ユレニワ 革命のファンファーレ


それは突然来た。
コロナ禍の中でライブが減り、その直前と最中に好きなバンドが活動終了したり活動休止したりしていて、もしかしたらコロナが明けてももうライブに頻繁に通うことは無くなるんじゃないか、フェスにも行かなくなるかもしれないし、そうしたらこの先もうずっと好きなバンドも増えなくて、ライブから足が遠のいて、だんだんと普通のつまらない生活に慣れていってしまうんじゃないか。そういう、そこはかとない仄暗さを感じていた。

新しい音楽を好きになる。今まで知らなかったバンドを好きになる。簡単なようでいてめちゃくちゃ難しいことなのである。
なんたってライブを観ないと本質分からないもんね(あくまで私の場合。ライブが良くないと好きになりにくい)。生でライブ観て身体全体で振動感じて、自分でも計り切れてない制御の効かない琴線に触れられないと好きだって思えない。私が好きになる琴線ってなんだ?何に触れたら好きって思うんだ?どこを好きになるんだろ?どうやったら好きになるんだ?分からない。分からないからたくさん出会って聴くしかない。でもコロナ禍ではフェスもイベントも無くてそんな機会がなかなかない。
どうやら大変心の燃費が悪いタイプのようで、デジタル化された音源をスマホの小さなスピーカーで聴いただけでは、好きかどうか全く分からないのだということをコロナ禍の中で強く感じてしまい、ある意味絶望していた。単なる音源だけだと体の奥まで入ってこない。もう新しい音楽にワクワクするという出来事に遭遇することは無いのかもしれない。今好きな音楽たちは(今思っている限りでは)一生手放すつもりはないけれど、これから新しい好きな音楽に出会えないのかもしれない。

そして突然その時は来た。
全く知らなかった。名前だけ知ってた。けど、某別のシンガーソングライターの方と混同して勘違いしていた(その方も好きではある。可愛いよね!)。後から調べたらその名前きっかけで対バンもしてるじゃないか。笑

最初は出立ち(なんか丸いサングラスかけてる人がマイクに齧り付いて歌ってるな…)と爆音の勢いに呆気に取られて、訳が分からない人たちだなと思って笑ってしまった。(訳が分からない人というのは褒め言葉です)
人間、好奇心を煽る面白いものに出会うと笑ってしまうのである。
でもその最初のインパクトは、ライブを観るうちにそこが本質じゃないなってことに気づく。多分取っ掛かりのオプションのひとつたなって。
爆音なのに音がちゃんと聴こえる。がむしゃらに弾き倒して叫び散らかしてるのに音に乗る感情や音色の機微なニュアンスがしっかり伝わってくる。しかも千葉LOOKで。(ごめんね千葉LOOK大好きなの、大好きな箱なんだけど、でもLOOKの武器は音響環境じゃないよねということ)
ライブハウスの爆音は好きなんです。目からも耳からも体全体でも感じる振動にやられて打ちのめされたい。でも、爆音はそれだけで凶器なので、実は演奏が良くないと爆音の演奏は本当に聴けない。単なる爆音で終わってしまうから。この人たちの音はちゃんと1音1音聴こえてワクワクしてしまった。

バンドも曲も全く知らなかったからライブはあっという間に終わってしまったけれど、惹き込まれる熱量とか感情の爆発とか胸を締め付けられる何かがあった。とにかく気になった。全曲全編ぶっ通しで爆音が続くわけではない。緩急しっかりついていて、なんか後半しっとり優しく胸に響く歌歌ってる、じゃん。よくよく聞いたら歌声めっちゃ優しいじゃん。叫び散らかしてるのにさ。
リリースおめでとうございます、でも呼ばれたからには勝つつもりで行きますというようなことを言っていて「気持ちが強く出ていていいな」と思った。
あ、千葉出身なのね。千葉バンド!

