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『俺の残機を投下します』×『ジブリアニメで哲学する』

【読書感想文】2冊まとめて公開!
1冊ずつにしなかった理由は読み進めるとわかります。

1冊目:山田悠介『俺の残機を投下します』


山田悠介さんの小説は、今までに5冊以上は読んでいます。新作のタイトルからも面白そうな気配がして、図書館で借りて読み始めました。

読み進めていくとわかるのですが、2030年という近未来を描いており、所々に「あ、あの人がモデルだな」とわかる人物も出てきます。

主人公はeスポーツ選手で、格闘ゲームを専門にプレイするアスリートです。
ただ、「こんな人いる??」と思うくらい周りを見下すとんでもない主人公で、なかなか物語に入り込めずにいました。

後半になるにつれて清々しい展開になり、最後は一気に読めました。面白かったです!
ただ、読み進められないときの中休みにもう一冊、同時進行で本を読んでいました。それが2冊目に紹介する本です。

2冊目:小川仁志『ジブリアニメで哲学するー世界の見方が変わるヒント』


『風の谷のナウシカ』から『風立ちぬ』まで。
各作品の主要なモチーフを4〜5つほど取り上げ、筆者の考えた問いと、その答えについて書かれています。

たとえば、『ハウルの動く城』における「魔法」とはなにか。『風の谷のナウシカ』における「虫」とはなにか。
といった具合です。

1つあたり4ページにまとめられているので、サクッと読めます。
筆者の考察はどれも興味深いものばかりなので、ぜひ読んでみてほしいです。


その中に、こんな問いがありました。

『となりのトトロ』における「となり」とはなにか?

考えるためのヒント
なぜトトロは、「前」でも「後ろ」でもなく「となり」にいたのか?

気になりませんか?
なぜ「となり」なのか。

「となり」の考察について、一部引用しながらざっくり紹介します。

たまたま「となり」に居合わせた人は無関係なことがほとんどです。しかし、「となり」にいる人とは何かが起こりそうな、そんな″可能性″を秘めています。
物語では、バス停でサツキがトトロに傘を貸し、トトロとの物語が展開します。傘を貸さなければネコバスに乗ることも、メイを見つけることもできなかったでしょう。 (新山まとめ)
80年代末、バブル崩壊の直前に、それへの代替案のような形で公開されたこの田舎の物語は、当時の日本にとって、もう一つの可能性であったはずです。(中略)「となりのトトロ」はすでにもう一つの可能性としてのとなりの世界を見せてくれていたのです。 (p.69)


「前」や「後ろ」では「となり」ならではの可能性が生まれないから「となり」なんだ。
ひとつ、新しい考え方に触れることができました。


『俺の残機を投下します』×『ジブリアニメで哲学する』


「となり」に関する考察を読んで、ふと、『俺の残機を投下します』の中の一文を思い出します。

そして十年前、東京で開かれた二回目の夏季オリンピックは無事に終わった。 (p.81)

なんて事のない、物語の設定を説明した文章です。

ですが、この一文からだけで
「ここは、東京オリンピックが予定通り開催された世界のお話なんだな」とわかります。

パラレルワールドみたいな、「もしもの世界」のお話。
この「もしもの世界」は、トトロのように「となり」にいて、その存在に気づくことができれば何か変わりそうな気がしました。

「もしもの世界」を広げることや空想することは、今、私たちが生きている世界の可能性を拡げることにも繋がるのかな。
2冊を同時に読み進めたことで、こんな考えに至ることができました。

◇◆◇


以上、読書感想文でした。
読んでいただき、ありがとうございました!


ちなみに、今日の金曜ロードショーは『風の谷のナウシカ』です。
見られる方はぜひ、哲学してみてください:)




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