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無力でどうしようもなくて。 ただ、祈る日があってもいい

子どもの頃、
自分の力ではどうにも出来ないことがたくさんあった。

その場を凌いで、気を紛らせて、逃げ出しても、「なんて無力なんだろう」と思うことばかりだった。


そんなとき、私は決まって祈った。

仏様でもイエス様でもマリア様でもご先祖様でもいいから、誰か空いてる神様、助けてよ、と。

身勝手に、なんとかしたくて必死になって。

信仰していたわけではない。
ただ、それが習慣になっていた。


以下、機能不全家族、暴力、モラハラ、トラウマなどに触れていきます。直接的な表現は控えておりますが、お読みになられる際は、自己責任で、ご無理なさいませんようお願いいたします。


大学に入学すると共に、生まれ育った家を出た。

捨ててしまいたい過去を背負いながら、にぎやかな都会の街で何食わぬ顔をして生きていた。

誰も私の過去を知らない。触れられたくないことを問われれば、相手に合わせて同じ温度でそれらしく返す。ちょっとした嘘を交えながら、ほんとうっぽく適当に。

家族仲がいいかとか。年末年始は実家に帰るのかとか。姉妹で遊んだりするのかとか。

誰も本当か嘘かなんて気にしていない。相手からしてみれば、その場の空気に紛れて消えていくようなたわいもない話。




成人して、勤めだして…

考えたくもない問題が押し寄せる。

同居していた父方の祖父母、遠方に住む母方の祖父母が次々と亡くなった。80代。そんなに早い迎えではない。そろそろ、な頃合いだ。

祖父母の存在を一気に失って、どうしようもなく寂しい、という思いと、いよいよ今後の「家族」との向き合い方を考えていかねばならない、緊張感と恐怖で体じゅうを支配された。


ヒステリックで子どものような母
精神疾患を患った父
攻撃的で歯止めの効かない行動をとる姉


彼らが苦しんでいるのはわかる。助けたい、とも思う。
だが、自分のことはどうなるのか。その義務に苛まれることに疲れたら、私は私で手がいっぱいになるというのに。




結局、誰にも手を差し伸べることなく、私は

元の戸籍を抜けて、新しい「家庭」をつくった。


特に気になっていた姉との関係。
子どもの頃から、忙しい母を独占したい一心で、妹を家から追い出したり、手をあげたり。大人になってからは、精神的なマインドコントロールや金銭の問題で、度々トラブルになった。

それでも、同じ家庭で育ってきた同士として、なんとか力になりたかった。だが、そう思えば思うほど、闇は深く濃くなるばかりで、修復が効かないところまできてしまった。


結婚前、婚約をしたことを姉に報告するも、祝いの言葉はなかった。

わかってはいたことだが、悔しくて悲しい。
生きることでいっぱいいっぱいで、誰かの幸せを喜べるようには思えない。むしろ、今にでも飛びかかってきそうなほど、激しく威嚇をしている。

ここで選ばなくては、と
かつての家族を手放し、新しい家族を選んだ。




結婚して数ヶ月の間。
夫とふたり。過去が幻かのように、平和で穏便であたたかい日々を過ごしていた。

そんな日々も束の間。
姉から着信があった。知らないふり。私は新しい家族を選んだのだ。
ここで気にしてはだめよ、と着信を拒否する。

ともすれば、逆上して非通知番号から着信が入る。

1件、10件、100件…

ときには痺れを切らして、電話に出る。が、脅迫じみた発言ばかりを繰り返す。精神がどうにかなりそうで、身の危険も感じ、ついには警察にお世話になった。

家族の問題に、警察は関与してくれない、とよく聞く。
けれど、家族間の争いや犯罪は絶えないのが現実。万一のことがあったらと、親身になってヒアリングと問題に向き合ってくださる。本当、感謝しかない。

警察が関与したからといって、すぐに状況が良くなるわけではない。
被害を与えている方は悪いことをしている認識はない、むしろ正しいことをしているとさえ思っている。簡単にはいかない。


とにかく耐えた。
あとは、時間がなんとかしてくれた。

10件、5件、1件…

と連絡は途絶えていった。




この出来事から、もう2年はたつ。

姉と連絡はとっていない。

どうにかできなかったのか、どうしたらよかったのかと罪悪感に苛まれていた感情が、いつしか「そういう感情を抱いていた私」と見ることができるようになった。


それでも、たまに思い出す。

力になれるなら…と
うかつにも思ってしまうときがどうしてもある。

それは血のつながった姉だから、ではなく
ひとりの人間を、助けられるのなら、と願ってのこと。


その感情が湧いてきたら、目を閉じて大きく深呼吸をする。


そして、ただただ、祈る。

元気であってほしい。
心が穏やかであってほしい。

と。


仏様でもイエス様でもマリア様でもご先祖様でもいいから、と闇雲に助けを乞うのではなく、

ひとりの人間の幸せを願い、私はただ祈り続ける。




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