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ISO14001で儲けなさい❶:西暦2000年が環境活動の転換期だった

1.「ISO14001で儲けなさい」

この言葉は、とある国際的審査機関の日本代表が私に掛けてくれた言葉です。

時は西暦2000年。私は、ISO14001(環境マネジメントシステム)規格の重要性・必要性を強く感じ、社長に認証取得の提言をしてはみたものの。。。。「さぁ、これからどう活動を進めて行こうか」という状況の時でした。

当時は、ISOと聞くと、「文書とか記録とかが多く大変」というイメージが今以上に強く、抵抗感がありました。

今後、必ず訪れる地球環境の変化に企業として、今こそ取り組むべきと言う理想。それに対して、そのためにヒト・モノ・カネを使って活動しなければいけないというギャップがありました。

そのギャップを埋めてくれた言葉が、「ISO14001で儲けなさい」だったのです。

2.西暦2000年という節目

大学時代、学部の先生が「西暦2000年の地球」の日本語訳に協力していたこともあり、西暦2000年は、一つの節目だと感じていました。

その報告書は、1980年、カーター大統領の指示により米国の複数の連邦政府機関が世界の人口天然資源環境の 20世紀中の変化を取りまとめたものです。

現在では、現実になっている人口の大幅増加南北の所得格差拡大食糧水供給の問題森林減少砂漠拡大気候変化を問題提起していました。そのため、国際連合や先進国サミットなどでも言及され,地球環境問題に対する世界の関心を高めました(ブリタニカ国際大百科事典参照)。

しかしながら、当時、日本では、地球環境の変化を少しずつ感じながらも、まだまだ先のことと思っている人が大部分でした。そんな中、政府は、国際社会の動きに合わせ、徐々に環境問題への対応を打ち始めていました。

一方、大部分の企業は、環境問題の重要性を認識しながらも、まだ、自分事にはなっておらず、なかなか具体的な活動に着手できていないという状況でした。

反対にいうと、そういう時だからこそ、企業にとっては好機だと私は思っていました。


3.2000年、容器包装リサイクル法が完全施行

1997年 容器包装リサイクル法が、一部施行され、「びん」、「缶」、「ペットボトル」がその対象となりました。

2000年 容器包装リサイクル法が完全施行され、対象に「紙製容器包装」、「プラスチック製容器包装」が追加されました。

もともとこの法令は、いわゆる地球環境の保全が目的ではなく、ごみ処理場の確保が目的でした。

高度経済成長以来、「大量生産」「大量消費」「大量廃棄」により、ごみ処理場がひっ迫し、いずれ処分できる場所がなくなるために対応が必要になって来ました。

一般の家庭から出るごみの60%以上が容器包装であり、容器包装のごみをなんとかしなければならないということです。

この法令では、以下の通り、消費者、市町村、事業者(企業)の役割分担を明確にしています。
【消費者】     分別排出
【市町村】     分別収集
【事業者(企業)】 再商品化(リサイクル)

消費者は、容器包装に付いている識別マークに従って、ごみを分別して排出する。

そして、市町村は、分別排出されたごみを分別収集する。

さらに事業者(以下、企業)は、再商品化(リサイクル)のための費用を出すというものです。

分別排出、分別収集は、容器をリサイクルして活用するためです。ところが、リサイクルするためには費用が掛かるため、「容器包装を使って商品を売る企業」と「容器包装を製造している企業」リサイクル費用の不足分を補うというものです。

↓容器包装の識別マーク(ペットボトルリサイクル協議会)


4.容器包装リサイクル法の強烈なインパクト

容器包装リサイクル法では、企業は、排出する容器包装の種類と重量に応じて、リサイクル分担金を試算して、国に納めるという仕組みになっています。

どこの企業も同じだと思いますが、当時、環境問題に対応する部門はありませんでした。あるとするならば、工場に公害対策に対応する部門があるという状況でした。

私は、当時、たまたま本社の生産を統轄する部門に所属していたので、容器包装リサイクル法の分担金の試算と支払いの担当になりました。

実は、この計算が非常に大変なんです。1年間に販売した商品に使用していた「びん(無色、褐色、その他)」、「ペットボトル」、「紙製容器包装」、「プラスチック製容器包装」の重量を試算し、その重量に係数を掛け合わせなければなりませんでした。

最初は、なんと試算構想から試算実施、検算までにほぼ1カ月を要しました。商品の販売量とそれぞれの商品に使用している容器包装一つひとつの重量を掛け合わせるという途方もない作業です。

そして試算の結果、出て来た額が、な、な、なんと数億円。

私の試算で会社が数億円を支払うという事の重大さには驚愕しました。そして、容器包装リサイクル法の施行により、会社の利益が数億円なくなってしまうという事実に呆然としました。

流石に、何度も何度も試算方法が大丈夫か、試算が間違っていないか検算しました。一つのミスが数百万円、もしくは数千万円の差異を生みかねないので、責任重大でした。


5.容器包装リサイクル法で発想転換

容器包装リサイクル法の考え方は、企業が商品に使用した容器包装の重量分に単価を掛けて支払うというものです。

ということは、容器包装の「重量を小さくすれば」、「支払い単価の高い容器包装を使用しなければ」、容器包装リサイクル法の分担金を圧縮できるということです。

従来から、コスト削減活動として、消費者に変化が分からない程度に容器包装の軽薄短小化を進めていました。

でも、よく考えたら、環境のためには、容器包装はなるべくコンパクトの方がいい。そうすることで、同時に容器包装に掛かる費用、容器包装リサイクル法の分担金の費用を圧縮することができるのです。

そしてそのことが、環境問題の対策の一つのアプローチになると考えるようになりました。

つまり、「容器包装の軽薄短小化は、環境への対応にもなるし、なおかつ儲かるんだ」という発想転換です。

この発想転換を機に「ISO14001で如何に儲けるか」を活動推進の考え方にしようと考えました。


6.まとめ

ISO14001認証取得活動を始めようと考えていた時、とある国際的審査機関の日本代表から言われた「ISO14001で儲けなさい」という言葉を今でも覚えている。

・当時(西暦2000年)は、まだ、環境問題を自分事にしている人や企業が少なかったため、反対に企業が環境問題に具体的に取り組んで行くには絶好の時期だと考えていた。

容器包装リサイクル法の分担金は、企業にとって大きなインパクトがあり、その対策を講じる必要を強く感じた。

容器包装の軽薄短小化は、コスト削減、容器包装リサイクル法の分担金の圧縮を実現できるだけではなく、環境問題への第一歩でもあるという発想転換ができた。

「ISO14001で如何に儲けるか」が環境活動の潤滑剤であると考えた。


次回の投稿では、どのように「ISO14001」で儲けようと考えたかについて、お話したいと思います。


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