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「お客様は、神様です」は正しいのか?

 私は一度だけ、野球観戦に行ったことがあります。もう20年以上前になるでしょうか。神宮球場で、ヤクルト VS 広島戦を友人と観戦に行きました。
 特に野球が好きなわけでもなく、たまたま友人が「タダ券」をもらったと言うので、観に行ったわけです。

 大きな球場ではないのですが、天気のいい休日の昼間、内野席の高い場所で見る野球の試合は、なかなか迫力がありました。その後、阪神に移籍した新井がホームランを打つなど、自分なりに楽しんだものです。

 ところで、球場で観戦する楽しみといえば、やはり「生ビール」。売り子のお嬢さんが、紙コップにビールを注いでくれるのですが、いいピッチでほろ酔いに。1杯500円〜700円と、球場の大きな売上になっているようで、友達と2人、キリン・アサヒ・エビス・サッポロのそれぞれのビールを飲み比べました。

 さて、生ビールのサーバを背負って、売り子をしているお嬢さんを見ると、かなりたくさん売っている人と、あまり売れていない人がいます。
 昔、球場のビール売りのアルバイトをしていたという女性に、仕事でインタビューしたことがあるのですが、給与は「歩合制」だそう(当時)。つまり、たくさん売れば売るほど、収入は大きくなるというわけです。

 私がインタビューした女性は、かなり売っていたようで、その秘訣を質問したんです。私は、売れる理由の予想として、

「若くて美人なら、たくさん売れるんだろうな」

くらいに考えていたのですが、実際には、まったく違っていました。

 まず、生ビールを飲みそうなお客を見つけるんだそうです。
 例えば、若い男性同士の団体や元気なカップルを見つけ、実際に1杯目の注文を受けたら、タイミングを見計らってラウンドし、2杯目の注文をいただく。そして、さりげなく声をかけて「次も私から買ってください」アピールをする。

 一方、家族連れの場合、お父さんが何杯もおかわりするのは稀なので、リピートは期待できない。
 つまり、たくさん買ってくれるお客さんを、いかに早く見つけるかが、2時間弱の試合時間内で、ビールをたくさん売るためのコツだと言うんです。

 う〜む。そのことを思い出したのでした。
 実際に、初めて球場に来て、ビール売りのお嬢さんたちを比べてみると、確かに売っている子と、そうでない子の差は歴然。自分が社長なら、営業として雇ってみたいほどの動きでした(笑)

 これは、球場でのビール販売に限りません。

 売れる営業、つまり数字として結果を出す社員というのは、「たくさん商品を買ってくれるお客様」を大事にします。悪く言えば、すべてのお客様を均等に扱うのではなく、不公平に扱うということです。これは、当たり前のようでいて、実践するのはなかなか難しいものです。

 一方、売れない営業社員は、「自分にとって居心地のよいお客様」を大事にします。仲が良い、話しやすい、邪険にされない。そんなお客様です。
 こういったお客様が、商品をいっぱい買ってくれれば問題ないのですが、えてして逆のことが多いものです。

 生ビール販売のお嬢さんと同様、いかに早く、たくさん買ってくれるお客様かどうかを見抜き、十分にサービスしてあげる。そして、あまり買ってくれないお客様の前にはなるべく近寄らないこと。これを徹底することが、売上を最大化するコツだったのです。

 マーケティングに長けていて、いかに多くのお客様を引っ張って来たとしても、セールスの段階で、今後大切にしなければならない優良顧客か、深入りしてはいけない顧客なのかを見抜けなければ、効率的な売上アップにはつながりません。
 それどころか、肝心の、最も大切にしなければならないお客様に対して、十分に納得させられるサービスを提供できず、ひょっとしたらライバルに持っていかれるかも知れないのです。

お客様は神様です。

これは間違い。

たくさん商品を買ってくれて、
今後も大切にしなければならないお客様は、神様です。

これが正解。

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