織として、2020年に設立されました。  
 しかし、旧国民民主党時代の2020年都知事選においては党内の意見をまとめきれず、自主投票を行いました。
 現在の国民民主党は2020年の都知事選以後に設立されましたが、その後は、小池氏と良好な関係を維持しているようです。 [13][14][15][16]

おわりに

 各政党の小池都知事に対するスタンスは次のように総括できます。都民ファーストの会は小池都知事の直接の支援者ではありますが、自民党との関係を重視する小池氏からは距離を取られることもありました。自民党は小池氏の就任当初は彼女と敵対していましたが、後年になると小池氏の人気を自らの影響力確保のために活用する面が見られました。公明党は自民党、小池氏を天秤に掛け、情勢に応じて両者の間を移動しました。国民民主党(新)は、設立以来小池氏とは良好な関係を維持している模様です。
 都知事選において、自民党、公明党が小池氏を支援し、立憲民主党、社会民主党、共産党が対立候補の蓮舫氏を支援したことによって、都議選は国政同様の与野党対決の様相を呈しています。
 小池支持勢力が大半を占める都議会において、仮に小池氏が再選した場合、少なくとも2025年の都議会選挙までは、議会と協調しつつ安定した都政を運営することが可能になると予想されます。一方、小池氏の続投は政治資金問題で苦境にある自民党が都において影響力を温存することを可能とすることでしょう。

引用、参考文献

[1]NHK.東京都知事選挙 告示 立候補者は過去最多の56人【一覧掲載】.2024年6月20日掲載.
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7022014.htm
[2]産経ニュース.都民ファーストの会 小池百合子氏が特別顧問に.2017年4月28日掲載.
https://www.sankei.com/article/20170428-2ACUI63KXZKZRMFPRICW7IWH7U/
[3]
 NHK.2017都議選 NHK選挙WEB.2017年7月2日掲載.
https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/togisen/2017/
[4]毎日新聞.話題の書「女帝」の質問受けず終わった小池氏の出馬会見 問われる記者「排除」の姿勢.2020年6月14日掲載.
https://mainichi.jp/articles/20200614/k00/00m/010/130000c
[5]東京新聞.都民ファは小池知事に「代表復帰」を要請 告示日は姿見せず.2021年6月25日掲載.
https://www.tokyo-np.co.jp/article/112812
[6]NHK政治マガジン.都議選 自民第1党も自公で過半数届かず 都民は第2党.2021年7月5日掲載.
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/63056.html
[7]東京・江東区長選の構図固まる 自民と都民ファ共闘 元都部長の大久保朋果氏が出馬表明.2023年11月21日掲載.
https://www.sankei.com/article/20231121-46TEEQOHEBLGLG6F74T5IQLBDY/
[8]Bloomberg.都政の「ガラスの天井」突き破る-自ら風起こした小池百合子氏.2016年8月1日掲載.
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-01/OB63UA6S972901
[9]朝日新聞デジタル.「自公」対「都民ファ」 都知事選から一転、ねじれる区.2020年6月25日掲載.
https://www.asahi.com/articles/ASN6T449KN6SUTIL001.html
[10]日本経済新聞.都議会公明「自民との連携見直し」 報酬削減案巡り溝.2016年12月14日掲載.
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG14HCP_U6A211C1CC1000/
[11]NHK.公明と都民ファーストの会が政策合意 選挙協力へ.2017年3月13日
https://web.archive.org/web/20170313100627/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170313/k10010909491000.html
[12]朝日新聞デジタル.公明・山口氏、東京都知事選で「小池氏を実質支援」表明.2020年6月16日掲載.
https://www.asahi.com/articles/ASN6J5X1NN6JUTFK00G.html
[13]
産経ニュース.国民党、国民民主党、希望の党…1週間で3つの新党誕生!? 国民党はわずか1日の存在.2018年4月26日掲載.
https://www.sankei.com/article/20180426-TM2F2D26XVJNDCCVW7M2HWRB3A/
[14]産経ニュース.新「国民民主党」は玉木代表が「続投」.2020年9月11日掲載.
https://www.sankei.com/article/20200911-CG4Q6QGPY5OIHPB4X2MSZX3X7M/
[15]NHK政治マガジン.国民 都知事選の自主投票を決定.2020年6月9日掲載.
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/39361.html
[16]NHK政治マガジン.国民と都民ファ 意見交換会新たに立ち上げ.2021年12月15日掲載.
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/74081.html


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