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おとなの恋愛と結婚ってさ。
「ぜんぜんカッコいい人じゃないで。」
とある女性が、自分の彼氏をそう表現した。
事実なのか、謙遜なのか。もしかしたら照れ隠しなのかもしれない。
彼氏ができたと報告を受けてから、3年が経っていた。込み入った話はこちらから聞かないが、話にちょくちょく出てくるので、ふたりの関係は良好なのだろうと思っていた。
そういえば、実際に会ったことがない。
どんな人なのだろうと思い、「彼氏に会ってみたい」と女性に言ってみたら、冒頭の返答であった。
女性は続ける。
「彼氏のお父さんは⚪︎⚪︎高校出身(その地域で有名な進学校)で…」
「???」
私の頭の中は、”?”でいっぱいになった。
彼氏の話をしていたのに、どうして彼氏のお父さんの話になったのか。
「え?何の話?」
すかさず口を挟む。
彼氏のお父さん情報なんてさらさら興味はないし、ましてや彼氏の育ちや学歴を根掘り葉掘り聞き出そうなんて微塵も思ってはいない。
女性は続けた。
「彼氏は⚪︎⚪︎高校出身(その地域で有名なやんちゃな学校)で…」
ああ、そう言うことね。とすとんと落ちた。女性は、彼氏の学歴が気がかりなのだと。
「え?関係なくない?仕事がんばってるやん。」
「そう。」
「話きく限り、やさしそうやし。」
「そうやね。やさしいし、真面目で几帳面やし…」
褒め称えたいのか、貶したいのか、、全く意図が読めずにいた。けれど、続く女性の言葉に耳を傾けていると、彼氏から大切にされているようで、彼氏を大切に思っているようであった。
本当は、それで十分すぎるはずなのに。
どこか自信無げなのには理由がある。
女性は一度結婚に失敗している。正確にいうと、理想の人と結婚することには成功したが、結婚生活で失敗をした。見た目から入る性分で、結婚後にみるみる相手の嫌なところが明るみになった、というわけだ。
理想の人と結婚したのに、うまくいかなかった。この過去がずっと女性を付きまとう。うまくいかなかった時に備えて、理由を探してしまう。「イケメンじゃなかったから」「学歴が足りなかったから」、、と。
咄嗟に、ブレーキをかける。
大人になれば、さらに恋愛が複雑化するって?結婚となると、もっと?
複雑な要素が増すのは事実。
でも、難しくしているのは一体だれなのか?
もうとっくに答えは出ているはずなのに。
大人になったからって、世の中のしがらみはなくならない。
けれど、今までよりずっと、心の欲望と上手に向き合うことはできる。
大人になったからこそ、
”恋愛”や”結婚”のカタチに捉われなければいいのに、と思う。
「一緒にいて楽。」「ふたりだと安心できる。」
それで、十分なんじゃないのかな。
*あとがき*
種明かしをするか迷いましたが、明かします。
この本文の女性とは、私の母のことです。
一定の年齢になったから、恋愛の仕方が変わるとか結婚観が変わるとか、そんなことはなくて。人それぞれのタイミングやきっかけなのかなと。
いくつになっても出会いはあるし、別れはある。
今、目の前にある”当たり前”を大切にしたいなあと思った出来事でしたので、こうして言葉にさせていただきました。
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