山本晶大「蒲原という宿場町」(滞在まとめ)
3/1日から7日までの蒲原での一週間は、多くの方に本当によくしていただいて、おかげさまで濃密で充実した時間を過ごすことができました。
今回のプログラムを企画してくださったアーツカウンシルしずおかの方々や、受け入れを行ってくださった木下さん夫婦をはじめとするしずおか民家活用協議会の皆様、燕之宿の大澤さん、そして蒲原で活動されている稲葉さんや服部さん、石原さん、片瀬さん、吉田さん、色々とお話を聞かせてくださった皆様、本当にありがとうございます。
私は空き家や古民家などでインスタレーションという空間を利用した現代美術作品の展示したり、民家をリノベーションしたりということを生業としているため、その土地にある建物や街並み、歴史的背景、周辺環境を取り巻く問題などに注目しながらリサーチしていくことが多く、今回の滞在でも東海道の宿場町である蒲原の街並みがどのようにして変化してきて、これからどうなっていくのだろうかということを考えながら人々の話を聞いていました。
蒲原には安政頃に建てられた町家や、日本では珍しい石造りの蔵が複数残っており、私のような古民家好きにはたまらない場所です。しかし、取り壊されたり建て替えられたりする町家も多く、歴史と風情のある宿場町の街並みは急速に消えていっていっており、この先も宿場町としての姿を残していけるか、それともこのまま町家が消えていってどこにでもあるような町になってしまうか、という瀬戸際にあると感じました。
また、地域や子供のために積極的に活動している人も多く、特に70代前後の人々が活発である一方で、その下の50代前後の人々の動きがあまり見られず、30〜40代で活動している人々の動きも上の世代が作り上げてきた派閥や序列などのしがらみに抑圧されている部分があったり、古民家の残る宿場町エリアでは空き家になっている家が多いにも関わらず移住希望者が家を探しても中々売ったり貸したりしてもらえないなど、新しい世代の活動が展開し難くなっている部分もあるようです。
現在蒲原町を支えているシニア層が段々と活動できなくなっていって世代交代が起こったとき、次の世代の人々が蒲原の文化や街並みに関心や興味がなく、他の住宅地と同じような場所になってしまうのは寂しいので、そうなってしまう前に蒲原に住む多くの人にここにある町家や街並みがいかに魅力的かを伝え、理解してもらえたら理想的です。
東海道の宿場町として栄えて来た歴史や現在の周辺環境もとても興味深く、そうしたモチーフを組み合わせていきながら蒲原の魅力的な町家や蔵にインスタレーション作品を作れたらなと、ずっと考えています。
外から来た私にとっては魅力的でも、ずっと住んでいると見慣れた古臭い町だとしか感じられない人も多いでしょう。そんな見慣れた場所を一変させ、町に住む人が改めてこの町と向き合う刺激となるような作品を作れたらきっと面白い。特に、町のことにあまり関心がない人に見てもらって、興味を持つきっかけになればこれほど嬉しいことはないです。
今回のマイクロ アート ワーケーションは滞在してnoteに文章を書いて終わりではなく、あくまできっかけづくり。
短い滞在の間に色々な方からお話をお聞きすることができましたが、それでもまだまだお話を聞けていない人の方が圧倒的に多く、私が触れたのは蒲原の側面の一つに過ぎません。
これからも蒲原の方々と交流を図っていきながら、蒲原の町に寄与できるような作品制作に落とし込んでいけたらと願います。