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明治33年のガイドブック-名古屋ホテル
★前回までの名古屋ホテルまとめ
これまで絵葉書や紙の資料について調べる際に、国立国会図書館のデジタルコレクションを利用する事が幾度もありました。
中には国立国会図書館へ直接行く、もしくは「図書館向けデジタル化資料送信サービス」を利用しないと、インターネット上では閲覧できない資料があります。
(明日、令和4年5月19日からは利用者登録すれば個人の端末でも閲覧出来るようになるそうです。印刷等のサービスは来年開始予定)
今回、その区分に含まれる名古屋ホテルの写真資料について、国立国会図書館から当noteへの掲載許可を頂けました。
私個人が所持している資料ではありませんが、出来る限りホテルの情報を集約出来るよう、また、少しでも多くの方に該当資料を見て頂くきっかけになる事を願って、こちらでその一部を紹介したいと思います。
(以下、画像は全て国立国会図書館所蔵資料です)
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「Hand book of information about Nagoya and vicinity for tourist」
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「Hand book of information about Nagoya and vicinity for tourist」は、明治33(1900)年に名古屋ホテルが外国人観光客向けに発行したガイドブックです。
巻頭に明治期のホテルの外観、エントランス、内観の写真が掲載されています。
ホテル門前
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≪ENTRANCE TO HOTEL≫
ホテルの門前に並ぶ人々の写真。
人力車の車夫や、自転車を押す人の姿もあります。右の2人はゲストにも見えますが、ガイドブック用に撮影したのでしょうか。
玄関ポーチ周辺
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≪FRONT PORCH OF HOTEL BUILDING≫
門の奥へ進むと、開放的な縁に、軒飾りのあるポーチが見えてきます。奥の方には日本館へと続く太鼓橋や灯篭も確認できます。
ホテルの側面
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≪SIDE VIEW OF HOTEL≫
絵葉書でよく見られる構図の1枚。左手前に日本館への太鼓橋および渡り廊下があります。在りし日の展望台は堂々たる姿です。
日本館
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≪GARDEN & JAPANESE BUILDING≫
先述の太鼓橋の向こうにあるのが日本館です。
着物を着た3人の女性が欄干のそばに立っています。こうして見ると庭園は殆ど森のような様相です。
エントランス・フロント
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≪ENTRANCE & HOTEL OFFICE≫
扉を開いていよいよ館内へ。重厚な雰囲気です。
なんといっても目を惹くのが階段の親柱、下部が鳥獣の足のようなフォルムになっています。階段裏は板張りで、市松模様になるよう組まれています。
フロント側にはキーボックスらしきものもありますね。
書房
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≪READING ROOM≫
書房(書斎)は小ぢんまりとしたスペース。
マントルピースの持ち送りは金属でしょうか、曲線を描いた可憐なデザインです。
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食堂
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≪DINING ROOM≫
奥行きのある食堂は、のちに改装され、『繪皿の間』として陶器のブローカー達に親しまれる空間となります。
談話室
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≪PARLOR≫
光が差し込む談話室の写真。
窓際に座る男性の後方、壁か柱と思われる部分には彫刻を施したような模様が見えます。
格調のある調度品に格天井、まさにホテルで過ごす優美な時間を思わせてくれる1枚でした。
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写真の紹介は以上です。
ホテルの外観や内装は、創業者である高田金七・鐵次郎が馴染みの棟梁を神戸に数日間派遣して、外国人居留地を観察した結果生まれたものなので、どこかに似たような意匠の記録が残っているかもしれません。
現状、いずれも他の媒体では同じ写真を確認出来ておらず、明治期のホテルの貴重な資料と言えそうです。
ガイドブックにはこれ以降も、明治期の市街地図や、名古屋城に関する記述等も興味深い内容が掲載されています。
図書館送信サービスの拡充を機会に、是非とも資料全体も確認頂ければ幸いです。
(本文:りせん)
【参考文献】
名古屋ホテル『Hand book of information about Nagoya and vicinity for tourist』1900年
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1900976
運輸省『日本ホテル略史』1946年
鉄道省『観光地と洋式ホテル』1934年
下郷市造 『ホテルの想ひ出』 大阪ホテル事務所 1942年
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