一瞬の時空旅行
昧爽という言葉を最近になって知った。
明け方を意味するこの言葉に、ひとつの記憶が重なった。
ハワイを目指し日本を発ったのは夜。機体が夜明け前の空を飛び続けていた時に感じた事だ。
その飛行機は、明け方に日付け変更線を越える。
明日に向かって飛んでいたはずが、一瞬にして時間が戻り、すでに経験した日の明け方を、もう一度迎えることになる。なんとも不思議な話だ。
昧《不確か》なるものと爽《はっきりとした》もの。
明ける時に起きる瞬間の時空旅行。飛び出した場所もまた現実だ。
けれど目に入るものは、それまでと何ひとつ変わらない。
そんな舞台には、眛爽という言葉がとても似合う。
そして朝日を浴びながら向かうのは、飛び立った夜と同じ日の、陽が降り注ぐ晴れやかな海。
わたし達が当たり前に使っている時間は、人が定めた時計の針。
泳ぐ魚にすればどこ吹く風でも、やはり地球は丸い。
世界は広いと感じた夜明けだった。
(旅する日本語応募400字以内のエッセイ。387文字にて作成。タイトル込みの文字数は396文字。写真は機内から自分で撮ったお気に入りの写真です)
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