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マンガ家アシスタントのおしごと!-2- (「薔薇はシュラバで生まれる-70年代少女漫画アシスタント奮闘記-(笹生那実・著)」読了に寄せて)【前編】

さて、最初の章の分を終えて少し経ちました。くおんみどりでございます。
では、第2シーズン、スタートです(シーズンじゃない)。はてさて、この章は果たして、何回(何文字)で終わるのかな?(;´Д`)

第一章は、笹生さんと美内すずえ先生の話題がメインでしたが、第二章もレジェンドな方々(くらもちふさこ先生、三原順先生、樹村みのり先生、山岸凉子先生ら)とのエピソードが、盛りだくさんに繰り広げられます。当時の秘話もあるので、各先生のファンの方々もお見逃しなくですよ!

アシスタント「睡眠の重要性!」

その後、どの先生のカンヅメでも、旅館の布団は一度も見ていません。
限界になった人は、その場で仮眠…
(第2章、表紙より)

一般読者の方々が「少女漫画(制作)のお仕事」と聞いて、華やかな仕事風景を想像するということはムリもないことですし、そう思いたいという気持ちもわかります。しかし、どの業界でもそうですが、その中に身を置くと、決してそういう面だけでないという事に気付かされます。一読者のうちは宝塚歌劇団のステージが如く、大きな羽根衣装を背負い、紙吹雪の乱舞でレヴュー!のように華やか!と感じても、自分でもペンを持ち、何かの運命でプロの現場を体験なんかしたりすると、いつのまにか背負う羽根衣装の羽根は羽根ぼうきに、キラキラ舞う紙吹雪は処理後のトーンカスとすり替わっています。…ええ、コレ多分、誇張ではないと思うんですよ(笑)。

それらの現実が一番如実に現れるのが「カンヅメ」の場であり「シュラバ」です。「旅館にカンヅメ」「修羅場」とは即ち「瀬戸際」という前提。クライマックスです。概ねどこの業界でも、1プロジェクトのフィナーレ前の「そういう場」ではそういうモンです。ある所では寝袋があったり、仮眠室があったり、会場・会社の会議室に泊まり込みと…パターン・環境は千差万別。それは漫画の仕事であれ、カタギの仕事であれ、アレな仕事であれです。でもそれらを超えて共通しているのは、そういう場に、定時・定時間の十分な睡眠があるなどとは、決して思ってはいけない…ということ。…ええ、だってそういうモノですよね?(真顔)。

というわけで、のっけの話題はアシスタント仕事期間中の「睡眠」について。

とはいえ、もしかして誤解されている人もいるかも知れないので、事前補足しますが、漫画の制作過程に於いて、まだ時間に余裕のあるのに初っ端の討ち入りからフル徹夜をしたりと、最初っからクライマックスだぜ!な現場は実際そうそうありません。そんな事を初日から毎日カマせば、後半~締め切り間際の進行に支障が出ますし、良識ある普通の漫画家の仕事場だったら、そんな無謀で無茶な事はしません。「シュラバ」というのは、平時から徐々に這い寄るように忍び寄ってくるものなのです。(くるー、きっとくるー的な)

製作期間中の睡眠も重要なオシゴトです。だって、寝不足だからと前後不覚でトンデモなく前衛的な線や、へニャった線を描かれても困りますし、ちゃんと食って寝ないと、締切に向けての職場の士気もダダ下がりになります。
そして、状況が「カンヅメ」「修羅場」の状態になると、作業期間の生活の中で睡眠のプライオリティは、「オマケ」程度になり「単なる小休憩」までになり下がります。過酷です。でもそれは、短期だからできる所業でもあります。

こんな時は、だいたい睡眠時間2~3時間位で交代で睡眠を取る、ってパターンになる事がが多いと思います。普段、そんな短時間で叩き起こされた日にゃ、調子が出なかったり、まだ寝不足でフラフラ朦朧としてたりと、端的に言えば健康的に不十分極まりなく、仕事の効率も悪くなります。
しかし人間てのは不思議なもんで、締切間際という「ワーキング・ハイ」の時だからでしょうか。時間ソレだけで目覚めても、なぜだか「よっしゃ!スッキリ!やるぞー!わははは」みたいな、リングに上がるレスラーのような感じにもなります。舞い上がるっ、高揚感↑です(違)。
いやぁ、人間のテンションと環境順応性ってスゴイですよね。(そのへんの体感には個人差があります)

