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【感想】小説『ホテルローヤル』を読んだよ【ネタバレなし】

 何度目になるか分からない課題の再提出を終えたので、夜勤アルバイトの仮眠時間にホテルローヤルを一気読みしました。読み進めるのが遅い私でもトータル4時間ちょっとで読み切れるくらいの文量に、仮眠時間が1時間を切っていても感想を書かずにはいられないほど気持ちが湧き上がってくる内容でした。

 直木賞受賞作と話題になっているはずなのにメディアであらすじを殆ど目にしないのは、ラブホテルを舞台に物語が進んでいくからだと読み始めてから気づきました。あらすじには、作品のタイトルであり、物語の舞台でもある「ホテルローヤル」で営まれる物語について「人生の一瞬の煌めきを鮮やかに…」と書かれていますが、私は寧ろ、そこに虚しさや寂しさを感じました。

 現実を受け入れた人も、現実から逃げた人も、現実を見ず突っ走った人も、善くも悪くもなく、虚しくて、終始息苦しさを覚える作品だったように感じます。それでも読み進めることができたのは、至る所に散りばめられている北海道の情景が細やかに描かれていたからだと思います。(真駒内駅のくだりがとても好きでした。真駒内好きなので。)

 登場人物に降りかかる虚しく寂しい現実に抗うわけでもなく、ただ受け入れ適応する彼女らの姿に「何故抗おうとしないのか」と理解しがたい気持ちが湧く一方で、最初と最後に登場する2人の男の、現実に抗おうとする姿が酷く滑稽に見えて、現実への抵抗感は少年漫画の読みすぎから来ているのだと、最終的には世間知らずの自分を嘲笑ってしまいました。運命に抗え!的な。世の中そんなに甘くないし、諦めた方が幸せってママも言ってた(約ネバの)。

 桜木紫乃さんは作品を通して日の目を浴びない所謂 ”中間層” の貧困や格差、孤独について取り上げているように思えますが、「果たしてそれらは解決すべき『課題』なのか」という疑問が浮かびました。文章にして客観的に見つめると辛く虚しく寂しいように見えますが、彼ら彼女らは「それでいい」と思っている。その姿を見て、諦めて受け入れることもまた、幸せの形なのかなと思ってしまいました。

 大学やボランティアを通して、上で述べた課題について考えることが多いのですが、私の考え方は単に「コミュニティ」とか「外部のサポート」などで解決しようとしているようにしか思えず、自身の考えていたことが如何に無責任で浅はかであるかを思い知らされました。

 私自身、親族関係で良い思いをしていないからか、登場人物の身に降りかかる「現実」がいつか私にも来るのではないかと怖くて仕方ありません。登場人物のように、現実を受け入れ、なんだかんだで幸せを感じられるほど、できた人間ではないと自覚しているからです。

 これからの私に襲い掛かるかもしれない「現実」への恐怖感、いざ自分がそのような状態に置かれたら、そのことに気づけるのか、気づいたうえで抗うのか、色々考えてしまい、胃にずんと溜まるような気分です。生きるって大変。

 読み終わった後に映画の情報を確認しました。予告だけを観た限り、私の感じた絶望感、喜怒哀楽のどこにも属さないドロドロとした感情は何だったのかと思うほどコミカル風な予告でしたが実際はどうなのでしょうか。作品で描かれていた「現実」に折り合いを付けられる日が私にも来るのでしょうか。

 もうすぐアルバイトの業務が再開する時間なので、この辺にしておきます。

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