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都構想の移り変わり~大阪維新の会を中心に~

1.はじめに

都構想とは、2010年頃に橋下徹氏によって議論が始まった考えです。主な目的は、大阪市と大阪府の二重行政を解消するためとされています。
現在、市は広域的な仕事と地域的な仕事を両方担当していましたが、広域的な仕事を府に一任することで、市の仕事がより地域に密着したものになるとしています。
大阪市では、茨城県や広島県の人口に相当する数の人が暮らしています(2020年集計)。より小規模な政治体制を作るため、都構想議論では大阪市を4つの特別区に再編し、それぞれのリーダーが地域の特性に合わせて行政を行なうことになります。

2.なぜ都構想?

大阪市と大阪府は古くから対立し、協力関係を取れずにいました。その姿は「不幸せ」をもじって「府市合わせ」を呼ばれることがあります。その「府市合わせ」を解消するために都構想議論が始まったのです。
府市合わせについては「都構想議論の変遷~維新に至るまで編~」をチェック!

3.住民投票の流れとは?

都構想の住民投票は2015年に実施されています。
本記事では2015年の住民投票に至るまでの経緯、2020年(今年)の住民投票までの経緯を見ていきます。
その前に、住民投票の仕組みを知っておきましょう!
府・市の法定協議会で可決され、法務省からの承認を得た後に、府・市議会で協議されます。府・市議会の両議会の可決が得られた場合に、住民投票が実施されます。

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4.「都構想」が「大阪維新の会」の看板政策に

2008年、橋下徹氏府知事就任が就任します。府市の水道事業の統合を目指していましたが、決裂しています。そんな府市合わせ解消の思いがあってか2010年に「大阪維新の会」の会を立ち上げると、看板政策として「都構想」を掲げました。
維新は2011年4月の大阪府議選・市議選で第1党の座を勝ち取りました。

5.2011年、都構想の法的裏付け

2011年のダブル選挙(2種類の選挙の投票日を同日にする選挙)では維新が勝利し、松井一郎幹事長が知事に、橋下氏が市長に就任しました。この選挙は橋下氏にとっての出直し選挙であり、「民意を得た」として都構想を推進します。
同時期に、特別区設置の手続きを定めた「大都市地域特別区設置法」が成立したことで法的な裏付けができ、都構想議論が現実的なものになりました。

6.2014年、一回目のトライ(→頓挫)

法定協議会では、定数20人のうち維新の11人のみが出席し、全員一致で協定書の決定を可決しました。維新は、構想に反対する公明や自民、民主などの委員を維新に差し替えて過半数を確保し、法定協を単独で開催していました。
府・市議会では、維新以外の政党が反対したため、野党の反対多数により否決されます。
これによって、都構想議論は一度頓挫しました。

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7.2015年、二回目のトライ(→住民投票)

一度は頓挫した都構想ですが、公明党が「住民投票を実施すること」には賛成していたので、府・市議会で構想案をまとめた協定書が可決され、住民投票の実施が決定しました。12月25日に維新と公明が会談を開いた翌日の事だったため、選挙協力と住民投票賛成のバーターであった疑惑が出ています。
5月17日に行なわれた住民投票結果は「反対」が70万5585票、「賛成」が69万4844票でした。
「反対」が「賛成」を約1万票、得票率にして0.8ポイント上回りました
結果として、都構想は頓挫しました。

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8.再浮上と再頓挫

2015年11月のダブル選挙では維新が勝利し、松井氏が府知事、吉村洋文氏が市長に就任しました。
維新の二人が就任したことで、都構想議論が再浮上しました。
2017年4月、維新は公明との間に密約を結びます。「松井氏の任期中に住民投票を実施すること」を取り決めていました。維新は府・市両議会で過半数に足りず、都構想案を可決されるためには公明の協力が必要でした。公明が維新に協力する見返りとして、維新は公明に衆議院議員選挙(ダブル選挙)の協力をするとし、維新からは候補者を出さないことを約束していました。
しかし、2018年12月、維新が公明に協力を再度仰いだところ、公明は先延ばしにしたため、松井氏は密約があったことを暴露し、契約破棄に至りました。