【回想・仕事場でおやすみ】

私の体験した所の多くは、「朝4~6時くらいになったら一斉に寝て、お昼頃に起きる」といったサイクルでした(討ち入り~中後盤くらいまで)。ちゃんと「寝る専用部屋」があって、皆寝る時はそこで寝るのです。
最初のうちは皆、それぞれの布団で寝ます(あたりまえ)。いわゆるパーソナルスペース内でキッチリと、という事です。しかし終盤になるにつれ、定時・長時間の睡眠ができなくなり、短時間の仮眠が主になってくると、なぜか布団の境目が段々あやふやになってきます(念の為言っておきますが、全ての所がそうとは限りません)。もうそうなると「雑魚寝」です。布団もプレ万年床化します(とはいえ、締め切りまでの数日間だけなので「万年」というのは少々大げさな例え)。

交代にではなく、「(眠みで)ダメになった順から寝る」という時もありました。これも最初は皆のアタマと足の方向が規則正しかったのが、終盤にはどんどんカオスになっていきます。倒れ込むように寝るってのは、そういう事です。
ソコは一部屋に3~4人くらいで寝ることが出来ましたが、末期になると「空いているスペースを探して寝る」という寝方になります。私も「あー、ココ…なら、寝れ…る…か?(バタッ)」みたいに雑魚寝ってました。…ヒドイですねぇw。あはは、でも今となっては、それも懐かしいばかりなのですが(笑)。

あと、コレは番外ですが「極寒の地で寝た」という体験も(言い方)。
とある女性の先生の所に、泊まりでアシに入ったのですが、先生が極端な暑がりで、部屋の隅々までクーラーをガンガンに効かさないとダメという、「どういう性癖だよソレ!(性癖関係ない)と絶望先生並みにツッコミたくなるようなトコでした。で、寝室もソレなんですよ。まぁ布団が羽毛布団だったので、かろうじて凍死は免れましたが、仕事場で(冷えで)ガクブルしながら寝たのはアレが初めて、というかそんなトコ、後にも先にもあそこしかなかったです。…貴重といえば貴重な体験……いやもう体験したくありませんがね、あはは。(ガクブル)
あと別の所で「枕元に排泄物が…(!)」というのもありますが、これ話長くなりそうなので、またの機会にでも…。

(※男性作家さんの所では、こういうのが一般的であるかどうかは…ちょっとわかんないです。そのへんは単純にデータ不足です…)

というわけで、某アニメではありませんが「睡眠の重要性!」が身に染みる、というお話でした。(「グリザリアの…」シリーズ好きw)

とある漫画家アシスタントの職業形態(ポジション)

そんなこんなで、作中での笹生さんは短大を出て後、フリーアシスタントとしての活動を始めます。

作中での笹生さんが、平時にはどちら派だったかはわかりませんが、期間中を勤めるアシスタントの就業形態には「泊まり込み」と「通い」の二種類があります(一つの仕事場で両者混合のパターンもあります)。

「通い」さんは自宅に一度戻る事ができるので、自分の生活や睡眠のペースを比較的崩さずに、ある意味健全な生活サイクルを構築できます(最終日あたりは帰らずに徹夜・泊まり込みするパターンが多い)。デメリットは「通勤時間がかかる」くらいでしょうか。でも通いを選んだ人は「通える範囲内だから仕事を受けた」という人が大半だと思うので、総じて大した距離ではない事が多いのですが。(単発案件ですが、都内から長野県まで2,3回行った事ある私が言っても説得力ない気もしますけど…)

「泊まり込み」は文字通り、仕事場(先生の住居、もしくは近隣に泊まり用のアパートを借りている場合もある)に一定期間泊まり込みます。泊まり込みの利点は「翌日も即作業に入れる」「通勤疲れがない」「合宿みたいでちょっと楽しい」「なぜか結束力が強くなる」といったところでしょうか。

