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日本原電はなぜつぶれないのか?   =東電は福島原発事故の賠償よりも日本原電への支援を優先している!=

日本原子力発電(以下日本原電)という発電会社があります。原発を4基所有していますが、東海原発と敦賀原発1号機の2基は廃炉になり、再稼動の準備をしているのは茨城県東海村にある「東海第二原発」と福井県敦賀市にある「敦賀原発2号機」の2基です。福島原発事故の後、12年以上まったく発電していませんが、電力5社が原発の年間維持費を負担しています。さらに東電は東海第二原発の資金支援を約束しています。


日本原電の2022年度の売上げは900億円

2022年度の日本原電の会社概況書(タイトル写真)をみると、販売電力量はゼロですが、販売電力料つまり売り上げは900億円になっています。東北電力、東京電力エナジーパートナー(以下東電EP)が東海原発と東海第二原発、中部電力、北陸電力、関西電力は敦賀1、2号機の年間維持費を負担しています。
今年6月1日、電気料金の値上げをした東電EP(東京電力エナジーパートナー)、東北電力、北陸電力3社の電力料金の値上げ申請の書類から計算すると、日本原電は年間1158億円の売り上げを認められています。

東電EPは550億円、東北電力は127億円、中部電力165億円、北陸電力142億円、関西電力174億円

東電EPは550億円を、東北電力は127億円を日本原電に支払うことを認可されました。東海原発については東電EPだけが、東海第二原発については、東北電力と東電EPが2:8の比率で分担して維持費を負担する契約です。
北陸電力は敦賀1号に9億円、敦賀2号に133億円、合計142億円を支払うことを認められました。
今回値上げ申請をしてない中部電力と関西電力も敦賀原発1、2号機の基本料金を負担していて、その比率は、敦賀1号は、中部電力、北陸電力、関西電力で4:1:5、敦賀2号は33:34:33です。これで計算すると、中部電力は165億円、関西電力は174億円を負担します。
合計で1158億円、日本原電の原発の維持費として、5社の電力会社の消費者が負担することになります。

なぜ動かない原発の電気代を支払わねばならないのか

この記事によれば、今年の東電HDの株主総会で東電EPの長崎桃子社長は「電源購入費用(電力の調達費用)を少しでも下げるために原発は有効で、二酸化炭素(CO2)を排出しない原発は必要と考えている。仮に稼動していなかったとしても、原発を適切に運営するための費用を支払うことで、稼動した場合に電力を調達できる」と答えました。

東海第二原発が大事故を起こしたら避難が必要な人は91万人

東電EPが年500億円以上支出する東海第二原発は、首都圏唯一の原発です。もし大事故を起こして30km圏内の人の避難が必要になった場合には、91万6510人が避難することになります。実現可能な避難計画が立てられないとして、2021年3月、水戸地裁は東海第二原発の運転差し止めを命じました。

敦賀原発2号機は審査書を改ざん?して審査ストップ

2013年と2015年、2度にわたって、原子力規制委員会(以下規制委員会)は敦賀2号の原子炉直下にある破砕帯は活断層であるとの判断を下しました。原子炉直下に活断層がある原発の運転は認められません。しかし、日本原電は活断層ではないと主張、あらためて書類を提出するなど審査を続けていました。
2020年2月に、提出された審査書類の一部が無断で書き換えられていることを規制庁の職員が発見。指摘すると、日本原電側は「これは新たな観察結果を反映させたのであって、改ざんではない」などと主張。審査は2年以上にわたって中断。2022年10月にようやく審査を再開したものの、申請書類に誤記などが大量にみつかり、ふたたび審査は中断しています。

福島原発事故の賠償金、東電だけが負担する特別負担金はゼロに

福島原発事故の賠償費用は、全国の原発を持っている電力会社が毎年「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に拠出しています。全国の電力会社が負担する「一般負担金」と東電だけが負担する「特別負担金」があります。2023年3月末に発表された一般負担金は、前年と同じ1946億円で、うち東電分は675億円でした。ところが東電だけが負担する特別負担金は、赤字だからという理由で、ゼロになりました。特別負担金の金額は、東電の経営状態により変化します。2019年3月末から2021年3月末までの3年間は毎年500億円で、2022年3月末は400億円に減額。ゼロになったのは今年が初めてです。

日本原電に前払金約2200億円を払う東電EP

原発を動かす会社には「技術的能力」と「経理的基礎」が求められます。(原子炉等規制法第43条の3の6−2)日本原電は東海第二原発の審査にあたり、規制委員会から「経理的基礎」を求められ、2018年3月、東電に対して資金支援を求めました。東電は資金支援することを約束、その支援額は約2200億円と報道されました。

日本原電の前受金が541億円増加

日本原電の2022年度の会社概況書をみると、前受金が前年度より541億円増えていて、累計1027億円となっています。「東電EPは前払金をいくら日本原電に支払っているのか」と東電に質問しても、回答はありません。なのでこの前払金の増加額541億円が実際に東電EPが支払ったものなのかどうかは確認できません。しかし2018年に東電EPが前払金の形で日本原電に資金支援するといったのは事実です。
https://www.japc.co.jp/company/ir/pdf/gaikyou2022.pdf


日本原電 会社概況書2022年度(第66期) 45頁


東電は福島事故の賠償を優先すべき

東電HDは、赤字を理由に原子力賠償の特別負担金の支払いをゼロにしてもらいました。東電EPは多額の費用(2800億円)を日本原電などの動かない原発のために支払い、決算は赤字で、電気料金を値上げしました。その上日本原電に多額の前払金まで支払っているかも。東電は日本原電の支援より福島原発事故の賠償を優先するべきです!!

*タイトルの画像は2022年度日本原電「会社概況書」です。以前は日本原電も「有価証券報告書」を提出していたのですが、2020年度から会社概況書になり、販売電力料が一括表示のみになり、電力会社毎の数字がわからなくなりました。
https://www.japc.co.jp/company/ir/pdf/gaikyou2022.pdf

*日本原電への支払金額は以下の料金制度専門会合の資料をもとに計算しました。
電力ガス取引等監視委員会 第45回料金制度専門会合
配布資料3−3 東電EP 

https://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc_electricity/pdf/0045_03_03.pdf

配布資料3−2 東北電力

https://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc_electricity/pdf/0045_03_02.pdf

配布資料3−4 北陸電力
https://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc_electricity/pdf/0045_03_04.pdf

*東電EPの電気料金値上げについては「『原発を再稼働すれば電気料金が下がる』という印象操作にだまされないで」もどうぞご覧ください。

https://note.com/mie629/n/ncc5060a092a3https://note.com/mie629/n/ncc5060a092a3

*9月15日、2022年度日本原電会社概況書45頁画像追加しました。

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