もっとライブを観たいと思った。ので調べて行く。こういう時の「鉄は熱いうちに打て」の行動力は自分でもびっくりするくらい。ものすごい熱量とパワーで直近のライブスケジュールと自分の予定を見比べてこの時間帯なら行ける!とライブ予定を滑り込ませて行く。チケット取ったらあとは体が行くだけだからね!と。だって好きかもしれないものを確かめに行くのって、めちゃくちゃときめかない?「好きかも」「でも違ったらどうしよう」「何に惹かれたんだろう」「確かめたい」、そこには揺れ動くときめきの感情がふわっと花開いて…という表現は、ちょっと違うな。感情を美化しすぎている。猛烈に襲いかかる前のめりの感情を制御しきれなくて行動の方が自分の思考を追い越していく。ちょっと体温が上がっていてフワッとした気持ちで数日を過ごす。早く観たい。

ライブハウスと路上ライブを両方観て「これは好きだな」と確信した。バンド名はユレニワ。好きです。だってライブが良い。演奏がパキッと跳ねてて楽しいし歌声が素敵。音楽を心から楽しんでいる人たちの出す音だなと思った。その正体はまだ掴みきれてないけど。でもすぐに捕まえられたら楽しくなくない?分からないところにワクワクがあったりするもんね。ライブがはちゃめちゃに良い。それだけで良い。生の音が真実。っていうかそこにしか真実はないし、ライブに納得させられる何かがあった。バンドのパフォーマンスは激しく感情に訴えてくる感じで、というか感情が出過ぎていて様子がおかしな風に見えるし、かといってフロアを煽りすぎるでもなくステージ上で音楽が爆裂している様子なんだけど、そこで繰り広げられる生々しさや生きている魂の様子から迷いや嘘のなさを感じ取れてしまう。丸々曝け出している姿に可笑しくなって楽しくて笑いながら何故か胸がギュッとなる。
もうその様子のおかしさすら、生きてるってこういうことだから、そういうもんだから受け入れてな、って説得された気がしたから、納得した。この人たちは演奏でフロアとコミュニケーションを取りに行ってる。もしフロアからの反応が無くたって、ちゃんと1人1人に語りかけてきてる。

ちなみにユレニワってなに?揺れ庭?まぁ意味は今はどうでもいいか。最近はやたらと意味とか意義とか理由とか説明を求めたがる時代だから少し息苦しいしね。意味なんて無理に見つけない方が良いこともある。バンドが良いならそれでいい。

様子がおかしいとか爆裂とか言ったけど、その土台として、演奏が良いなと思う。
ドラムがいいなと思った。拍が恐ろしく正確(いやそんなん当たり前なんだろうけどさ)で、キチッとしてる…えーと、言葉にすると「留め」が出来てる、という感じになるんだろうか。跳ねてるだけじゃ無くて、留め、止めが気持ちいいくらいにバチっと決まってる。れんじゅドラムは拍がとっても鋭くて心地よくて聴いてるだけでわくわくしてニッコニコになる。ハイハットの音でこんなに気持ち良くなるドラムは初めてかもしれない。まじまいえんじぇるのサビのドラムがとても好き。

よしきギター。ステージ上を結構はちゃめちゃに踊り倒したりお立ち台的なところで恍惚としてるシーンも多いんだけど、めっちゃくちゃ弾けてる。速弾きもニュアンス感満載の音色も気持ちいい。派手にあざといくらいのギラギラな目立ち感はなくて、来て欲しいところにピンポイントに来てくれる感じ。演奏上手い。バンドの空気感とフロアの空気感をちゃんと吸い込んで音にしてる。土台のリズム隊の上で、ちゃんとケーキで言うところの極上生クリームになってるというか。伝わりにくいか。縦横無尽に遊ぶデコレーション。間奏のギターの音色が良いんだなぁ。Hello Glowのイントロのギターの音色がとても好き。