そして「泊まり込み」「通い」というアシの通勤形態(?)以前に「専属アシスタント」「フリーアシスタント」という立場?大前提?的な区分もあります。

専属アシスタント前回のエントリー(第一章の)で私がなりそこねたものですね(笑)。文字通り、一人の作家さんだけに付く、専属のアシスタントになります。他作家さんから依頼が来ても、基本行きませんし、勝手に行けません(と言っても、休み中に友人の手伝いくらいはアリでしょうし、雇い主作家さんの友人関係や編集部都合で、空いてる期間に融通し合うという事はあるみたいですが)。
踏める現場は限られるし、結構閉じた環境になりがちなのですが、その分、待遇や福利厚生が比較的いい事になってることが多いです。また、先生によっては「ゼロから人材を育成する」というキトクな所もあり、作画能力がカンストしていなくても、ソコソコの画力や伸びしろがあると思われる人物が採用になる事もあります。語弊があるかもしれませんが、絵に変な色(クセ)が固定される前に、自分(先生の画風)色に染めちゃえ的な面もあると思います。作品のトータルバランスを考えれば、先生にとってその方が都合がいいですからね。

育成枠の専属は「徒弟制度」に近いものがあります。親方(先生)の下で、「早くウチの仕事覚えてくれよな!」的なのがありますし。徒弟から職人、親方と…そう考えると某秘密結社みありますね(笑)。この場合、アシが親方級になっちゃうと「生涯・職業アシ」か「独立(デビュー)」かの選択を迫られる事になると思いますが。
基本、日給や歩合制のフリーとは違い、専属アシは月給制になっていたり、アシ先が途切れて食いっぱぐれるっていう心配も(あまり)ありません。フリーに比べて、時間も休日も比較的余裕ができます。そこで腕を確実に上げていって、作家さんの担当さんに自分を覚えてもらい、それがきっかけでデビューする人もいました。

こう書くと、あまり悪いトコなしに見える「専属アシ」ですが、悪いとこがあるとすれば、そこのぬるま湯に慣れちゃって、「自分の作家としてのデビューを忘れる人が多い」ってトコでしょうか。もちろんデビューを考えず、仕事としての「職業アシ」として、終生ソレをまっとうする方もいます。ソレもまた選択の一つです。自分の漫画家としての才能に見切りをつけ、でも「マンガ業界に関われるなら」と、プロアシを選ぶ人もたくさんいらっしゃいました。

フリーアシ(スタント)は、これも文字通り、乞われればどこへでも自由に(条件の合意があれば)馳せ参じて原稿完成を助けるアシスタント、です。フリーアシは、その技量、コミュ力等がちゃんとしていれば、いろいろな仕事場を経験でき、いろいろな人(作家・アシスタント仲間)とも出会えます。雑誌の、または作家間のネットワークで実力が知れ渡れば、さながらギター一本で酒場街の店を渡り歩く「流し」が如く(例えが古い)業界で活躍する事ができます。仕事もワリとコンスタントに入ってきます。専属契約はなくとも「ほぼレギュラーアシ」になる人も多かったように思います。

ただ、フリーアシだけで自己の生活品質が保てるかと言えば、自分にかなりの技量が備わってないと難しいでしょう。長期連載を持ってる作家にツテがあったり、売れっ子のレギュラー的な所を確保できれば話は別ですが、基本的に「定期的に確実に仕事がある」とは限りません。先月と同じにあると思っていた半レギュラー仕事が「今月は仕事ないのでお休みね」と数日前に言われることもままあります。「今月は大丈夫そうだからいいや」とアッケラカンと言われることもままあります。

