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浴びるクライミング、探すクライミング

サカナクションの山口一郎さんのこの動画が大好きで定期的に観ている。

<Forbes JAPAN U30>

登場する印象的なワードに「浴びる遊び」「探す遊び」があり、山口さんは以下のように説明している。

浴びる遊び
・東京で求められたこと
・ミーハー
・ライスワーク

探す遊び
・北海道でやってきたこと
・美しくて難しい
・理解できない難しい本を何度も読んで、徐々に分かってくる
・ジャケ買いしたCDを聴き込む
・ライフワーク

あらゆる分野で、浴びる遊びは増えてきた。
考えずただクリックするだけのゲーム。
行間を読む必要のない分かりやすい本。
TikTokやYouTubeなどで自動的に流れ続けるオススメ動画。
僕も子供の頃と比べて、内面世界に深く潜り込むことや、本当に何か知りたいことを根気強く探し求めることなどは減った。
探す遊びはめっきりしていない。

ただこの変化は一概に悪いことではない。
膨大な情報から自分の力だけで何かを探していたら、いくら時間があっても足りない。
途方に暮れて人生が終わってしまう。
テクノロジーの発達で浴びる遊びの質だってきっと上がっている。

山口さんは浴びる遊びと探す遊びを上手く融合させ、マジョリティの中のマイノリティという立場を確立させて音楽を作ったことがサカナクションが成功した要因だと語っている。

浴びるクライミング

クライミングも同じように考えられる。
・毎週のように各地のジムに新しい課題が溢れる
・岩場は整備され、トポもわかりやすい
・誰かによって名前とグレードが与えられたラインを登るだけ
・YouTubeで簡単に完登動画が観れる

僕もこのような浴びるクライミングばかりしている。
課題をセットしたり、トラッドクライミングをしているとは言え、それも浴びるクライミングには違いない。
セットは所詮は用意されたホールドを等間隔のボルト穴に当てはめ、どこかで見たムーブを作っているだけだ。
ビッグウォールをしにヨセミテまで行っても、多くのクライマーが何度も登ったラインを追っているに過ぎない。

探すクライミング

探すクライミングとはなんなのだろうか。
突拍子もない誰も見たことのない理不尽な課題をセットすることは探すクライミングなのだろうか。
たとえ初登でもあまりにしょぼい岩であったり、既存課題を無意味に延長しただけのラインが、探すクライミングと言えるのだろうか。

そもそも探すクライミングは浴びるクライミングよりも素晴らしいのだろうか。
逆に誰も訪れない山奥で初登したボルダー課題はたしかに探すクライミングなのかもしれないが、それは日の目を見ることは無い。
もちろんそういうクライミングが美しいのはわかる。

浴びると探すの合流地点

今の僕は浴びるクライミングに振れ過ぎている。
だからと言って、初登だとか冒険性を求めて誰も見向きもしないような探すクライミングに極端に走りたいわけじゃない。

冒険性に溢れるのだけれど、それでも大衆性を完全には失わないクライミング。
皆が心の中で憧れ、ともするとミーハーっぽいけれど、革新性がありワクワクするようなクライミング。
そんな浴びるクライミングと探すクライミングの合流地点にいつか辿り着きたい。

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