レジナルドベース。ベースがしっかり聴こえるライブがとても好きです。ベースラインかっこよくない??トラディショナルかつオルタナティブ。力強さと跳ねる軽さのバランスがとてもいい。恋人たちのヒムのアウトロのベース好き。

シロうた。叫び散らかすわりに優しいじゃん。このギャップはまずい。ハマる。多分元のベースが優しい歌声なんだろな。熱量ぶっ放して歌い叫んでるけど、根は優しい、柔らかで輪郭薄め、ある意味掴みどころがないようにも思えるのに、真っ直ぐではっきりとした存在感。不純なのに透明度がめちゃくちゃ高い。でその相反したものを同時に放ってる。この歌声はともすればバンドの演奏によっては魅力がかき消されるかもという危うさも併せ持ってる気がした、けどだからこそ、この歌声を響かせるためにバンドがめっちゃくちゃいい演奏をしているんだなと思った。シロさんの歌声を活かす4人の演奏。だから爆音爆裂なのにおかしくて優しい。爆音の中に揺れ動く音色が見える。バンドがバンドである確かな理由。

バンドに夢見てる。誰かの声を、誰かの音を、支え合って混ざり合って爆発的なグルーヴを生み出して、見たこともない見ようとも思ってなかった景色が広がっていく。
今ここでしか成り立たない奇跡の音合わせ。4つの楽器と4人の歌声。たったこれだけなのに途方もなく大きな威力の生き物になる。今日限りのライブ、今日限りの演奏、その奇跡を観たいと思っても、出会いたい思っても、そうそう出会えるもんじゃない。でもユレニワのライブならいつでも奇跡を見せてくれる、そう思った。ユレニワに出会えた自分はラッキーだ。

だからまぁ…なんだろ、こっちおいで、って言われたから来たよってことで。ユレニワは私の中に革命を起こしたよ。もう今のライブシーンで猛烈に好きになるバンドは現れないかもしれない、のんびり過ごす人生に慣れていくのかもしれない、そう思ってた自分の心の着火点を押された気がした。支払ったチケット代の何百倍くらい愛したい。小さくて、綺麗とは言えないけれど希望や情念や汗や涙の塊のようなもの(言葉では言い表せない)が溢れているライブハウスで今日もまた、心底参ってる誰かの(私の)心に火をつけている。
ユレニワのライブを観ている間だけは、阿呆みたいにニコニコ笑って楽しさで泣いていたい。あいは無限だ!

こんなに短期間でキュッと距離を詰めてきて、身体にも心にも馴染む音楽はなかなかない。こないだ深夜ラジオで流れてきた「PLAY」のイントロを聴いたら酷く懐かしいいつも聴いている音楽の気がして、ああもうこの音が身体の一部になってしまっているんだなと思った。

1秒でも長く最高のライブを演って欲しいし、1日でも長くずっとずっとユレニワを続けて欲しい。大きいところで観たいとか夢を応援したいとか偉そうなことは私には言えない。本人たちはどう思ってるかは私にはまだ分からないけど、ユレニワがユレニワとして音楽活動を楽しく続けて欲しいと心から祈って、またライブに足を運ぶ。

とりあえず思うのは、ライブ中にはちゃめちゃになってぶるぶる足震えさせながら歌うシロさんに心臓鷲掴みされたみたいに痛くなって笑いながら心配になったり、行くとこまでいっちゃってる演奏と表情のよしきさんをみて意識失いそうになって笑いながら心配になったり、演奏中に突然飛び上がって煽ってくるれんじゅドラムにびっくりしてドキドキして心拍数上がりっぱなしになったり、冷静に見えて心の熱量全部を鋭いベースに乗せるレジさんに心持って行かれたり、それを全身で受け止める私の心臓も大変なんだけど、それ以上に何よりも心から、メンバーの皆様、身体には本当に気をつけて長く続けて欲しいですまじで。持続可能なバンド活動を…!


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