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これからの性教育

 性教育は、学校で十分に行われているのでしょうか?
 小学校高学年では、生理や精通に関する授業を行うことはあります。しかし、時数は限られていますし、センシティブな内容だけに、どのように教えてよいのかが難しいというのが、現場の教員としての正直な意見です。また、ぼくは男性なので、女子児童生徒への伝え方も非常に気を遣います。場合によっては、女性の養護教諭や同僚に、そのような話をしてもらうこともあります。
 また性教育とは、生理や精通といった生理現象を扱うことに留まりません。性マイノリティや性別の多様性、セクシャルハラスメント等、性に関する様々な問題についても、学んでいく必要があります。しかし、そうした性についての知識を学ぶ機会が十分に保障されているかと言えば、そうとは言い切れません。教員自身も、知識不足だったり意識が不十分だったりという現状もあるかと思います。自戒を込めて言えば、ぼく自身もそうした知識を十分に持っているとは言い難いです。なぜなら、ぼくは学校教育においてそうしたことを学ぶ機会がほとんどなく、大人になってから自分で学ぶ意識を持つまで、そうした知識に触れてこなかったからです。そして、教員に限らず多くの社会人が、ぼくと同様に意識しないとほとんど性教育については知らないまま、という現状だと思います。
 日本における義務教育は、すべての児童生徒に等しく最低限度の教育を与えることを目的としています。個人的には、性教育はすべての児童生徒が学ぶべき教育内容だと思っています。だからこそ、この問題にすべての人がしっかりと向き合い、考えていく必要があるのです。
 これまで教育の中で、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)のような性の多様性についてほとんど触れられてこなかった原因の一つに、あまりにもマイノリティな事象だから、という点が挙げられることがありました。しかし、2019年にLGBT総合研究所が行った意識行動調査によると、こうした性的少数者の割合は約10%という結果が出ています。つまり、30人学級でいえば平均3人はこうした性的マイノリティの児童生徒がいるという計算です。少なく見積もっても、クラスに1人は確実にいると言えるのではないでしょうか。そう考えると、これは教育者が無視できるレベルの問題でないという事は明白です。
 子どもたちには、まず自分自身を理解し、自分の身体や感情に対する自己認識を持たせることが重要です。その際に大切なのが「偏見を持たず、子どものありのままを受け止める」という大人側の姿勢です。
 ぼくの知り合いに、宮城里沙さんという元教員の方がいます。彼女は、身体的には女性であり、女性の方と結婚(同性婚・事実婚)された方です。現在は、子どもたちにLGBTを含めた性の多様性を伝える講演活動などに尽力していらっしゃっていて、とても頭の下がる思いです。このように、性を伝えるための活動をしている方も、学校の外にはたくさんいます。教育者として、このような方たちからもっとたくさんのことを学ぶ機会を持っていきたいと思います。もし読者のみなさまで、彼女の活動や思想に興味のある方がいたら、ぜひ著書『ありのままのあなたで大丈夫』をお読みください。


 最後に、これからの性教育について、特に子どもたちに伝えたい事を3つ挙げたいと思います。

①身体の変化
 年齢を重ねるに伴って、男女の身体は変化してきます。生理や精通といった生理現象を通して自分自身の性について理解を深めることが重要です。
②性に興味を持つことは恥ずかしいことではない
 異性・同性に対して性的に興味を持つことは、決して悪いことではありません。しかし、その気持ちを利用した性犯罪もあるため、しっかりと自分で考えたり他者に相談したりしながら性に対して向き合っていく必要があります。
③性の在り方は多様に存在している
 身体的な性は「男性・女性」の2通りです。しかし、心の性は100人いれば100通りの在り方があります。それを否定することは誰にもできません。

冒頭でも触れたように、性教育は非常にセンシティブな内容です。しかし、絶対に必要な教育でもあります。まずは、ぼくら大人が性に対してしっかりと勉強し、理解していくことから始めていければと思います。


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