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【白木美貴子&小曽根真】白木美貴子ライブ 2001年7月29日 アルフィー

このライブレポートは、同日の「おやすみ、こどもたち」レポートの続編です。ぜひ前編に続けてお読みください。(私自身このレポートの存在を忘れていました。)

 客席を出て少し待っていると、三鈴さんが着替えて楽屋口から出てきた。もういつものかわいいワンピース姿の三鈴さん。みんな口々に、感動と感謝の言葉を述べる。目は・・・あいかわらず涙目である。どうしてこんな美しくかわいらしい人が、舞台の上では変身してしまうのか不思議という他はない。

 いろいろ挨拶をしていた小曽根さんがこちらに帰ってきて、「それで、今日これからライブあるんだけど、行く人いる?」。金さんはもちろん元気よく、クリキントンさん、そしてペコさんが手をあげる。僕は心の中で「ペコさん、なんで僕らファンと一緒に手あげてるの?」と思ったが、その振る舞いがいかにもペコさんらしくてすごく嬉しかった。今日は珍しくめがねをかけていないmegmeeさんとセンリさんは、なんだかこそこそ相談して手をあげた。僕は、例の小曽根さんの書き込みに心ひかれながらも、今夜は帰らないとけないなあと思っていたのだが、でも気がついたら手をあげていた。「こういう時は、抵抗したらだめだ!」。ついでに、「おやすみ、こどもたち」。風が音をたてて吹き始めていた。


 五人でちょっとお茶して金さんの思想と意見を伺う。オフ会で三鈴さんから聞いた北海道追っかけツアーの話(このお話はいずれあらためてご紹介します)を、御本人から再度聞いて一同感動。今日は泣いてばっかりです!タクシーに乗り、六本木アルフィーへ移動した。


 七時からのセカンドステージは超満員。舞台のはねた三鈴さんほか出演者の方々、自宅で犬の散歩をし食事もしてきた(電光石火の所行である)ペコさん、もちろん小曽根さん、そしてNYから到着したばかりのkiyokoさんまで・・・ものすごいメンバーが客席にそろっている。そして、白木美貴子さんのステージがはじまった。ジャズのデビューライブである。ドラムに海老沢一博さん、ベースに坂井紅介さんを従えて、堂々のスタンダードナンバーを、美しく甘美に歌い上げる。ガーシュインの”Someone to watch over me” のバースの美しいこと、「モナリザ」のアカペラ、ベースのリードだけではじまる「サテンドール」など。多少緊張されていたようだけれども(当たり前ですよね)、女優さんらしく叙情性豊かに歌い上げる。僕の目の前では、小曽根さんとみずずさんが、とても仲がよさそうにスイングしている。こういう時のみすずさんは、めちゃくちゃのりがいい。なんか、また涙が出てきてしまった。そして、いよいよゲストとして小曽根さんが登場。クリキントンさんのレポートにもあるように、なんと三曲ですよ!みなさん。とりわけ、小曽根さんが白木さんに歌うようにアドバイスしたというミッシェル・ルグランの曲は、とてつもなくリリカルでロマンチックな歌。小曽根節が随所にちりばめられたピアノのリードで、気持ちよくせつなく歌いあげてゆく、息のぴったりあったコラボレーションだった。「なんでこれがデビューなの?」。ピアノが変わって”New York! New York!”でごきげんにスイング。白木さん自身が、「幸せ!」と言っておられたが、その場にいた誰もが最高に幸せな気分を共有していた。全部で十曲くらい歌ったのか・・・。アンコールの拍手は鳴りやまず、みずずさんは叫びまくっているし(笑)、アルフィーには嵐が吹き荒れていた。そして、白木さんが再び登場して、またピアノは小曽根さんにチェンジ。なぜか?アンコールは、もちろん「おやすみ、こどもたち」のテーマ曲だったからだ。実に美しい日本語のララバイを切々と歌い上げる。気づいたら、目の前で三鈴さんが泣いていた!「おやすみ、こどもたち」演じた俳優さんたちがみんな白木さんの歌を聴いて涙ぐんでいるのですよ、みなさん!そこに、観客だった僕たちも一緒にいることができたんですよ!なんという幸運!!そのことだけで、もう僕は鼻がするずるしてきたのであった。


