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評価されない短歌と評価されるラーメンの違い~ラーメン屋トイ・ボックス@三ノ輪(東京ラーメン短歌散歩その7)

みすゞが言う「みんなちがって、みんないい」みんな(どうでも)いいってことです
にわとりと駆けっこしているおもちゃ箱百エーカーの森で遊ぼう
暦年が一つ進んで三百六十五分の一老化しました

自作短歌

「ごめんなさい、よくわかりませんでした」

オンラインの短歌教室に昨年から通っています。

短歌教室では、毎月2首投稿し、参加者同士で感想を伝え合うとともに、先生からもコメントをいただきます。

昨年末に行われた短歌教室は、一年の締めくくりということもあり、気合を入れて投稿しました。

そして、自分的にいい短歌を作ることができ、「これはいい評価をもらえるのではないか」と期待して参加しました。

1首目
先生「ハチャメチャな内容ですね。んー、ごめんなさい。私には意味がわからなかった」

2首目
先生「ずいぶん考え込んだんですけど、わからなかった。ちょっと悩んでいるんです。なんでしょうね。んー、ごめんなさい、よくわかりませんでした」

20人ほど参加しており、どちらか1首に多少厳しい評価がある方はいましたが、2首とも厳しい評価なのは私1人だけでした。

何より申し訳ないのは、先生は、どんなにつたない短歌でも真摯に向き合ってくれて、先生なりの読みとアドバイスをくれるのですが、「わからない」としか言いようがないような短歌を送ってしまったことと、その短歌がいい短歌だと思っていた自分の感性にシンプルに絶望しました。

講義の最後に困惑させてしまったことへの謝罪と言い訳をしようと思っていたのですが、その日は講義の時間が押していて、私は教室終了予定時間と同時に妻にご飯を作らなければいけないというミッションがあったため、中座せざるを得ず、途中退席して朝から仕込んでいたおでんを温める使用人になったのですが、妻が酔いつぶれる中、どんなに飲んでもその日は酔えず、頭がどんどん痛くなり、寒気がしてきたので、お薬飲んで寝ました。

伝えたい人に、絶望的に伝わらない。

思い返すに、高校時代に演劇をやっていたのですが、自分で書いた作品を父に見せたところ「ごめん、よくわからない」と言われたことを思い出しました。

理系出身で、小説やエッセイを読まない父だったので、「つまらない」という反応は想像していたのですが、申し訳無さそうに、本当によくわからないという顔をして「ごめん、よくわからない」と言っていたのが心に残っています。

その作品は、地方の寂れた第三セクターのテーマパークで、都会から来た人が死に場所としてその場所を選んでいく中、その土地のことしか知らない従業員はどんどん方言がきつくなっていって、最後にはお互いに何を言っているかわからなくなる、という、確かにあらすじを書くと、自分でも意味がわからないですね。

ごめん、父さん。

バリバリの体育会系でゴリゴリの建設業界で清濁併せ飲んで働いていた男性の父と文芸エリートで育ちがよく短歌会の第一線で活躍する女性である短歌の先生。

かなり両極端の位置にいる2人の両方に肯定でも否定でもない「よくわからない」という烙印を押され、とても今年も文芸界でやっていける感じがしません。

ただ、もういい歳なのに諦め悪く短歌にたどり着き、今更わかりやすくて行儀のいい短歌を書けるようになれるとも思えない中で、労働の合間くらいずっとなりたかった文学者でいさせてくださいと初詣でお参りしてまいりました。

ご迷惑をおかけしない範囲でこれからも好きに詠んでいこうと思っておりますので、半眼で遠くからでも眺めていていただければ幸いです。

昨年最も評価されたラーメンをいただく

とかく好きなことで評価されない星に生まれてしまったことを受け止めつつ、ラーメン業界最高権威と呼ばれるTRYラーメン大賞を2021年に受賞してバリバリに評価され、当方自身も2021年に食べたラーメンの中で最も美味しかったラーメンを年末に食べに行きました。

東京メトロ日比谷線三ノ輪駅3番出口を出ます。

「大関横丁」交差点を渡ります。

右手に進むと、お目当てのトイ・ボックスがあります。

特製醤油ラーメンを注文します。

美しい見た目!

醤油スープは、スッキリしているのに鶏油の旨味がしっかり感じられ、やや柔らかめの麺との相性が抜群。
チャーシューは、豚と鶏の2種類があり、どちらも甲乙つけがたいことに加え、徐々にスープに溶けていくそれぞれの表面の油がスープに幸福な変化をもたらします。
大きなチャーシューの下には、味玉とワンタンが隠れており、トロっとした味玉を麺に絡ませて楽しめるとともに、ワンタンを噛めば、ツルッとした食感に肉の旨味が口の中に幸せが広がります。
鶏と水だけで作られたスープは後味もよく、はじめからおわりまで、ずっと美味しい、この一杯を年末に食べれただけで、いい一年だったと思える一杯です。

ごちそうさまでした!

大切なのは、他人からの評価ではなく、自分が納得すること。

トイ・ボックスの店長山上さんのインタビューを見ていると、とても勉強になります。

ラーメンが好きで、ラーメン屋になった山上さん。

修業時代を経て、開店直後にミュシュランのビブグルマンに選出されるも、その味に満足することなく、鶏と水だけのスープに進化させ、今でも試行錯誤を繰り返しています。

その試行錯誤はとてもストイックで、鶏と水だけのシンプルなスープゆえに、レシピの調整ではなく、火の入る時間や気温との関係といったマニアックなところ。

その原動力は、「ラーメンが好きだから」と即答し、お客さんの評価ではなく、「自分が納得したい」という思いと語っています。

とかく他人からの評価にすぐに左右されてしまう自分に染みわたる言葉です。

また、短歌について、そこまで自分が考えられているのかと言えば、まだまだです。

今年は、自分が納得できる短歌を作れるよう、精進したいと思います。

今年も一年よろしくお願いします。
良い一日をお過ごしください。

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