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名古屋を拠点に、カルチャーを育む体験と空間をデザインする|クリエイターチーム qubomi にインタビュー

ライター・デザイナー・ビデオグラファーの複数のプロダクションから成るフリーランスクリエイター経済圏『mics(ミックス)』。WEBメディア、ブランディング、デザイン、映像など、さまざまなジャンルのクリエイティブ領域を横断して、名古屋スタートアップ株式会社、チームどみにおん、株式会社カチノデが合同で事業を行っています。

今回は、micsの中から新たなチームとして生まれた『qubomi(くぼみ)』のお2人に、mics編集部の小倉がインタビューしました。

江坂大樹|プロフィール
1994年愛知県出身。大学在学中にウェブコンテンツ制作と体験デザインのチームに所属。現在はフリーランスとしてウェブ制作やコンテンツ企画を行なっている。また、クリエイティブプロダクションmicsではディレクターとしても活動中。

堀直也|プロフィール
1996年岐阜県出身。愛知県立芸術大学にてインテリアデザインを専攻。フリーランスとしても空間デザインとグラフィックデザインを手掛けている。オフィスからシェアスペース、移動販売まで幅広い領域の空間のデザインを得意とする。


2人の出会いはデザイン会社のカチノデ

ーそもそも「qubomi」とはどのようなチームなのでしょう?

江坂:デザイン会社の株式会社カチノデで出会った2人で結成した空間デザインのチームです。僕はクリエイティブディレクターを担当し、掘は空間デザインを担当しています。

堀:大学では環境デザイン領域でインテリアデザインを専攻しています。学部1年の後期から学外でよりリアルな経験を積みたいと考え、フリーランスとしてオフィスや展示会場のデザインを手掛けるようになりました。

江坂:僕は大学で複雑系科学を専攻しながら個人・団体で路上演出の活動をしています。学部2年のときにFAB(※)のカルチャーに興味をもち、2年ほどデジタルファブリケーションに没頭しました。

(※)「FABrication(ものづくり)」と「FABulous(素晴らしい)」両方の意味が込められている。

堀:私はもともとファッションが人や文化に与える影響に関心がありました。また、空間デザインを本職にしていることから “体験” について考えるようになり、qubomiという体験デザインのクリエイターチーム結成に繋がったと思います。

micsPub|2018.10|企画/デザイン/運営
クリエイティブプロダクションmicsのオフィスをバーのような雰囲気にする企画。

―お2人ともカチノデのコアメンバーとしてジョインしていて、カチノデがmicsの提携企業になったことでmicsの初期メンバーとなられたんですよね。micsでお2人が携わった案件について教えてください。

江坂:デザインとケータリングをやっています。micsではメンバーに呼びかけてご飯を食べる会や時間制限付きでZINE(※)をつくる会など、仕事以外の活動もたくさんやっていますね。

(※)コピー機で複製してつくる個人製作の小冊子

堀:ケータリングは、もともとmicsのオフィスのOISSUSHARE YABAでやっていた「micsPub」という活動から派生したものです。

江坂:いま名古屋では学生ベンチャーが増えていて、イベントをしながら規模を広げています。15人~30人規模の勉強会など、自分でやるには面倒だけど若い企業は予算がないので、ミニマムなケータリング需要がマッチしました。音楽も同年代の感性で選び、どうしたら体験が良くなるかを工夫しています。


目指すのは、くぼんだ場所に"必要なポジティブ”を与えること

―もともと、カチノデのメンバーだったお2人が、qubomiを結成した経緯を教えてください。

江坂:カチノデのメンバーとして活動していく中で壁に当たったとき、想いをぶつけることが多かったのが堀でした。掘は僕と同じようなことを考えていることが多く、 “空間” や “体験” といった興味ある分野が似ているのもわかってきました。これは2人で活動するしかないということになりました。

堀:まずは僕らが関心を持っていること、やっていることを洗いざらい出していって、シンボルになるものを探していきました。その中で体験・空間・場所といったキーワードが出てきて、僕らの活動が目指すべきところは「くぼんだ場所に、その時々で必要なポジティブを与える」だと辿り着いたんです。

江坂:自分が「くぼんでいるところを埋める、もしくは、平らなところをくぼませたくなる」ということを堀に話したときに、共感してくれたんです。

堀:「くぼんでいる」というのが、僕らの活動の数々を総称するものだと思いました。

江坂:もともとは無意識的に出てきた「くぼみ」というキーワードでしたが、チーム結成時に話し合いを重ねて活動コンセプトを言語化しています。それが「動物のすみか(自然性)」「多様性の源(社会性)」「感性の受け皿(人間性)」「落とし穴(心理性)」の4点です。

―「くぼみ」に込められた4つの意味について詳しく教えてください。

江坂:昔、人々はもともと洞窟に住んでいて……くぼんでいる部分を拠点にしていたんです。そう考えたときに、自分たちが興味を持つ人の居場所や空間というものは「くぼみ」という言葉で端的に表せたんですね。また、仮にフラットな川底だと生物は住めなくて、多様性は何か「くぼんで」いるところに生まれるのだと考えました。

