[ゼミログ]演劇と教育

本note記事はSFCの学生有志で毎週開催している演劇自主ゼミのログ記事です(ログをまとめたマガジンはこちら)。

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去る11/3にゼミで取り扱った「演劇と教育」のログを記します(時差投稿すみません…)。

今週のテーマ

テーマは「演劇と教育」です。
学校などの学び場において演劇がどのような役割を担っているか、担い得るかについて議論できればと思います。
日本ではそこまで一般的に学校教育の中で演劇に触れる機会は少ないですが、イギリスなどでは授業科目に「ドラマ」が組み込まれたりしているようです。
とはいえ国内でも静岡県では劇場に中高生を招待する中高生鑑賞事業があったり、他にも独自に授業の一部に演劇教育を取り入れている例が見られます。
海外や国内の例を調べたり、演劇教育のプランを考えてくるなど興味分野に沿いながら発表してもらえればと思います。

「演劇と教育」と一口に言っても、「演劇そのものの学習」と「演劇を利用した教育」では意味合いが異なります。今回はあえてどちらかに絞らず議題に対する事例や意見を募ったところ、主に日本における中学・高校教育課程期間に学習や情動教育の一環で実施される演劇活動の共有がなされました。


地方による中高生向け演劇教育の差

まちは劇場」など、行政を上げた取り組みもなされている静岡出身の学生からは、静岡の中高生に向けた演劇学習の事例が紹介されました。

静岡の公的事業であるSPACでは、「劇場は世界を見る窓である」の理念のもと、劇場を広義の教育の場と捉え、静岡県内の中高生を対象とした鑑賞事業を続けています。公的施設だけあって一般に公開されている評価表によると、まとまった財源が投入されています。目標値(静岡県の中高生が在学中に1回は公演を見れる)には達していないものの、実際に静岡出身の知り合いに聞くと「学校で見に行ったことがある」と話してくれるような状況にはなっているようです。また、中高生にもわかりやすい解説のあるパンフレットをで確認できたり…

しかし、他の地域は必ずしも静岡のようにはなれていないようです。他のゼミ生の出身地である栃木では、在籍中に巡回公演が来たりみんなで見に行ったりする機会がなかったようですし、私が育った都立中高では年に一回芸術鑑賞教室があり、能や劇団四季などを見に行きました。

演劇学習の特殊例 : 自由の森学園の場合

ゼミ生の一人が通っていた自由の森学園(埼玉県)では、普通科の選択授業のなかに演劇のコマがあり、エチュードや朗読や人形劇を有名劇団の元メンバーが講師として教えていたと話してくれました。一口に演劇を作るといっても、演じるだけでも多くの学びポイントが有り、その他制作パートごとにもたくさんポイントが有ると思いますが、自由の森学園の授業では講師が演出を担当しているようです。

自由の森学園のような事例は他にもあるのかもしれませんが、演劇関係の学科(舞台表現科・演劇科など)は全国に7校存在するようです。

海外の場合

イギリスや台湾、アメリカなどでは、"Drama"という科目名で授業がある場合があるようです。ゼミの下調べをしているなかで、私が高校の修学旅行で訪れたオーストラリアの姉妹校(高校)でDramaのクラスを見学したときの動画を見返したところ、即興劇の一形態であるCommedia dell'arteがやられていたことに気づきびっくりしました(あとで調べるとアートをやっていた人向けの入学枠があるような高校ではあったようですが)。日本では音楽の授業は単独であったり、書道を国語の一貫でやったり、ダンスが体育に組み込まれたりしていますが、演劇の表現学習が指導要領に加えられる日は来るのでしょうか…

演劇を通して集団行動を学ぶ

児童演劇作家で演劇教育研究を行った冨田博之は、演劇教育を「文字通りの演劇の教育=専門の演劇人養成/演劇制作・鑑賞を目的とする」と「演劇制作・鑑賞を通した人間の教育を目的とする」の2つに分類したようです。後者を取り上げた論文や研究はされており、ではそれを全国の学校で実現するにはどうしたらいいのかは課題かと感じました。 

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以前のゼミで「地方と演劇」を取り扱ったときにも同じような話になりましたが、やはり日本では演劇と触れ合う機会が地域や学校で差があるのが演劇教育の現状のようです。コロナ期を経てテレワークによる都市分散が予測されていますが、東京・神奈川などの都市/静岡・鶴岡など演劇奨励がされている都市だけでなく地方で劇団やアーティストが活動し、中高の多感な時期に誰でも演劇に触れられるようになるには、どのような制度や取り組みが必要なのでしょうか。ゼミ内では各校に演劇経験がある/演劇を学んだ先生や職員を配置する?でもそもそも日本で演劇を学べる学部は少ない…など出ましたが、今後も調査が必要かと思いました。(いつか母校で話したりしたいですね…)


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