ですので月収のグラフも安定しません。一人暮らしをしている人だったら、複数のツテを獲得してそれを駆使するとかしないと、生活的にはかなりの綱渡りを覚悟せねばならないというスタンスです。
技量的に「仕上げ(トーン貼りや消しゴムかけ)だけしか出来ませーん(キャハっ☆)」みたいな人は特にキツイですね。冷静に考えれば、仕上げだけをやる人というのは、人員として必要な要員ではありますが、仕上げが必要な期間というのは、実質制作期間の終盤頃の事が多いです。日数が少ない分、トータルのお給金も少ない(加えて作業単価も少ない)。加えて仕上げ作業は「熟練工もできる」作業ですので、毎回、または初日からの仕上げ専用要員の需要が必ずあるかといえば…それは正直難しいところです。仕上げスキルだけでは、日々の暮らし品質を保持する事は…まぁ無理に近いでしょう。(頼りにできる親&自宅持ち&よほどの金持ちであれば別ですが)

しかし、ソコをテトリスの空きスペースにピースを埋めるが如く、上手くやれてた仕上げオンリーの人もいました。ソレは次のような仕事を兼務できた人です。

メシスタント。これは言葉的には日本語に属するものでしょう(笑)。
飯炊き+アシスタントの造語で、ゴロも良いこの言葉は、1980年代にはもうすでに存在していた職名です。
製作期間中のアシの食事というのは基本、①外食、②コンビニ(弁当屋)弁当、③デリバリー(出前)、が主流だと思います。(先生が男性で既婚者だと奥様が作ってくれたり、羽振りの良いところになると、家政婦さんが作ってくれたりするところも)

最初のうちは外食も良い気分転換になるし、コンビニ(弁当屋)弁当、出前も好きなメニュー食べられるので良いのですが、期間が長丁場になると徐々にルーチンワークと化し…なんか荒んでくるですよね(笑)。徐々に「普通のご飯が食べたい」という欲求が出てくる。「お米はお茶碗で、おかずは別皿で」…贅沢ですねw。でもね、泊まり込みかつ長丁場だと、毎度の食事も仕事のテンションを保つ一要因となるんですよ。それに修羅場近くになると、ご飯を買いに行く&作る作業時間も惜しくなってきます。そこで重要になるのが、職場でご飯を作る「メシスタント」というポジションです。

普通に作画アシが持ち回りで作るというところもありましたが、それ専門にしている方もいました(今もそのスタンスの方がいるかはわかりません)。
私が仕事を一緒した方は、討ち入りから終盤近くまではメシスタント業、仕上げ作業に入るくらいからは仕上げ作業にジョブチェンジ!という感じで、見事にテトリスピースを埋めていました。

やっぱり何においても「睡眠」と「食」は重要です。ソコソコの期間、合宿状態になる仕事場ならでは、かもしれませんが。

【回想・おいしいごはん】

ちなみに私もメシスタント(当番制)したことがあります。後にも先にも、ずんどう鍋で本格的なチキンカレーを作ったというのは、あの時だけです。買い出し先のスーパーで「本格的カレー用ルー」なんて買っちゃうから…(笑)。貴重な体験をありがとうございました、ひきの真二先生。

「アシ先の美味しいご飯」自分内ランキングの最高峰は多分「家政婦さんが作ったご飯」かな。その方は漫画アシスタントとは関係なく、たしか家政婦派遣の専門業者からの方で、そこの仕事期間中の家事一般をされていた、いわゆる「プロ家政婦」の方。ご飯が美味しいのも頷けました。大皿料理等、あそこでの食事は天国でした。クオリティが違いすぎる(はゎ~///)。
ありがとうございました、イケスミチエコ先生。(お元気ですか~?)

