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「aftersun」のこと

前置き


1週間前、「aftersun」を観てきました。

フィルマークスには公開前からクリップしていたにも関わらず、観るのが遅くなってしまいました。でも7月の終わり、16:00台というなんともエモい時に、お客さんの少ない小さなシアターで観れたこと。超良かったです。

あらすじ

本題ですが、簡単なあらすじを紹介すると
11歳のソフィが、離れて暮らす31歳の父親とトルコ旅行を満喫する話です。

めっちゃ簡単に言うとこれだけなんですけど、
この旅行の様子を記録したビデオカメラを、当時の父親と同じ31歳になったソフィが見返していくってのが面白いところです。

映像のこと

ビデオカメラと言えば、
最近だとNewjeansの「Ditto」のMVにも使用されていたり、岩井俊二監督の「リリイ・シュシュのすべて」にも使われていますね。ビデオカメラの映像をそのまま映画に差し込むってのが新鮮味がありつつも、誰もが使ったことのあるビデオカメラで親しみもある。だからこそ自然と主観的に作品にのめり込めました。
「aftersun」も同様に、ソフィとカラムと同じ視点に立って、同じ感情を共有したように錯覚してしまいました。
あと、場面の切り取り方やばいです。
カラムが泣いている背中。ソフィとカラムが壁を境に話している。ギリギリ見えるか見えないかのダンスシーン。そしてラストの、20年前から20年後、ビデオを撮り終えた父親の背中。
どれもがソフィの記憶と想像が重なった大切な思い出に感じました。

話のこと


2人は常に対照的に描かれています。
これから大人になっていくソフィと、
もう大人になってしまったカラム。

海に潜れない、水球に参加できない。
恋って何だろう。早く大人になりたい。
対して、
海に潜ってゴーグルを取りに行ける、水球でゴールを決める。
お金もないし、仕事もない。離婚もして、10年後の自分が想像できない。

2人はそれぞれ悩みを抱えています。
でもそれを直接お互いに話すことはなく、むしろふたりの時間をとにかく楽しんでいるのです。毎日こんな日々が続けばいいのに。
「最高の日を過ごして、家に帰るとなんか疲れちゃう」
楽しいことがあると、その分1人になった時に寂しくなってしまうことありますよね〜。
ソフィもカラムも悩みは違えど、
根本的な考え方はよく似ていたのだと思います。
だから、カラムがソフィに言った
「パーティーのこと、男の子のこと、ドラッグのこと、全部話していいよ」
これは自分と同じ道を進まないようにソフィを守る大人としてのカラムのやさしさなんですよね。ほんっとやさしい。

当時やさしいパパだと記憶の中にあったはず。

でも、父と同じ31歳になったソフィは
やっと理解します。
父も脆く、1人の人間であることを。

ダンスシーンで流れた
Queenの「Under pressure」が作品の大きなテーマなのではないでしょうか。きっとソフィの頭の中で流れ、父の姿を思い出し、愛しく、悔やみ、包み込んだのだと思います。

自分の親なんて、ずっとずっと大きな存在で、
大好きだけど、嫌いで、でも元気ではいてほしい。色んな家族の形はあるかもしれないけど、そんな存在が近くにあることがどれだけ幸せなことか。

この作品を観た後、エンドロールでは頭に「?」が浮かぶほど内容を掴めて居ませんでした。でも帰りの電車で、急にあのビデオカメラの映像がフラッシュバックし、ダンスシーン、カラムの最後の背中が見え、泣きそうになりました。こわい映画ですね。

愛だけでは何も解決出来ないのかもしれない。
でも、愛されていたことはずっと覚えてる。
なんてやさしいんだよ〜。
今の自分に必要だと思った人は映画館で観てほしいです。

最後に、カラムってINFPですか。

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