 セカンドが終わって、帰ろうかかな?と思っていたら、クリキントンさんが僕のところへやってきて、「僕たちはサードにも残りますがどうします?」と聞いてくれた。もう、帰れるわけはなかった。帰る理由などなかった。脚が動かなかった。金さんが小曽根さんにそのことを伝えると、小曽根さん「わあ!残って!残って!でも無理したらあかんよ!」無理はしてへんけど、とても帰えることなんかできませんよ、ねえ!結局五人ともサードにも残った。

 今度は、最前列。ひさびさの「かぶりつき」である。(金さんにその表現はいやらしい!と注意されたが・・・)。小曽根さんの天才的な指使いとペダルワークを堪能させてもらった。あまりの幸せに、涙が流れてきた。そして、二度目のアンコール。白木さんが、「ひとつお願いがあります」と言った。「今日、私の尊敬するジャズシンガー伊藤君子さんがここに来ておられます。是非一曲歌っていただきたいのです」。出てきたのは、ペコさんと小曽根さんだった。僕と、センリさんは無言で見つめあった。Megumeeさんはもう泣いていた。クリキントンさんは放心状態だった。あの金さんですら、あまりの展開に目が泳いでいた。曲は”Sometimes happy, sometimes blue”. モントルーのライブの再現。ドラムスはだんな!どんな演奏だったかって?もうね、もうすごい!すごかったです。まいりました!って感じだった。僕は、残念ながらこのセッションを言葉に移す技術を持たない。ただひたすら、その場にいられる幸せを感じてスイングしていたのである。ペコさんは、「白木さんの歌を聴いて、私たちジャズシンガーが手あかにまみれさせたスタンダードをほんとうに素直に美しく歌ってくれて、スタンダードのすばらしさを再発見しました。ありがとう」とスピーチされた。


 そして、最後に小曽根さんの白木さんの「おやすみ。こどもたち」。終わって、僕たちは言葉がでなかった。こうね、こうダッコちゃん人形からね、空気をすーっと抜いたみたいなね・・・ああいう感じ。みんな、同じ方向を向いて、にたにたにた、言葉もなく放心していた。そのうち、後ろから、聞き慣れた声が聞こえてきた。すぐ後ろの席で、小曽根さんが、主演の内田滋啓さん(現在は内田滋というお名前で活躍中です)になにごとか熱弁をふるっていたのである。歩く情熱大陸は、どこまでも情熱大陸で、われわれの放心をよそに、きっと次の夢を語っていたのだろうと思う。でも、だからこそ、僕たちファンは、これからも小曽根真についてゆくのである。


 僕など、ジャズ歴・小曽根歴は極めて短く、それなのに、こんなすばらしい場に偶然居合わせることができて、どうしてそうなったのか、全く今日も説明できないでいる。なんとなく帰らなかった、帰れなかった自分を、誉めてやるしかない・・・とも思う。でも、これもジャズの神さまがくれた幸運、運命だと思うことにする。ありがとう!もう戻れません!


 きのうたまたまアルフィーに来られなかったみなさまに、ほんとうにあやまりたい!でも、昨日は本当にすごかったんです。だから、長々とレポートを書いてしまいました。(きっと長すぎる・・・って言われるけどね。それもごめん!)。


 三鈴さん、小曽根さん、白木さん、ペコさん、海老澤さん、坂井さん、そしてみなさん、ほんとうにありがとうございました。あたしゃ、みなさんから一杯パワーをもらいました。金さんはじめ、ご一緒してくださったみなさまにも感謝。そして、このフォーラムのみなさまも感謝です。
ほんと、今日だけは許してください!


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