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詩: たりない、たりない


好きなことが
たくさんあるのはいいこと
だと思ってきたけれど
好きなことどうしが
時間と労力を奪いあって
おたがい口々に
「たりない」「たりない」
と言いあっているのを見るのは
くるしい

まるで
ヒナをたくさん抱えた親鳥が
飢えて苛立つくちばしを
巣のへりいっぱいに見るようだ
ヒナを巣から落として
口減らしをするべきか
このままやかましい諍いに
心を痛めつづけるのか

もし親鳥であったなら
「たりない」「たりない」と
言わせなくてすむように
自分をかえりみて
できるだけ多くの餌をとる
おなかを満たして
ゆっくり寝かせて
みながすこやかに育つよう
最善をつくす
どのヒナが命を落とすのか
どのヒナが一人前に巣立つのか
それは結局
親鳥の決められることではないから

好きなことどうしが
肩を寄せあって小さな巣に眠るとき
なんともいえず 涙がこぼれる




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