9.公明党の賛成

2019年の4月地方統一選とダブルクロス選では維新が勝利し、吉村氏が府知事、松井氏が市長に就任しました。府知事と市長が入れ替わったことからクロス選と呼ばれています。ダブル選に勝利した維新ですが、都構想の住民投票実施に必要な府・市議会の議席は確保できていません。そのため維新は、関西で公明が議席を持つ衆院6選挙区に対立候補を擁立する考えを示し、賛成するよう圧力を掛けました。2019年5月、今まで都構想に反対していた公明党が条件付きで賛成に転じます。公明党の出した条件というのが以下の四つです。①住民サービスの維持②移行コストを最小限に抑える③現24区役所の窓口機能の維持④全4特別区に児童相談所を設置それらは2019年内にすでに合意に達し、協定書に組み込まれる方針となりました。

10.2020年、三回目のトライ(→住民投票)

法定協議会では、維新による賛成多数で可決されました。公明と府議会の自民は賛成、共産と市議会の自民は反対に回りました。
府議会と市議会でも可決されたことで住民投票が行なわれることが確定しました。
告示は10月12日、投票日は11月1日に行われます。
大阪市民を対象に行なわれる住民投票で賛成が反対を上回った場合、2025年1月1日から新制度に移行することになります。

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11.おわりに

ここまで、維新からの大阪都構想議論の変遷を見てきました!mielkaは大阪都構想に関する様々な情報を発信しています。「大阪都構想って何が論点なんだろう?」「都構想議論のきっかけって?」と疑問に思った方はぜひ他の記事をチェックしてみてください!

参考資料
大阪市・人口
https://www.city.osaka.lg.jp/toshikeikaku/page/0000014987.html
都道府県 人口ランキングデータ
https://uub.jp/rnk/p_j.html
wikipedia 大阪都構想
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%98%AA%E9%83%BD%E6%A7%8B%E6%83%B3
日本経済新聞 歴史で読み解く都構想、大阪の「府市合わせ(不幸せ)」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO86341670R00C15A5000000/
「大阪都構想」の設計図決定 維新単独、実現は不透明
https://www.nikkei.com/article/DGXNASHC17H05_T20C14A7000000/
0テレNEWS24 ``大阪都構想``府議会・市議会で否決
https://www.news24.jp/articles/2014/10/28/04262253.html
しんぶん赤旗 日本共産党 「大阪都」構想 事態急変 公明が協力に転換 同党内からも反発の声
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-12-28/2014122801_03_1.html
日本経済新聞 都構想議案、市議会が承認 府議会は17日に
https://www.nikkei.com/article/DGXLASHC13HBP_T10C15A3AC8000/
nhk 大阪住民投票 反対多数 都構想実現せず
https://web.archive.org/web/20150517143845/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150517/k10010082861000.html
朝日新聞 突然怒る松井知事 公明の密約「もういい、全部ばらす」
https://www.asahi.com/articles/ASLDV4GK6LDVPTIL00R.html
ニッポン放送 公明党府本部が大阪都構想に賛成せざるを得ない理由
https://news.1242.com/article/175449
毎日新聞 公明 大阪都構想賛成へ 維新に「前向きに議論」 衆院選にらみ方針転換
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190519/k00/00m/010/160000c
産経新聞 大阪都構想 公明4条件合意、住民投票でも賛成へ 特別区以降は「2025年1月」
https://www.sankei.com/west/news/191105/wst1911050037-n1.html
NHK政治マガジン 大阪都構想 協定書案可決 2度目の住民投票へ
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/40205.html
日本経済新聞 大阪都構想の制度案決定 法定協で可決、住民投票へ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60510120Y0A610C2AM1000/
日本経済新聞 大阪都構想、府議会で制度案可決 反対派は足並み乱れ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63152480Y0A820C2AM1000/
読売新聞 大阪都構想制度案、府議会で可決…市議会は来月3日にも
https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20200828-OYO1T50023/
朝日新聞 都構想案、大阪市議会で可決 11月に再び住民投票へ
https://www.asahi.com/articles/ASN933DRKN92PTIL024.html



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