壮大な4世代に渡る在日コリアン一家の物語「パチンコ」

ツイッターでフォローしている方が紹介していたのきっかけに読み始めた作品。もともとは本の装幀に惹かれたので、いわゆるジャケ買いです。でも読み始めてみると、静かだけど芯のある物語にどんどん惹かれていき、読み終わるのが恋しくなるくらい、夢中になった作品です。

物語は、夫の子ではない子と共に朝鮮から日本に渡った主人公ソンジャと、その家族4代が在日コリアンとして生きる苦悩を、様々な主人公を通して描いています。大きなストーリーというか、何か事件などが起きるわけではないけど、読むことを止めることができず、特に下巻はあっという間に読み終えてしまいました。

在日、移民という立場で異国の国で生活する彼らの日常生活を送る上での苦悩や、アイデンティティーの違い、また同じ国の血が流れていても育った環境で生まれる意識や考えの差などが浮き彫りになり、またその中で生まれる軋轢などは、国際化が進む私たちにもひしひしと訴えるものを感じました。

私が一番印象に残ったのは「ノア」というソンジャの一人目の息子の物語です。ネタバレになるので大まかにしか書きませんが、彼の抱えた苦悩と彼の選択には頭をガツンとされたような衝撃を受け、でも彼の人間としての美しさを魅せられた時にはなんとも言えない爽快感というか、安堵というか、苦悩を抱えつつも一生懸命生きる姿がずっと頭の中に浮かんできました。

作品は映像化も決まっているようですが、やっぱりこういう作品は本で読むのがいいのかなと個人的には思います。

また、本の装幀もとても素敵なのですが、これは朝鮮半島の昔の刺繍だそうです。まだまだこの作品の空気に触れていたくて、読み終わった今も見えるよく過ごす部屋の見える位置に飾っています。

読み終わった後にも余韻に浸ったり、物語の美しさに感動した、とても大好きな作品です。

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