堀:感性についても人はものの良し悪しを他人の評価ではなく、自分の中でどう受け入れるかの価値判断のお皿(=くぼみ)を持っていると考えています。

江坂:最後の落とし穴については、2人とも必要以上のことをしたくなるタイプなんです。平らな土地があったら、穴を掘りたくなっちゃう。逆に、落とし穴があるのがあたりまえのところだったら、埋めたくなっちゃう。これが「くぼんでいるところを埋める、もしくは、平らなところをくぼませる」の原点です。例えば、個人の活動ですが、ミスター名大は「なかった」から自分でつくってしまおうと思って始めたのがきっかけです。


僕らの活動を通して、名古屋の街へ仕掛けたい

Yuricafe 内装

―qubomiとして取り組んでいる活動内容について教えてください。

江坂:2018年12月に、守山区のYuricafeというカフェのデザインと施工を担当しました。「オーナーの元に人が集まる場所」をコンセプトに、オーナーの「好きなもの」が詰まったカフェが完成しました。オープン後は、お客さんとのコミュニケーションで笑顔の溢れる空間になっています。

堀:オーナーのユリさんは、「コーヒーを飲んでもらいたいというよりも、コーヒーを媒体として、お客さんとコミュニケーションしたい」という想いを持っていました。そういったクライアントの願いを叶えるために、しっかりとヒアリングをして空間デザインをしています。

プロジェクト進行中の新栄103

江坂:直近では新栄のスペース「103」の運営に携わっています。栄が完成された街であるのに対して、新栄はまだ飲み屋がメインの発展途上な街。最近は新しいショップができ、将来的にカルチャーが育ちそうな場所です。仮に僕らが栄で活動すると「くぼませる(壊す)」方向性になるけど、新栄だと「くぼみをうめる(創る)」活動になります。103は「どうしたらオープンでいい感じのカルチャーが生まれる場所になるか」を考えつつ、動かしていく予定です。

―qubomiのこれからについて教えてください。

堀:フリーランスのデザイナーとして仕事を継続しつつ、これからはより体験にフォーカスした表現活動にシフトしていく予定です。僕らが考えているアーティスティックな活動を通じて、面白いことを興したり、名古屋の街に仕掛けたりしたいなと考えています。

micsというコミュニティがqubomiに与えるもの


―micsではフリーランスがどんどん自立して、なんなら法人化して提携企業としてのジョインを推奨されているくらいですよね。micsにジョインしたメリットにはどんなことがありましたか?

江坂:個人レベルの話だと、堀はいろいろなクリエイターと触れ合ったことで視野が広くなったと言ってたよね。

堀:micsのクリエイターエコシステムでは、micsnightやmicsworkshopなどのイベントから気軽に参加してもらって、スクールやインターンで実践的に学んだ後にメンバーに昇格し、最後はフリーランスとして自立します。qubomiはメンバーから自立した階層にいる存在かなと思っています。

江坂:芸大では似たようなバックグラウンドの人が集まってるので、世界としては狭いんです。micsはちゃんと社会ともつながりを持っている組織で、それでいて若い人が集まっています。

堀:ライター・デザイナー・ビデオグラファーの3つのプロダクションから結成された会社なので、いろいろなバックグラウンドやナレッジを持っている人が集まっていますね。

江坂:micsは僕らみたいなクリエイターが居心地よい環境であり、さらに多様性があるというのは、ものすごくありがたいことです。

堀:何か進み方に迷ったときに、micsに来たらいろいろな方向に進んだ先の人がいるので、それを踏まえて自分の次のステップに活かせます。僕の捉え方では、micsはクリエイターを生んでいくという、ひとつの事業開発ですね。

―最後に、micsに興味があるクリエイターへ向けてメッセージをお願いします。

江坂:名古屋におもしろいカルチャーを創りたい人は、ぜひmicsに来てください。名古屋は多くのカルチャーが発展途上なので、チャンスだと思っています。

堀:まずはmicsのイベントに参加してみてください。気軽にmicsの輪に入ることができます。

江坂:qubomiとしては、micsという身近な活動の場があったことが大きなメリットでした。micsは、そこに集うフリーランスがいて、ある意味ひとつの “小さな世界” なんですよね。僕らは “世界” と対話していく存在です。「その世界がどういう状況かを見極めて、必要なものを創り出していく」という活動を一通りやらせてもらえる場があったのは、本当にありがたいと思います。単に「仕事をもらって嬉しい」というレベルではないですね。

まずはmicsNight(ミックスナイト)への参加がおすすめです。現役のフリーランスやフリーランスを目指す人に役立つ勉強会があったり、プレゼン大会があったり、micsがどういうコミュニティかを楽しみなが体験することができると思います。僕らもそこで「出張micsPub」としてコンテンツを提供しています。

micsには、多様なメンバー、スキル、ナレッジが集まっています。なんだかおもしろそう、ちょっと興味がある。そんな方は、定期的に開催しているイベントにぜひ遊びにきてください。がっつり学びたい!という方は、3ヶ月ごとに開催しているmicsインターンにぜひご参加ください。


取材・文=おぐら まみ
編集=小澤 志穂

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