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ついてくる男

バスを乗り継いで近くの公園へ行った。

散歩に図書館に自分なりの時間を楽しみ有意義な一日を過ごせたものだと思う。さて、家に帰ろうかと帰りのバスに乗って最寄りの駅まで戻ってきた。夕方だがまだ日は高く明るいから安心する。駅から再びバスに乗り今度は家の近くのバス停へと向かう車中で、ふと後ろに座っている男性が気になった。

あれ?どこかで見たことが・・・だが、思い出せない。どこだったけ?とバスに乗りながら考えていると、もう近所のバス停が見えてきた。ボタンを押して、次おりますという意思表示をしてバス停で降りた。

すると、後ろに座っていた男性も同じようにバスから降りて同じ方向に歩いてくる。その時男性の顔を見て思い出した。そうだ、その男性は、行きのバスも一緒だったのだ。どうりでどっかで見た事があるはずだ。

その男性はまだついてくる、なるほど同じ団地の住人なのかと思っていると、なんと驚いたが号棟まで同じなようだ。エレベーターまで来たがそこいるのは、私とその男性だけ。

私は何かおかしいという直感がした。思わず知り合いが住んでいる違う階のボタンを押した。するとその男性はボタンを押さずについに同じ階に降りたのだ。これはまずいと思って振り返って声をかけてみた。

「何なんですか?ずっと後をつけているでしょ」

「あの~分からないないんです。ここがどこか」

「えっ!どういうこと?何言っているの」

「何となくついてきてしまったのですが・・・」

「本当についてきただけで、分からないの?」

「はい・・・」

このまま放っておく訳にもいかないと思ったので

「じゃあ、とりあえずバス停まで戻ろう。一緒に行ってあげるから」

そのまま一緒にバス停へと戻り、バスに乗ろうとすると男性がバスに乗ろうとしない。埒があかないので、バス停からちょっと離れたところに交番があるから一緒に交番に行こうといって歩き出した。しばらく歩くと、ボソッとその男性が言った。

「お金・・・」

「お金なんて持ってないないよ。財布持たない主義だし。バスはシルバーパスで無料だから」

とにかく交番に行って事情を話せばわかるかも知れないから行こうと言って、更に歩き出した。しばらくして交番が見えてきたので、ほらあそこに交番があるよと振り返ると、ついてきてたはずの男性はいなくなっていた。

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この話、本当の話なんです。

今日親父から聞いてびっくりした。そして、ずっと後をついてきている感じがしたのならば、もっと注意しないとダメだと言ったのだが、こんな風に誰かにマークされてしまえば正直注意しても難しいのは確かだ。

もしかしたら、その相手も何かの病気かも知れないが、お人好し過ぎる父親を見ていると心配は尽きないと思うそばから、そのお人好しの血は間違いなく私にも流れていると思った。

うちの家族はみんなお人よしだ。昔、母親も傘もささずに濡れて困っていた外国人を家まで連れてきて、お茶を出したりしていたという話を聞いて妹と二人で注意したことがあった。

もし相手が変な気を持っていたとしたら、襲われてしまう。

両親がいろいろ大変な思いをしてきたことで、見知らぬ人に親切にしてしまうのだろう。

だが、世の中良い人ばかりじゃないんだ。

お人好しで親切にして、害にあってからじゃ遅い。今まで会ってきた人がたまたま何もしなかった人なのだと思う。

今回の件についても心配事は残る。住んでいるところは知られてしまっているし、そうなると後はひたすら用心するしかないのだ。

しかし、ずっと後をつけてきた男性はいったい誰なんだろう?何んだったのだろうか?


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