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『空中ブランコ』『天国に帰る』(無限著)の感想

『空中ブランコ』では、ある男女の10年間の日記が、『天国に帰る』では、その後日譚が描かれる。

自意識と社会生活、人間関係を折り合いをつけながら、そして折り合いをつけられなくなりながら、日々を過ごす登場人物がナチュラルに描かれ、ささやかな喜びやちゃんとしたひどいことが起きていることが、それぞれの視点から率直な言葉で一人称で語られていることで、感情が強く揺さぶられた。

小説中の自意識の吐露に、自分自分の感覚がオーバーラップするものが多々あり、そのたびに忘れていた傷が痛んで、一気に読むことはできなかった。

洪水のように自意識の逡巡が頭を巡っていた20代を超えて、なんか大体のことがそんなに気にならなくなってきている今年40歳の今の自分にとって、そういう時代があったことを痛みとともに思い出させられて随分くらった。

大学生のころによく死にたいねとか話してた友だちと久々に会いたくなった。

空を飛べず、天国にも帰れないまま、だらだら生きていく世界線で、少しずつ細胞の死ぬ量を増やしながら、私は死に向かっていく。

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