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綿貫大介「結局みんな浜崎あゆみに憧れる」(滞在2日目)

さわやかな朝に聴きたい曲。ドライブで聴きたい曲。そんな風に、さまざまなシーンごとに似合う曲というのは存在する。僕はいつも東京を離れると、なぜかスピッツを聴きたくなる。スピッツをいろんな知らない風景に合わせて聴くと、不思議不思議。どんな土地にもピッタリ合って、完全に自分自身が風土の一部になれるのだ。

まるで自分は生まれた時からずっとこの土地に住んでいて、今日も(他人にぶつけようのない)どうしようもなくつたない感情を抱えながら生きているような気持ちになる。つまりそれは思春期の感受性を手に入れることと同義だ。

朝、狩野川を渡りながら「田舎の生活」(※1)を聴いた。世界は叙情的に霞みながらも、今日も誰かにとって優しく、誰かにとって苦しく回っている。

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知らない町の喫茶店で、常連のお客さんたちの方言をきくのは楽しい。たまたま見つけた「プリンス」という喫茶店。

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まさかこんなところにコーヒープリンス1号店(※2)があるとは。置いてあった静岡新聞に目を通すと、熱海の土石流の続報、県民の津波に関する防災意識の低さを示したデータ、伊豆の国市の小学校の生活記事など。

東京にいると東京のことを全国ニュースだと思いがちだけど、そんなこと全然ない。小さく載っていた小池都知事の記事なんて、本当にこっちではどうでもいいことだなと思う(実際どうでもいい内容だった。もっと報道すべきニュースがこの世に5万とある)。

さらにペラペラめくってたら

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……え、あゆじゃん……。これはもう、2002年の浜崎あゆみそのものじゃん……!!

だめだ。スピッツのセンチメンタルな感受性でここまで自分を保ってきたのに、あゆが聴きたい。頭のなかのRGが、“21世紀幕開けソング”こと「evolution」に乗せて浜崎あゆみあるある言いたがってる(→いつまでも悲劇のヒロイン演じてくれがち)。

やはり出だしから「そうだね僕達 新しい時代を迎えたみたいで」と、100年を背負う覚悟を持った歌姫はパワーが違う。まんまと、その流れで数年ぶりにあゆのアルバム「I am…」(※3)を再生してしまった。こんなんじゃ、感受性ぐちゃぐちゃだよ……。

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↑(2002年のAyumi Hamasaki🍃と、なぜか肩には鳩🕊)


店を出てもうちょっと歩いたら、江川邸([江川宅]と思い込んで打ち込んでいたら、変換ミスで宅の字が卓になってて、完全に「江川卓」(えがわすぐる)って文字が現れたのを邸に修正しました)。

大河ドラマの『西郷どん』(※4)『篤姫』(※5)、そして『JIN−仁−』(※6)のロケ地にもなっていると知ってどうしても来たかった伊豆の国市韮山にある重要文化財だ。

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改修工事中……情緒どこいった……?と一瞬なったけど、ここの正門(工事の幕が四角く空いている部分)はもともと身分の高い人しか通ってはいけないもので、通常は裏手にある土間からしか見学できないらしいところを、特別に改装中は正門から入ることができるというラッキーチャンスでもあった。

(なんか急にただの旅ブログみたいになってる、最悪。頼む、スピッツの感受性よ、戻ってきてくれ……。)

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時代は僕たちの価値観や感性、言葉を縛っていく。もしひょんなことから過去にタイムスリップしてしまったら、その時代の感性と言葉をみればいい。そしたら、時代を正確に言い当てられるかもしれない。僕はまた2021年の世界に戻っていった。

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ー私的注釈ー

※1(田舎の生活)……スピッツのミニアルバム『オーロラになれなかった人のために』に収録。今年の3月にNHK-FMで放送された渡辺あやさん脚本のラジオドラマ『はるかぜ、氷をとく』(原発事故から10回目の春を描く作品)でこの曲がテーマソングとして使われていて、なんていい曲なのだろうと思った。
※2(コーヒープリンス1号店)……2007年に韓国で放送され、視聴率27.8%という記録的な大ヒットとなったラブコメドラマ。その後、日本でも人気に。イケメンしか雇わないカフェに、家計を支える女子ウンャン が“男性店員”として働くことになり……。東京・新大久保にも同名のカフェができていたが、番組との関係は謎。この日みかけた「プリンス」はもちろん「コーヒープリンス1号店」とは無縁。
※3(I am…)……2002年発売の浜崎あゆみ4枚目のオリジナルアルバムで、この時期のavexにありがちな1月1日発売だった。累計230万枚を売上げ、2002年のオリコン年間アルバムランキング2位を記録。収録曲は「evolution」「Dearest 」など。
※4(西郷どん)……2018年、鈴木亮平主演の大河ドラマ。脚本は中園ミホで、勇気と実行力で時代を切り開いた「愛に溢れたリーダー」として西郷隆盛を描いていた。江川邸は島津家の屋敷として使用。
※5(篤姫)……2008年、宮崎あおい(崎は正式には「たつさき」)が当時22の史上最年少で大河の主演を務めた作品。演じたのは天璋院篤姫。最終回、亡くなるシーンの神々しさといったら……。堺雅人との夫婦役も素敵だった。江川邸は島津家の屋敷として使われていた。
※6(JIN−仁−)……TBS日曜劇場枠のドラマで、第1期が2009年、第2期が2011年放送。主演は大沢たかお。「現代の医師が、もし幕末へタイムスリップしたらどうなるか?」を描いた、SF要素の強い医療時代劇ドラマ。大沢たかおは後に、奇想天外なストーリーで大コケしそうだから辞めたほうがいいと周囲に出演を反対されていたと明かしている。江川邸は大沢たかおと綾瀬はるかが、邸宅、玄関、北米蔵、塾の間を使って、胃の手術、江戸大火の中喉の手術、ペニシリンのやりとりを演じた場面で使用。

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