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大門未知子の楽しみ方が少し変わった

 初めて観たのは中学生の頃だったんじゃないかと思う。母がテレビで観てるのをたまーに一緒になって観ていた。
 あのときは「私、失敗しないので」や「致しません」が痛快でカッコ良かったり、定番のメロンと恒例の請求書のくだりが分かっていても面白かったり、まあ如何にも中学生らしい楽しみ方をしていた気がする。

 最近になってAmazon Primeでまた久しぶりに大門未知子を観始めたのは正直妥協の結果であった。
 ワンピースのアニメ2周目を観終わって次は何にしようと考えたとき、本当ならばわたしはコードブルーが観たかった。しかし残念ながらアマプラにはコードブルーの劇場版しか置いていない。なので半分は諦めと仕方なしの気持ちで、同じく医療系のドクターXに手を出した。


 もちろん21歳になって観たって面白いところは面白い。失敗しない大門未知子はカッコ良い、メロンと請求書も相変わらず。
 だけどそれらに加えてもう1点、未知子がフリーランスで働く様子にやはり興味を惹かれてしまう。わたしも今では正社員として就職せずに、好きに仕事をしていきたいと思っているから。

 どこの大学病院でも町医者でもなく、神原名医紹介所に所属するフリーの外科医・大門未知子。営業や“集金”はマネージャーの神原さんがやってくれるが、肝心のオペの仕事は契約後の病院内にて未知子が自ら「ハイハイ私に切らせてよ」と積極的にとっていく。

 作中の医療界隈は完全なる弱肉強食の世界になっていて、院長や部長のゴキゲンを損ねればまずいし、主任の座を狙う権力争いなども絶えない。ときには患者の意志よりも病院の名声を優先したがることもある。
 そんな医局に所属して左遷や解雇にビビる医者たちがいる中、フリーの未知子はいつも我関せずのどこ吹く風。わたしも余計な気苦労なしに生きていたいので、あの働き方は見ているだけで本当にバカンス。しかも未知子は“趣味”のオペさえやっていれば良いわけだから。

 また一方でフリーランスの不安定さも垣間見える。未知子のオペはだいたい1件数百万の報酬になるが、その大金は毎回神原さんに肩代わりしてもらった借金の返済として全額溶けていく。よって彼女自身は超貧乏。
 さらに無礼な態度でせっかくの大学病院をクビになってはまた新たな契約先を探してもらわないといけない。神原さんが「もう30件断られている」と言ったときは当然わたしも背筋が冷えた。

 だってそれはライターでいうと原稿執筆の依頼に「書きたいです」と30回も立候補して全部お祈りされると同然。そもそも「書きたい」と思える原稿にめぐり会えるだけでもわりとラッキーなのに。考えるだけでゾッとする。まあ仮に就活をして履歴書30枚を素通りされるよりは遥かにマシだが。


 ドクターX、こういう観方は中学生なら絶対できないものだろう。まだ今よりも幼い頃にふれた何かを成長してからまた改めて手にすることは、それを通して自分の中にも新たな発見をさせてくれる。

 別職種のフィクションとはいえ、今になってフリーランスの働き方を覗き見れたのはとても良かった。わたしもあんなふうに縛られず捕らわれず、のびのび自由にやっていこうぞ。


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