小説 心筋梗塞(4)

Day5〜10  2022年5月28日〜6月4日

急な入院生活を送らないといけなくなった僕の、1番の心配事は、仕事のアポイント調整である。
ちょっと検査のつもりで受診したのに、そのまま手術入院となってしまったために、仕事についてはスタッフに連絡のしようがなかった。
幸い、妻がスタッフに伝えてくれて、アポイントを先の方に延ばしてくれていた。
連絡のつかなかった患者さんもいたのだが、ありがたいことに、弟と後輩が医院に来てくれて代診してくれることになったと妻から連絡があった。

感謝しかない。

心筋梗塞を患った患者は塩分制限を課せられるので、病院食も非常に味気ないものが出される。
濃い味が好きな僕にとっては味がついてないに等しい食事だったが、それさえも初めての入院生活を送る僕にとって、楽しい(と言っては語弊があるが)ものであった。

CCUでは75m歩行テストであったが、一般病棟では200m、500m歩行テストが行われ、200をクリアしたら病棟内を自由に、500をクリアしたら病院内を自由に歩くことができる。

200クリアのご褒美はお風呂で、2日に一度であるがシャワーを浴びることができる。
一番初めは浴室で倒れてはいけないので、看護師さんが扉の外で待機してくれて、何かあった時は対処してくれる。
幸い何もなかったことが確認されたので、次からは一人で入浴することになるが、普段風呂に入るのを気にかけてもらうことなどないので、嬉しいような、恥ずかしいような。

500クリアのご褒美は、病棟から出て、下のコンビニに買い物に行けることだ。
減塩の食事を楽しんでいたと前述したが、体が欲していたのか、無意識に『男梅』を買ってしまった。
隠しておけばいいものを、テーブルに出しっぱなしにしてたため、それを見た主治医の先生からは、それとなく注意を受けた。

一粒だけ食べて、あとはカバンへと仕舞った。

さよなら男梅。


退院予定の前日は、先生の指示ペースで自転車ペダルをこぐ、心臓負荷テストが行われ、それをクリアしたら、いよいよ退院の運びとなる。

 

まだそれほど重篤ではなく、経過も良好であったため10日間の入院で済んだが、その後の生活は、塩分やアルコールのことを気にしながら食事をして薬を飲み、運動を心がけて生きる必要がある。
退院後の僕はというと、正直にいうと、血圧が非常に上がってきている。
入院中にいただいた心不全パンフレットにも書いてあったが、喉元を過ぎると忘れてしまうのだ。

僕は体型的には太ってもいないし、おおよそ心不全とは縁遠そうだが、それでもなっちゃう。


この僕の経験が注意喚起になり、皆さんの健康に寄与すれば良いなと思って書き記すことにした。

お役に立てば幸いです。

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