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夜中に息をする重い女のいつかの戯言


恋愛がド下手だ。それっぽい恋愛が出来ない。甘い言葉に胸焼けがして、熱い視線で興ざめする。恋愛ドラマや映画やリアルに恋愛をするバラエティ番組を直視できない。形にならなかった恋愛の続きはどれだけでも想像できるけれど、所詮形になっていないのだ、はじめからゼロ。何が欲しかったのだろう。いつだって思い出すのは人の寂しさに触れた時のぴりりとした痛みと、恋にならなかった苦み。私は形にならなかったものばかりを集めて大事にしている。子どもの時からそうなのだ。ガラスの瓶に地球みたいな色をしたビー玉を集めて眺めていた。夜明け前にラジオから聞こえるジャズを聴いていた夜も、スマホの緑色の通知ランプも、一緒に選んだ浴衣も、あの子がもらったひと口も、私が言えなかったあの一言も、全部形にならなかったもので、続くどころかゼロでしかなかった。そのゼロを1にしなくて良かったと思う夜と、1にしておけば今さら思い出すことはないのにと悔やむ夜が交互におとずれる。いつだって私はリアルしか書けない。だから、私の書く文は全部本当で、でも、1に出来なかったから、全部嘘だ。経験していないことは書けない、想像力が欠如しているから、だから、これ以上綺麗な恋の話も、これ以上汚い恋の話も持ち合わせていない。いつも、リアル。私の目に映った恋しか、恋じゃなかったから。私はすぐに忘れてしまう。記憶を大事に大事に大事にとても大事にしてどうにか思い出せるくらいまでは形に留めておきたくて、それで書いている。いつも隣にいないと忘れちゃうよ、重くて、すっからかんな女だから。私には0か100しかない。恋愛がド下手だ。人の寂しいところばかりに恋をしてしまう。甘さも優しさもなくって、弱さと苦さとずるさと、あとはもう、どうしようもないもの。世間とか、生い立ちとか、そういうもの。恋愛において、私は無駄に優しい人が嫌いだ。私を叱れない人は嫌い。全肯定は見放しだ。少しでも体重をかけられると私はすぐにぺしゃんこになる。いまどこ?も、なにしてる?も、絶望的に受け付けない。ラインでの愛の言葉なんて誰でも打てる。それなのに弱いとこギリギリまで隠してるつもりでわかりやすく血だらけになっている人を助けたくなってしまう。あなたと私はよく似てる。似てるからよく分かる。よく分かるから大嫌い。大事な時に大事なことを言えないところ、だいっきらい。その言葉が自分に大ブーメラン。私はいつでも血だらけなのに、お花畑みたいな顔をしてる。これは地顔だわ勝手にさせろ。一人にしてほしい。もう顔を忘れてしまったのに、ずっと残ってるのは唇の冷たさ、悪いことしたね、そんなの思ってても言わないで欲しかったなあ。言えないことが積もっていって、いつしか言わないことばかりになってしまっていた。謝るくらいなら忘れたふりしておけば良かったのに。むかつく。むかつく。むかつく。むかつくってことは、私は期待していたってことだ。それがいちばんむかつく。失恋できる方がまだましだよ、いつか言われた言葉の意味がようやくわかってくる。私は恋愛がド下手だ。だから、上手に失恋すらできない。亡霊になった恋たちが、夜にはいつもさまよっている。いつだって叶わないものは美しくみえる。でも、そんなの嘘だと言いたい、叶えて、終わったものの方がもっと美しいよって言いたい。そういう恋をしたい。そういう恋をしてみたかった。好きだとか嫌いだとかそういうことを考えられなくなった。愛はぬるま湯だ。この先私は恋が出来ないのかもしれないと思うと、絶望でいっぱいになって、そして、どこか安心している。結婚がしたいのなら結婚すればいい。まるごと愛せる人同士で恋愛すればいい。私にはその力がないよ。気持ちが、ない。人並みに強い気持ちが、ない。ずっと他人に委ねてきたから、今さら恋愛もくそもない。二万で買われるのもあり、缶コーヒーで泣いちゃうのもあり、言葉で束縛されるのもあり、基準なんてないのは私自身だった。ファミレスの前で待ち伏せすれば会えると思ってた?勝手にシフト調べたことに罪悪感はなかった?そういうのが恋愛だと思ってた?それなら幼稚園からやり直して。でも私もごめん、一晩話を聞いたよ、朝になって次のバイト始まるギリギリまでなんとなくグダグダ話聞いちゃって、適当な優しい励ましをしちゃって、そうそう、安易に家を教えちゃったのも私だよ、それ、多分私も悪かったんだよね。お互い幼稚園から一緒にやり直そ、私もそこら辺はよくわからないから。でもさすがに夜勤帰りに待ち伏せされると疲れ倍増だわ、思いやりは持とうね。ていうか思いやりってなんだろう。私がいちばん思いやりをわかっていない説あるよ。壺を売りつけられたら多分買ってしまう。私にはそういう弱いところがある。今日は星がみえるかみえないか。見えたら良い日、見えなかったらイマイチ。それでしかちゃんと答えを出すことができない。0か100しかない私には理想的な恋愛は難しかったのかもしれない。歩み寄ることはしない、離れるための努力はする、疑われるのが嫌い、ネトストされた時点で終わっていた、ねえ、このnoteも見てる??見てたら感想教えてよ。って、そういえばラインはブロックしちゃってた。物騒なチオビタ、破れた手紙、よれたライブTシャツ、偽物のヴィトン、浮かべたアヒル、人間サイズのリラックマ。あーあ、さよならを言いそびれたな、さよならだって言いそびれるから後になって引きずっちゃうんだ。何でもそう。けじめけじめ。


#チーム午前二時 、12月5日


チーム午前二時:2020年12月3日、夜中に思いつきで突如発足。部員一人。夜中に起きている人は誰でも入部可能。フィクションもノンフィクションも雑談も日記もハッピーもネガティブも全部。内容も設定もブレブレ。クリスマス付近までは毎日投稿の予定。あくまでも予定。




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