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第2回 クライミングジムのビジネスモデルを理解する

前回のnoteでは、
・クライミングジム業界の競争環境や収益性はどう変わってきたか
・新型コロナウイルス感染症の影響も含め今後どうなるか
等を、経営コンサルタントとしての知識とクライマーとして考えてきたことを動員して論じました。
予想以上に多くの方に読んでいただけて本当に嬉しいです。

<前回のnote>

前回の内容は5フォース分析であり、あくまで業界の競争環境や顧客や仕入元との関係を論じただけなので、経営戦略という観点からは3C(自社、競合、顧客)の内の2つに触れたに過ぎません。

<経営戦略の基本要素の3C>

Company:自社
Competition:競争、競合
Customer:顧客

というわけで今回は続きとして、最後のCであるCompany(自社)としてクライミングジムの内部環境について書きます。

スライド4

ご存じの通り、現在ではクライミングジムは単純なジム経営業だけではなく、物販・スクール・ルートセット等、様々なビジネスに手を広げています。
ただこの記事ではまずはシンプルにジムビジネスにフォーカスして、
・クライミングジムという固定費ビジネスの理解
・固定費ビジネスで収益性はどう高めるべきか
・Withコロナの時代にジムビジネスはどの方向に進むのか
を解説します。
前回のnoteを読んでいなくても理解できますし、噛み砕いて説明したので、興味のある方は是非読んでいただけると嬉しいです。

 

ジムのビジネスモデルを超シンプルに捉えると「固定費ビジネス」

クライミングジムは物販等のサイドビジネスを一旦置いておくと、その商品はシンプルに「ジム側が課題を用意し、お客さんがそれを登る」というものです。
この「登る」という商品も
・初回登録料
・シューズ等のレンタル料
・1回利用料 or 期間フリーパス
などに分かれます。
更に利用料にも時間制等いくつかに分かれますが、以下まとめて「利用料」として顧客が1回利用ごとに一定の料金を支払うとしましょう。

すると初期費用は置いておいて、毎月の基本的な収益・コスト構造はざっくり以下となります。
・ジムは毎月(もしくは、ある期間で)一定の費用がかかる
 -家賃:ジムという箱代
 -人件費:スタッフ代
 -ルートセット費:セッター代、ホールド代
・利用料は原価0円、つまり顧客の人数が増えても減っても費用は変わらない

このように売上の増減に関わらず一定額発生する費用のことを固定費と呼び、固定費に依存したビジネスを固定費ビジネスと呼びます。
これに対して例えば飲食店などは家賃等の固定費もかかりますが、商品には材料費(原価)が必ずかかるので売上が増えれば費用も増加します。
このように売上に連動する費用を変動費と呼び、変動費に依存したビジネスは変動費ビジネスと呼びます。

もちろん、現実世界のクライミングジムでは顧客が大幅に増えれば追加スタッフが必要となり人件費は増えますし(その意味で人件費は準固定費とも呼びます)、ルートセットの頻度も上がりますし、新規の顧客をより多く呼ぶにはマーケティング費用がかかります。
顧客の増加によるマット等の老朽化は無視できない経営インパクトです。
ただ一旦これらは無視し、シンプルに完全な固定費ビジネスだとして整理してみましょう。

 

クライミングジムビジネスを簡単にグラフ化

以降の話をわかりやすくするために、図を導入して例示します。
シンプルに以下の設定のクライミングジムがあるとしましょう。
・毎月の費用:120万円
 -家賃:50万円
 -人件費:60万円
 -セット代:10万円
・顧客1人あたりの利用料:2,000円

横軸を売上数(=顧客数)、縦軸を売上高と損益とします。
すると顧客数と売上高・利益の関係グラフは以下のように描けます。

<顧客数と売上高・損益の関係>

スライド5

固定費は赤線で、顧客数に関わらず常に120万円。
売上高は黄色線で、顧客数が増えると傾き2,000円/人で増加。
売上高と固定費の差分が損益となります。

この設定の場合顧客数が600人に達すると、600人×2,000円=120万円となりようやく月の固定費をここで回収。
つまり顧客数600人が損益0のラインとなる、いわゆる損益分岐点です。
ここを下回る顧客数ならば赤字ですし、超えればその分の売上がそのまま利益となります。

例えばグラフのように、顧客数が損益分岐点から更に600人増えて月間1,200人になったとします。
このとき、損益分岐点から増えた売上高の120万円はそのまま利益となるのです。
固定費ビジネスは売上数が損益分岐点を大きく上回ると、売上がそのまま利益に繋がるので非常に儲かります。
一方で不況やアクシデントで売上数がガクっと下がった場合も固定費が変わらずに費用としてのしかかるので、大きな損失を出しかねません


今回の新型コロナウイルス騒動で、大手ジムが経営難になり
"え、あんな大手がなぜ、、、"
と困惑した方もいたかもしれませんが、構造上は顧客数が急減した場合むしろ大手の方が高い固定費を抱えるので収益性は圧迫されるのです。
(保有するキャッシュ量も大きく関係するため、一概に大手が経営的にキツイとは結論付けられない)

 

固定費ビジネスで利益率を高める方法は基本的には3つ

クライミングジムをシンプルに固定費ビジネスと捉え、大まかなビジネスモデルが伝わったかと思います。
これにて準備はOK。
ここからもう少し踏み込んだ話となり有料とさせていただきますが、いつものごとく思うままに書きまくったので読みたい方はよろしくお願いします。

 

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