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湿ったカツ丼がいちばんうまい

「かつ丼」

 どうやら僕は最近のかつ丼とは相性が悪いらしい。そう思ったのはかつ丼の名店を紹介するテレビを見ている時のことだった。どうも最近は玉子の上に「乾いた」カツが乗っていることが主流で、サクサクの食感も味わえるようになっている。

 だが違う。僕が求めるかつ丼はあくまで玉子と一緒にとじてあって、カツの衣はむしろじゅくじゅくのしみしみになっていないと困るのだ。

 ちょっと濃すぎるんじゃないの?と疑問が湧くような甘辛いつゆに浸ったふにゃふにゃの衣を少し剥がしてぱくり。ああこれこれ、この濃さだよと頷いてからまず剥がした衣だけで米をひと口ふた口と進めていく。

そうしてある程度米を少なくしてからカツ本体へと突入する。カツとご飯の配分に困るというのは全人類の悩みだろうが、この方法ならぜいたくにカツを攻めることができる。

米配分のアドバンテージはすでに取っているため「カツをかじって米食わず」という通常では考えられない手法も取ることができるのだ。

 しかし「乾いた」カツが乗っているかつ丼はそれができない。おかず力が弱い。じゃあ玉子で戴くかというのも違う。やっぱり弱い。僕は玉子丼を食べにきたのではないのだ。

じゅくじゅくのしみしみ衣。これが淘汰されぬように今日も祈り、かつ丼を夜にかきこもう。

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