逆に「アシ先のトラウマご飯」という、ソレが故に以降大嫌いになったモノってのもありまして、ソレは今はもう合併で無くなった(市名が)都内の某市にあった中華料理店の品なんですが、当時、その先生の仕事場から歩いていける近隣には、食べる所がその中華料理店しかない状態でした。更にコンビニも近くに無いゆえ、必然的にそこで外食するしかなく、アシ達皆そこで毎食食べていました。しかし事もあろうにその店は、①普通のラーメン含む麺類全般がマズイ。②定食ものメニューが少ない。③さらに定食のおかずで食べられるもの(自分の好き嫌い、味の美味い不味いもふくめて)も少ない…という自分にとっては三重苦な店であり(その店は全体的に不味いというのはアシ全員の統一見解w)、まさに「近隣にライバル店が無いから成り立ってる」という感じの店でした。
そんな店で私が唯一食べられたメニューは「回鍋肉定食」でした。いや、回鍋肉自体は今でも好きですし、今でも食べます。では何がトラウマかというと、回鍋肉といえば要するに肉とキャベツの味噌炒めです。主役は肉とキャベツ、そして絡まる回鍋肉の味噌タレ。しかし、その主役達に食って掛かる勢いの食材がありました。「たけのこ」です。その店の回鍋肉定食は、肉キャベツを量的に凌駕するほどのタケノコ片と千切りが含まれていました。店主オリジナルなアレンジなのか、単なるカサ増し&ローコスト策なのかわかりませんが、「コレ、回鍋肉じゃなく、タケノコの味噌炒めだよね?!」と激しくツッコみたくなる一品でした。お腹は空いてるし、もとより自分が「出されたものを残さない」性分なのが仇となり、味があまり染みてもいなく、火もあまり通っていなく、もとより淡白な味のソレを大量に、しかも長期間食べ続けた結果、「タケノコ」が大嫌いになりました(笑)。あの濃いはずの味噌ダレの侵食を一切受けてない、悪い意味でのオンリーワンでタンパクなあの味がトラウマです。そして、追い打ちとしてコレにはもう一つダメポイントがありまして…「この味噌ダレ、カンペキ100%市販品の『焼肉のたれ・ジ○ン(モラ○ボンのアレ)』だよね!?」…はーっ(白目)
…I先生、辛かったよ(直に言わなかったけど。あ、先生の名は書きませんw)。

うわー、キライなもの語るとテンションアガりますねーwww。こういう話題がある意味、シュラバトークにも最適な話題です(笑)。

クエスト発生!? ファンタジー世界には冒険者ギルド、漫画アシスタントは…ネットワーク?

本作で笹生那実さんがアシスタントをするきっかけになった事は、漫画雑誌への持ち込みでした。編集者が見込みのある人を何人かストックして、作家がピンチになれば、ソコに派遣するといった手段は昔からありました。

私の場合は、思い返してみると(しらいしあいさんのトコは除いて)きっかけは作家間ネットワーク、または編集者ネットワークだった気がします(あまりハッキリと覚えてないんですよねw)。
では、アシ経験・持ち込み経験がない人が漫画家のアシスタントになる方法には何があるのでしょうか。

名称未設定-12

ちなみにコレ、私のところへもありました↑(笑)。

【回想・アシスタント依頼は突然に】

電話
「ピロロロロロ!」
編集「あの、(雑誌名)編集の○○と申しますが、○○さんからご紹介いただいたんですが、実はですね、明日から三日間程アシスタントにですね…」
「あ、実は明日から長期で入る所がありまして…」
編集「あ…では、お知り合いの方で、どなたかスケジュール空いている方いらっしゃいませんか…」
「えーと…(あとは大体上記と同じ感じw)

まず「雑誌での募集」というのがあります。世間的には、コレが一番メジャーな方法かもしれませんね。ジャンプやマガジンなどもそうですが、作者あとがきや専用枠・ページを使って「◯◯先生がアシスタントを求めています!」のように雑誌で募集をかけます。(この場合は大抵は「専属アシスタント募集」になることが多いようです)
しかし雑誌経由の募集も、常時あるわけではありません。ではそんな合間の時、フリーの人は、どのように道を作るのでしょうか?

実は「アシスタント仲介サイト」的な所ができる以前は「アシスタントになりたーい!」と自らが営業するというのは、あまり無かったように思います。つーか出来ません。聞いたことがない。初対面でいきなり話を聞いてくれるなんて、キトクな作家さんはあまりいませんし、だいたい実績やツテやコネがなければ、漫画家自体がドコにいるか、住んでいるトコもわかりませんし、営業電話もかけられません(大昔の漫画単行本には作家の住所が番地までしっかり載っている事もあったので、大昔はもしかしてそれで訪ねていった人もいたかもしれませんが、少なくとも70年代後半くらいからはそういう風習は無くなったように思うので、私の時代以降ではその手段を使う人は、おそらくいなかったでしょう)。

