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東海第二原発への前払金の回収方法は減価償却費



東電から日本原電への前払金が1413億円に

2023年度の日本原電の決算概況によれば、日本原電の諸前受金(東電からは前払金ですが、日本原電からみると前受金になります)は前期の1027億円から385億円増えて、1413億円になりました。https://www.japc.co.jp/news/press/2024/pdf/240516_1.pdf

日本原電2023年度決算概況 連結貸借対照表

東電は前払金をどうやって回収するのか

東電以外の電力会社は、債務補償という形で日本原電に経済的な支援をしています。ですからこの前受金1413億円は東海第二原発のための東電からの資金支援だと思われます。
この多額の前受金(東電にとっては前払金)をどうやって今後東電は回収するんだろうとおもっていました。この疑問への回答を以下の資料でみつけました。
「東海第二発電所の発電用原子炉設置変更 (発電用原子炉施設の変更)に係る 原子炉等規制法第 43 条の 3 の 6 第 1 項 第 2 号(経理的基礎に係る部分に限る) 基準への適合について」(2021年7月15日)という資料の57pの図です。(タイトル画像)

https://www2.nra.go.jp/data/000359330.pdf

減価償却費とは

「事業に用いる固定資産のうち、建物や機械設備など、年月の経過とともに価値が低下していく資産を「減価償却資産(償却資産)」といいます。減価償却資産は、原則として、資産ごとの耐用年数に応じて取得価額を分割し、複数年にわたって費用化していくことになります。この会計処理の方法が「減価償却」です」以下のHPより

減価償却には定率法と定額法の二つの方法がありますが、日本原電は定率法を使用していることが、タイトル画像の図をみるとわかります。設備の費用を毎年同じ比率で償却していくので金額は償却開始当初が大きく、だんだん下がっていくのが特徴です。原発の減価償却期間は15年間です。

技術的能力と経理的基礎

原発を動かす会社には「技術的能力」と「経理的基礎」が求められます。( 原子炉等規制法第43条の3の6−2 *1)日本原電は東海第二原発の審査にあたり、規制委員会から「経理的基礎」を求められ、2018年3月、日本原電は東電に対して資金支援を求め、東電は前払金の形で資金支援することを約束しました。(日本原電にとっては前受金)
今回の審査資料を読むと、前回2018年審査時には1740億円だった工事費用が610億円に増額となり、この資金の手当てをどうするかあらためて審査が行われたようです。
その審査の中で、工事のための資金を前払金として東電は日本原電に支払い、竣工後、減価償却費としてこれを回収すると説明されています。

日本原電に「経理的基礎」はあるか

原発専業会社の日本原電は福島原発事故後、まったく稼働しない原発を抱えながら、黒字決算を続けています。なぜそんなことが可能なのかは以下の note に書きました。
福島原発事故で経営破綻して、国が半分以上の株を所有している東電、銀行に対して債務補償もできない東電の前払金による経済支援がなぜ「経理的基礎」となりうるのか。今回、2021年の資料を読んで、もっとおかしいと思うようになりました。

東海第二原発 防潮堤工事はやり直し

昨年6月、東海第二原発の防潮堤の工事に施工不良が見つかりました。詳細は note にお二人が原稿を書かれていますのでそちらをご覧ください。
まさのあつこさんの記事はこちら。

弓場清孝さんの記事はこちら。

周辺6市町村の首長が工事現場見学

この工事現場を周辺6市町の首長が見学したことを東京新聞が報じています。それによると、東海村の山田村長は「結構大変な不具合と感じた」と発言。一方原電は以前から工期を今年9月までとしていて、それを変えません。これから対策工事を始めて9月完了に間に合うのかとの質問には「仮定の話にお話するのは難しい」と回答したようです。(東京新聞5月28日の記事より)

なぜ工期を変更しないのか

工期を変更しない理由のひとつは、変更申請をしないといけなくなるからではないでしょうか。防潮堤工事がやり直しになれば、東電工事にかかる費用も当初より多くなるはずです。当初1740億円だったものが610億円増えて2350億円になり、今回の工事のやり直しでまたいくら増えるのか。そしてその追加費用の「経理的基礎」の審査が改めて必要になります。
そもそも5人の規制委員の中に経理や会計の専門家はいません。また規制委員会が「経理的基礎」として審査しているのはあくまで「工事費用を担保できるかどうか」だけです。本来なら運転中の資金はもちろん、大事故を起こしたときの賠償、廃炉費用までの「経理的基礎」がなければ、原発を運転する資格はないはずです。

東海第二原発を廃炉に!

工事の費用でさえ、こんなめちゃくちゃな前受金なんてやり方でないと確保できない会社=日本原電。東海第二原発を再稼働して、もし大事故を起こしたら、いったいだれが賠償費用、廃炉費用を支払うのでしょうか。そのことを問わないまま再稼働を認める規制委員会は規制機関として失格です。

経理的基礎のない東海第二原発は廃炉に!


*1 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律
第43条の3の6
 原子力規制委員会は、前条第1項の許可の申請があつた場合においては、その申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。

 発電用原子炉が平和の目的以外に利用されるおそれがないこと。

 その者に発電用原子炉を設置するために必要な技術的能力及び経理的基礎があること。

*2 ここでは東電と書いていますが、日本原電と東海第二原発の売買契約を結んでいるのは東電EP(エナジーパートナー)です。東電グループの子会社で電気を発電所から買い、顧客に販売しています。

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