松本幸四郎さんが「土蜘」好演
中村吉右衛門さん3回忌追善興行
昼の部を観に行きました。
第1部の「祇園祭礼信仰記 金閣寺」は、豪華絢爛で歌舞伎の様式美を楽しむ舞台でした。歌舞伎の「三姫」と呼ばれる女形の大役・雪姫が中村米吉さんと中村児太郎さんのダブルキャストで登場しますが、私が観た日は、児太郎さんが演じておられました。
ちなみに、「三姫」の残りは、『鎌倉三代記』の時姫、『本朝廿四孝』の八重垣姫だそうです。
可憐で芯の強い姿を見せてくれる雪姫ですが、最初は大膳によって金閣寺に幽閉され、夫を人質にとられて「どうすることもできない」と諦めた気持ちでいます。しかし、大膳が仇だと知って恋しい人のために立ち上がります。桜の木に縛られても、祖父雪舟の血筋が助けてくれると信じて桜の花を寄せ集めてネズミを描き、縄をほどくくといった展開は歌舞伎ならではでしょう。
「秀山祭九月大歌舞伎」が開幕してすぐに児太郎さんの父・福助さんが休演されましたがすでに復帰されており、今日は元気な姿を見せてくれました。慶寿院尼を演じる福助さんは脳梗塞で倒れて以来、リハビリを続けておられますが以前に比べて声もしっかり出ておられました。右腕が思うように動かないようですがそこを補いながらの演技でした。
二枚目の捌き役・東吉役に扮する中村勘九郎さんも舞台を活気づけてくれました。勘九郎さんは、第2部の「土蜘」では番卒藤内を軽やかに、滑稽過ぎない程度に楽しそうに演じておられました。ユーモアあふれる演技こそ勘九郎さんの演技の幅を感じさせられます。
初めて聴いた気がする幸四郎さんの低い声
「土蜘」は、中村芝翫さん(当時観たときは橋之助さんで、橋之助の名前で最後に演じる歌舞伎でした)が演じたときに観たりしているのですが、正直言って松本幸四郎さんの土蜘の精は想像ができませんでした(演技は想像できるのですが、なんとなく声が高いので雰囲気が違うかなあと思っていたのでした)。
昨年の團菊祭では尾上菊之助さんの「土蜘」を観ましたが、しっかりした存在感で重みのある低い声が響いてきてとても素晴らしかったのが記憶に新しく、幸四郎さんの高い声に不安を覚えておりました。
そんな心配をよそに、幸四郎さんがやってくれました。
何度か舞台を観ているのですが初めてだと思います、心底響いてくる重量感のある低温の声。「こんな声が出せるんだ!」と、大変驚きました。
演技は言うまでもなく安定している幸四郎さんなので迫力のある演技で観客を満足させていました。
これからもぜひこの声で舞台に臨んでほしいです。
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