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産業廃棄物の処理で問題に巻き込まれないための基礎知識:そもそも産業廃棄物って何?

前回の投稿(↓リンク参照)では、産業廃棄物の適正処理の重要性について、さわりをお話しました。

ところが投稿した後で、普通の人はそもそも「産業廃棄物」自体知らないんだろうな、ということに気付きました。

そこで、今日は、「そもそも産業廃棄物って何?」ということについてお話しします。産業廃棄物処理の問題に巻き込まれないための超基礎知識です。


1. 前回投稿のまとめ

前回の内容をまとめると、以下のようになります。

❶産業廃棄物(以下、産廃)の処理は、廃棄物処理法(以下、廃掃法)に則って行わなければなりません。

❷廃掃法では、「産廃は、排出事業者が自ら処理しなければならない」ということが原則であり、産廃処理を他社に委託することは、例外としています。

❸そのため、他者への委託の際は、下図のように契約締結やマニフェストによる確認等、厳格なルールに従わなければなりません。

❹排出事業者が廃掃法に違反すると、罰金や懲役の罰則があります。

❺企業が産廃を処理する場合は、社内で廃掃法を理解している担当者と相談した上で、対応しましょう。

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でも、産廃って一体何? そして、もし産廃を処理しなければならなくなったら、具体的にどうすればいいのでしょうか?という素朴な疑問が次々生まれてきますよね。

廃掃法は非常に難解な法律ですので、何回かに分けて、基本的な法令の内容をお話しして行きたいと思います。


2.そもそも産業廃棄物とは? そして、一般廃棄物とは?

下図の通り、廃掃法では「廃棄物」を大きく「産業廃棄物」と「一般廃棄物」に区分しています。

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産廃は、廃掃法により細かな規定がなされています。そして、一般廃棄物は、産廃でないものと定義されています。

即ち、廃棄物は必ず「産廃」か「一般廃棄物」に分類されるのです。

廃掃法では、廃棄物は排出した者が処理する責任があるという考え方なので、産廃の処理の責任は「排出事業者」、一般廃棄物の処理の責任は、私たち(一般家庭)の代表である「市町村」になるというわけです。

2-1)産業廃棄物とは

上図の通り、産廃には、「事業活動に伴って排出された20種類の廃棄物」「特別管理産業廃棄物」の2通りがあります。

産廃と定義された場合は、前回の投稿でお話ししました通り、処分業者および収集運搬業者と契約を締結した上で、排出毎にマニフェストを発行して、適正に最終処分がなされたどうかを管理しなければなりません。

【1】「事業活動に伴って排出された20種類の廃棄物」とは、

❶燃え殻、❷汚泥、❸廃油、❹廃酸、❺廃アルカリ、❻廃プラスチック類、❼紙くず、❽木くず、❾繊維くず、❿ゴムくず、⓫金属くず、⓬ガラスくず、コンクリ―トくず及び陶磁器くず、⓭鉱さい、⓮がれき類、⓯ばいじん、⓰動物性残渣、⓱動物系固形不要物、⓲動物のふん尿、⓳動物の死体、⓴❶〜⓳の産廃を処分するために処理したもの

です。

ただ、複雑なのは、❼紙くず、❽木くず、❾繊維くず、⓰動物性残渣、⓱動物系固形不要物、 ⓲動物のふん尿、⓳動物の死体については、特定の業種から排出された場合のみ産廃になるのです。

例えば、❼紙くずは、紙加工製造業、新聞業、出版業等が排出する場合は産廃ですが、指定された業種以外(例えば、食品製造業)が排出しても産廃にはならず、一般廃棄物として処理することができます。

【2】「特別管理産業廃棄物」とは、

産廃のうち、爆発性、毒性、感染性その他人の健康または生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるものを言います。これは、管理が普通の産廃より大変になります。


もう、ここまでを簡単に説明したつもりですが、普通の人は、きっと付いて来れないですね。

前回のまとめのところでもお話ししましたが、廃掃法は非常に複雑なので、社内でどうしても産廃を処理しなければならなくなった場合は、廃掃法を理解している担当者と相談した上で、対応しましょう。

善かれと思い、廃棄物業者に勝手に処理を依頼すると、法令違反になる確率が非常に高くなります。


2-2)一般廃棄物とは

上図に示す通り、一言でいうと、「産廃」でないものが、「一般廃棄物」です。市町村で処理してもらう廃棄物です。

ここで、「事業系一般廃棄物」とは一体何だろうと思われるのではないでしょうか。

「事業系一般廃棄物」とは、事業者から排出される廃棄物で、産業廃棄物でないものを言います。

例えば、オフィスから排出される紙、缶、瓶等がそれに相当します。これは、わざわざマニフェストを切って廃棄はしていませんよね。

「事業系一般廃棄物」は、各市町村のルールに従って処理します。処理方法としては、
❶市長村の許可を受けた収集運搬業者に委託する方法、❷自己搬入で廃棄物をクリーンセンターに持ち込む方法、❸事業者用のごみシールを購入して、ごみ袋に貼り、家庭用のごみと一緒に捨てる方法等があります。


3.産廃を処理する時はどうするか

産廃とは何かを仕分けするだけでも大変なことが分りましたでしょうか?

さらに産廃を処理しようとすると、大変細かなルールに従わなければいけません。簡単に言うと以下のフローなのですが、各ステップ毎に細かな取り決めがあります。

今後の投稿では、産廃処理の落とし穴について、少しづつお話しできればと考えています。

❶処理業者、収集・運搬業者との契約締結
❷産廃の排出毎にマニフェストを発行
❸マニフェスト管理により、最終処分を確認
❹マニフェストの保管(紙マニフェストの場合、5年間

また、政令指定都市や都道府県の条例により、処理業者の定期的な実地確認を義務化しているところもあります。


4.まとめ

❶廃棄物は、産業廃棄物と一般廃棄物に分けられる。

❷産業廃棄物の種類は20あるが、そのうちいくつかは、特定の業種から排出された場合のみ産廃になる。

❸事業から排出されるゴミの中には、産業廃棄物ではないものは、事業系一般廃棄物に分類され、事業所がある市町村のルールに従って処理をする。

❹産業廃棄物を処理する場合は、契約書締結→排出毎にマニフェスト発行→最終処分の確認→マニフェストの保管(紙の場合5年)を行わなければならない。

❺産業廃棄物の処理は、非常に複雑なため、担当者と相談の上実施することが望ましい。


産廃の処理は、一歩間違えるとコンプライアンスに関わって来たり、罰金や懲役の罰則が与えられるケースもあるため、組織としての体制や担当者の育成が非常に重要になって来ます。



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