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していいシティ安藤智博「切り取った瞬間たち(5日目)」

心が動いた生活の一部を収集する

DAY5。早くも滞在は残り二日となってしまった。振り返りがてらせっかくなので、滞在中に「これは瓶詰めしたい!」と感じた、自分なりのお気に入りのスポットをここで共有したい。

①岳南電車吉原駅のお忘れ物掲示板
まず紹介したいのは、岳南鉄道線の吉原駅での出来事。滞在に向けて東京からここまで電車で来る際に、JR東海の吉原駅から岳南電車に乗り換えて、吉原本町駅へと向かう。その際、乗り口と駅自体も別々になっていることから、JRから岳南鉄道線の駅前に移動し、電車を待っていた時のこと。

実はその時、乗り換えの時間に余裕がなく、早めに駅間の移動をする必要があったのだが、なんとなく「せっかくだしゆっくり写真でも撮るか〜」と急がずに移動をした。案の定、あと少しのところで電車を見送る形となり、次に来る電車まで30分待ちとなった。急いでいなかったので「まいっか」と駅構内を散策することにした。

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電車を待ちながらうろうろとしていると、待合室に地元の小学生によって書かれたメッセージカードや、特産品のチラシなどが置いてあることに気がつく。色々と眺めていると、この岳南電車、知る人ぞ知るマニアの聖地なのでは...?とインターネットで検索。すると、やはり「全駅から富士山が望める鉄道」や「工場夜景電車」といった独自の魅力がある鉄道だということが判明。

まだ、気持ちは移動中だったものの「せっかく吉原にいるし、gapcapしてみるか!」と、この魅力的な駅の特徴的なものを探してみることに。10分ほどうろうろとしている中でなんとなく、ふと目に止まったのが、この年季の入った掲示板。

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駅員さんに話を聞いてみると、電車の利用者が忘れ物をした際に一週間駅で預かってくれるようで、その記録としてずっと使っている掲示板らしい。どこか古めかしい、よく使い込まれた掲示板の「お忘れもの」の文字を見て、なんだかこの駅の利用者だけの使いこなし方が垣間見えた気がする。

「すみません、大変厚かましいお願いなのですが、この掲示板に使っているチョークのかけらを分けてくれませんか?」

一通り身分やプロジェクトの紹介、雑談話をした後、駅員さんに思い切って打診してみることにした。もちろん、無理を承知で。

「もちろん、活動に使ってください、良かったら赤いチョークもどうぞ。」

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駅員の方々はそこにあった白チョークに加えて、事務室でいつも使っているという赤チョークも提供してくださった。この鉄道のあたたかい魅力を表す、良い瓶詰めをすることができた。

②富士市一色にあるミニたい焼きの“ひまわり”

次の日は、知り合った富士出身の方と一緒にひょんなきっかけで観光ドライブに行くことに。この地で生まれ育ったその視点だからこそ見える景色や、とっておきのローカルな名所を教えてもらえる時間となった。

ドライブの途中立ち寄ったのは、一人で切り盛りするお母さんが営む、可愛らしいこじんまりとした、たいやき屋さん。私たちのことを見るや否やすぐに、あら〜と声をかけてくれた。どうやら、ドライブに連れ出してくれたこの辺り出身の方は、ここに学生の頃からよく通っていたらしい。

「元気にしてたかい、懐かしいねえ。」

車を降り、せっかくなのでたい焼きとサイダー、そして段ボールに入ったみかんを...と思ったら、たい焼きはお母さんのご好意でおまけしてくれるとのこと。ありがたく頂くことに。そこから、当時高校生の頃から通っていたこの場所ならではのエピソードや、お母さんの思い出話などをゆったりと30分ほど聞く。

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ノスタルジックな当時の記憶を、まるで自分も追体験しているような気分になり、そのゆったりとした時間が心地よく、でもどこかなんとなく地元に帰りたい気分にもなりつつ。

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話が一通り落ち着くと、しゅわしゅわと喉に流れ込む甘く冷たいサイダーを飲み干し、中に入っていたビー玉を取り出した。もちろん、瓶詰めするためだ。昔からきっと変わっていないであろう、素敵な時間を瓶詰めできた気がする。

gapcapの活動には、瓶詰めをすることでその場所の魅力や思い出、使いこなし方を切り取り、視点を伝達するという狙いがある。言葉だけだと表しきれない情景を切り取って追体験できる、そんなプロジェクトとして今後も展開していきたい。

最新情報


滞在中の支援を頂いている吉原中央カルチャーセンター / 富士AIRの情報や取り組みについてはこちらをご覧ください。

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