笹生さんの時代や私の時代(80年代中期~90年代)では、やはり「アシスタント」になるには、持ち込みや投稿などして、編集部(者)に覚えてもらって…もしくはアシスタントをしている友達・知り合いがいる環境のツテで…というのが一番の早道だった気がします。はい、当然コミュ力も結構必要ですよw。
ソレを踏まえると、漫画アシスタント業とは基本、作家から、もしくは雑誌編集部から、ある日突然「降ってくる」もの、そして「廻ってくる」ものと言えました。そこから上手く波に乗れれば、継続して仕事が…という感じですか。

本作中(上記)でも書かれていますが、当時はスマホもPCも、SNSもありません。無論、アシ仲介サービスなどもです(一部の専門学校が、斡旋のようなことをしているとは聞いたことありますが)。よって自己アピールする場も極端に少ない。私の時代になって、ようやくPCやASPを介したネットでのコミュニケーション方法が確立されはじめた頃、事務的な仲介をする団体・個人がやっと現れたくらいです。

そして世紀をまたいだ今は、こういうサービスサイトがあるんですよね。
「GANMO(漫画家さん+アシスタントさんマッチングサービス 2012年~ 赤松健氏主宰)」(要登録)

イラスト投稿・コミュニティサイトの老舗「TINAMI」も平行事業として、編集の業務委託・コンテンツ制作などやりながら、アシスタントの仲介もやっています。
「TINAMIプロダクション イラスト・マンガの商業活動に関わるクリエイターすべてに向けたグループウェア(要登録)」

そして上記サイトより以前から稼働している、アシスタント仲介の最古参のサイトがこちらです。
・J.A.C.(Japan Assistants Club 2000年くらい~2012年まで稼働していた旧サイト跡)
現在稼働中のJ.A.C.(Japan Assistants Club)

…え?あれ?ちょっとまって…。私このJ.A.Cの中の人の一人…を知ってる気が…する…とても…うっ!あ…アタマががががっ(唐突な脳内ノイズと頭痛)

…いや、まぁそれはさておき(真顔)

ちなみに本書の中でも出てくる、私も通っていたでお馴染みの(おなじまない)「鈴木光明少女漫画教室」では「アシスト専科」という、その名の通りなアシスタント要員の養成課程がありました。私はこの課程は受けたことありませんが、アシスタントの心得、カケアミの書き方、背景の書き方など、アシスタントに必要とされるスキルを特化的に学べる場でした。確か、そこで一定のレベルに達した人材は、プロの作家さんに紹介されていたはずです(記憶が確かなら)。

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アシスタントを取り巻く環境も、随分変わりました。今では「在宅アシスタント」も当たり前になりましたね。昔も在宅で作画を受注…ってのは、あるにはありましたが、連絡手段が電話・郵送・宅配便等と、どうしてもタイムラグが出るものでした。今ではPC、ネット、ソフトウエアの普及により、コミュニケーションも指示も納品も、ネットを介してリアルタイム、瞬時にと…便利になったものです。

アシスタント業…。今思い出してみると、(場所によっては)過酷な環境でありましたが、合間に買い出しとか言って、皆でコンビニやスーパーに出かけたり、仕事最中に共通の話題を話したり。初めて行った仕事場先のアシさんと仲良くなって情報交換したりと…うん、まぁノスタルジーになっちゃいますけど、アレはアレで青春だったなと思います。

思い出した後は必ず、深い溜め息が出ちゃいますけどね(笑)。

なんか、今回は書評、体験談と言うより、漫画アシスタントの業務紹介みたくなってしまいました。キャリアの1ステップとしてのアシスタント、生涯の職業としてのアシスタント。いろいろあります。ただ、この記事はあくまで私の体験を軸にしているので、業務形態や諸々の細部まで、確実にコレ!ということではありません。その点はご了承ください。

次回の第二章【後編】は、笹生さんも本編中で悩まれていた「まんがを描くこと」に関して、ほか「仕事中のアシスタント出来事あるある(単なる私的体験談)」などになる予定です。若干の「暗部」も書く(かも)しれません(未定。なんだ?暗部ってw)。それでは、次回もお楽しみに。


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