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注目の海外デジタルエンタメスタートアップ 〜ゲームプラットフォーム、eSports、動画配信等30社分析〜

MIDAS Technology Review

本記事では直近2年間に資金調達を成功させてきたデジタルエンタメスタートアップを30社紹介し、更にそのTOP3に注目します。

調査対象

TechCrunch[1]のプレスリリースに掲載された、成長速度が速い海外スタートアップたちに注目します。調査対象期間は2019/7〜2021/7の2年間です。

多種多様なデジタルエンタメ、成長速度はゲーム関連が上位を占める

まずはカテゴリ別に比較をしてみましょう。
一口にデジタルエンタメと言ってもその定義は曖昧であり、その内訳は多岐に渡ります。
イメージが湧きやすい領域としては、
・ XR: ARやVRを活用したサービス
・ ストリーミング: 動画や音楽等の配信サービス
・ コミュニティ: マッチングやファンサイト等、デジタル上で他人と繋がるサービス
・ eSports: ビデオゲームをスポーツ競技として捉えプレイヤーが戦う競技

等が挙げられます。

TechCrunch[1]に掲載のあったデジタルエンタメスタートアップ30社を1年あたりの調達額(累計資金調達額を創業からの経過年数で割ったもの)の順に並べたものがこちらです。
1年あたりの調達額が大きい企業ほど成長速度が速いと考えられます。

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(上記スプレッドシートはこちらのリンクから閲覧できます。)

eSportsも含めるとゲーム関連カテゴリに属する企業が大半を占め、調達件数・個別の資金調達額の水準ともに他カテゴリを圧倒しています。
コロナ禍で人々が家でゲームを手に取る機会が増えた影響で、ゲーム事業は上向きとされていますが、そのことが今回数字によっても裏付けられた形となりました。

更にその中でも、ゲームコンテンツそのものを開発・制作しているスタートアップ(紫色)よりもゲーム制作プラットフォーム(赤色)が資金調達に成功している傾向があります。
ゲームプラットフォーム事業は様々なゲームを一つの場に集約していることから、単発のゲーム制作事業と比較してユーザ数を成長させる可能性が大きいという特徴があり、その拡大力に多くの投資家たちが期待を寄せています。

デジタルエンタメスタートアップTOP3

続いて個別の企業の成長に注目してみましょう。上記デジタルエンタメスタートアップのうち、「1年あたりの調達額」上位3社を紹介します。

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(一部再掲。個別の企業情報についてはCrunchbase[2]を参照。)

なお、第1位・第3位に続いて、第4位・第5位もManticore Games・Rec Roomと共にゲーム関連領域の2社となりました。


第1位:Mobile Premier League(MPL)... $75M/year

eSportsとモバイルゲームのプラットフォームを運営するインドのスタートアップ。そのコンテンツはアーケードゲーム、スポーツ、アドベンチャーゲームと多岐に渡り、友人と一緒にゲームを楽しめるほか、才ある者は賞や賞金を獲得できます。

とてつもないユーザ獲得数を誇っており、ローンチして1ヶ月で1万DAU(Daily Active Users)、その後インド最速で100万DAUを突破しました。プラットフォーマーとして必須であるユーザ獲得数の多さとDAUの多さから、対戦相手がいなくて盛り上がらないと言った心配が無く、ゲームプラットフォームとしての土台が構築されています。言語の壁こそありますが、今後更なる規模拡大に向けた国外進出戦略の中で日本が候補に入ってくることも十分に考えられます。

MPLは過去3年間で$225Mを調達。直近だと2020/9/21 SeriesCで$90Mを、2021/2/4にSeriesDで$95Mを調達しており、好調です。

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(出典: Mobile Premier Leagueホームページ[4])

【成長要因】
通常オンラインゲームは無料ないしはお金を払って遊ぶものです。MPLではゲームやeSportsに勝利すると賞金として実際のお金(Amazon Pay等)がもらえます。この体験がユーザにとって非常に魅力的なのでしょう。

