3103

クリスマスの朝。

【おはよう。3番の宅配ボックスを開けて。暗証番号は3103】

寝ている間に届いていたメールを読んで、
ずっと昔のポケベル文化を思い出した。

14106で、あいしてる
10105で、いまどこ？

うん、懐かしい。そんな時代がありました。

きっと多分。3103で「サンタさん」でしょ？
同世代のオッサンらしくて思わず「ふふ」って、笑ってしまう。

ぼさぼさの髪も構わず外に出た。
エントランスを出てすぐ左に設置された宅配ボックスに、
3（さん）・・10（た）・・3（さん）・・・と、呪文を打ち込む。

簡素な袋にせめてものクリスマス用シール。
色気があるとは言えないけれど、
そういうところがとても好い（よい）。

暖かい部屋に戻り、シールをそっと剥がしたら、
なんとあの！！【星の王子さま】が飛び出した！！

ええ、ええ。泣きましたとも！

勿論この有名な王子さまのお話を
今までに何度だって読んだ事があるけれど、
【ポップアップ絵本】が出ているなんて知らなかった。

大胆な飛び出し方にドキドキが止まらない。
飛び出す他にも小さな仕掛けがいくつもあって、
素敵過ぎて、嬉しすぎて、すっかり子供に戻ってしまう。

一度閉じて抱きしめて、また開いてまた閉じて抱きしめて、
また開いてまた閉じて抱きしめた。

いらっしゃい、王子さま。

来てくれた早々悪いけど、
【私の棺桶に入れてくださいリスト】に加えさせてね。

遺言ノートを開き、「星の王子さまの飛び出す絵本」と書き加えた。