【テックの見所】
MPLは自社ではゲーム開発をしておらず、他社のゲームアプリの公開プラットフォームやトーナメント大会等のホストとしての役割を担っている点が見所。その構図はYouTubeさながらです。

第2位:iflix ... $50M/year

マレーシアに本社を置き、東南アジアを中心にビデオオンデマンドを提供するiflix。月間アクティブユーザ数は2500万人超え。

iflixは代表的なストリーミングプラットフォームとして、過去7年間で$348Mの調達に成功しています。2019年には日本の吉本興業が出資を決定したので、ご存知の方も多いかもしれません。

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(出典: iflixホームページ[5]

【成長要因】
世界で人気を博しているトップシリーズの動画のみならず、地域にローカライズしたコンテンツも大部分を無料で提供し、スマホ所有層が急拡大している新興国のストリーミング市場に勝機を見出しました。

【テックの見所】
前述のローカライズ戦略を実現するためのユーザデータ分析技術を強みとしている点。Tableauのインタビュー内でも「ユーザデータでユーザの特性を理解することが我々の事業の中心」と述べられています。

なお、iflixは2020年にWeTVを運営する中国大手Tencentによる買収が発表されました。

第3位:Mythical Games ... $37M/year

Mythical Gamesは次世代のゲームプラットフォームを提供するアメリカ西海岸のNFTゲームスタートアップ。ゲーム市場に革新的なコンセプトを導入しようと奮闘しています。

 "A next-generation game technology studio at the intersection of blockchain and games."  

を自社紹介に掲げ、同社は新たなプラットフォーム「Blankos Block Party」やアイテム売買用の「Mythical Marketplace」(とそれらを支えるエンジン「Mythical Economic Engine」)を開発しています。改竄ができないブロックチェーン技術により、ゲームの空間内でも信頼できる取引の実現へのチャレンジです。ゲームにおける所有権の拡大や経済の創出を目指すMythical Gamesは、3年間で$110Mの調達に成功しており、直近では2021/6/9 SeriesBにて$75Mの調達をしています。

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Blankos Block Party Official Gameplay Reveal Trailer | "Legend Tells"(出典: YouTube)

【成長要因】
実際の人形の価値は新品の状態が最大で時間と共に逓減していきます。しかし、一方でゲーム内のアバターはアップデートや増強等によりユーザの努力次第でどんどん価値を高めていくことができます。このような成長する性質を持つ代物を商品とした経済を構築している点が、成長の源泉となっていると考えられます。ちょうどテスラの車が消耗品であるにも関わらずOSとしてアップデートされていく構図に類似しています。

【テックの見所】
ゲーム内のコンテンツ(アバターやアイテム、ゲーム自体を含む)がNFTトークンとして管理されていて受益者が明確な点が見所。

まとめ

本記事では日本には未進出だが勢いのある世界のデジタルエンタメスタートアップTOP3を紹介しました。個別の企業紹介を通して、今後注目するに値するデジタルエンタメの姿を把握する一助になりましたでしょうか?本記事で紹介した内容を簡潔にまとめると以下の通りです。

VRやライブ配信の躍進がニュースとなることが多いが、デジタルエンタメの本流はやはりゲーム。

コロナ禍の影響でStay Homeが促進されゲーム領域は上向き。数字にもそれが現れている。

ゲームは一見コンテンツが命というイメージを持つかもしれないが、今はプラットフォーム側への挑戦が比較的評価されている。

今後のデジタルエンタメ領域、特にゲーム領域の動向、日本への進出を見届けていきましょう。

参考記事

[1] TechCrunch Entertainment

[2] Crunchbase

[3] Tableau iflix transforms user data into powerful insights to create effective content

[4] Mobile Premier League(MPL) Game App

[5] iflix

[6] Mythical Games

(いずれも2021/8/20最終閲覧)